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世間の冷たさ

 世間は甘くない。

 セレスティアはそれを肌に感じた。


 国王シュンが、悩み抜いたすえにやっと立ち上げたシュロン国。

 ずっと平和を維持できると思っていた。

このまま何事もなく、人間とモンスターは共存できるのだと思っていた。


 けれど、シュロン国の国民以外は実に冷ややかだった。

 ただ、争いのない世界をつくりたい。

 それだけだったのに。


《争い》のほうから、足音を立ててシュンに近寄っていくのだ。


 ふうううと息を吐きながら、エルノス国王が問いかけてくる。

「どうだセレスティアよ。考えはまとまったか」

「……いえ」

「お嬢様。考え直してください」


 と言ったのは親衛隊のひとりだった。


「あんな野蛮な種族と暮らすなんておかしいですよ。私たちは誉れ高き人間ではありませんか」

「違うわ。モンスターは野蛮な種族じゃない……!」

「……どうしてですか。お嬢様だって、つい最近まではモンスターを敵対視していたのに……!」


 ーーそう。彼の言う通りだ。

 私は二年半前まで、モンスターを絶対悪と見なしていた。だからこそ多くの騎士を従え、魔王城に殴り込みをかけたのだ。

 きっと、わからないのである。実際にモンスターと寝食を共にし、彼らと接してみないことには、モンスターの本質はわからないのだ。だからこそ、人間たちはいまだにモンスターに敵愾心てきがいしんを抱いている。


 だが、そんな人間たちを愚かだとは言えまいーー

 セレスティアとて、以前までは彼らとまったく同じ意見だったのだから。


「……まあよい。セレスティアよ、部屋から出ていくがよい」

 と国王は言った。

「シュンを選ぶか、はてはシュロン国を選ぶかはそなたに任せよう。健闘を、祈っておるぞ」


 そうしてセレスティアは、半ば追い出されるようにして、宮居を後にしたのであった。

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