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先手を取る洞察力

 ーーコツコツ。

 セレスティアはひとり、元の通路を引き返していた。


 王城は二階建てで構成されている。

 屋上には庭園が存在し、演説の際にはその場所から声を張り上げることになる。

 セレスティアの向かう先は、その庭園のはるか先だ。


 ーーエルノス国王の宮居。

 エルノスがプライベートな時間を過ごす場所。

 庭園の最頂部に存在するそこは、一般人に立ち入ることは許されない。騎士たちに門前払いを喰らってしまうからだ。


 だが彼女においてはその限りではない。皇女セレスティアがすれ違う度に、騎士たちはさっと敬礼をするのみだ。


 そう。彼女は次期国王としての、有力な候補なのだから。


「…………」 

 部下たちの忠実なる姿を見る度に、セレスティアは複雑な気分になる。

 ーー私は人間世界の王になりたいのか。

 ーーそれとも、シュロン国で、あの珍妙な王と共に過ごしたいのか……

 自分でもそれがわからなくなっている。


 当初はただ、国作りの勉強のためだけにシュロン国に入国しただけだ。そこに政治的な意図はまったくない。無事に勉強を終えたら、すぐにでも王都に帰還しようと思っていた。


 なのに。

 人間とモンスターが共存する世界。

 それはあまりに理想的な世界だった。

 いまだに騙し合いを繰り広げる人間界など、取るに足らないと感じてしまうほどに。


 そんなことを考えているうちに宮居に到着した。堅牢な紺碧の二枚扉の脇に、親衛隊が二人、待機している。


「セ、セレスティア様……」

「お父様と話をしにきたのだけど。いまいらっしゃるかしら?」

「ええ。セレスティア様がいらしたらお通しするようにと言われております」

「そう……」


 ーーということは、私がここに来ることはすでに読まれていたということか。さすがは父だ。

 セレスティアはごくりと唾を飲み込み、二人の親衛隊に命じた。


「大切な話があるの。開けてくださるかしら?」

「かしこまりました」

 親衛隊はびしっと敬礼を揃えると、それぞれ取っ手を掴み、宮居の扉を開け放った。


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