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目指していたはずのもの

 ーーセレスティアよ。おまえは将来、父さんの跡継ぎになるんだぞ。

 ーー跡継ぎ? 王様になるってこと?

 ーーそうだ。おまえが、国民の生活を守るんだーー


「……てるか、……い」

 どこからか声が聞こえる。

「起きてるか、おい、セレスティア!」

「……あっ」


 セレスティアはふと我に返った。

 振り返ると、シュンとロニンが心配そうにこちらを見つめている。


「大丈夫かよ。考え事してたみたいだが」

「う、うん、大丈夫、だけど……」

 だいぶ思い詰めてしまっていたらしい。せっかく二人を客室に案内しているところなのに。

「ごめん。客室はもう少しだから……」

「ならいいが……」

「こっちよ。ついてきて」

 笑顔をつくり、セレスティアは案内を再開する。


 だいぶ昔のことを思い出していたらしい。幼少のころ、父エルノスに、指導者としてのあり方を何度も説かれたことがある。


 ーーいいかセレスティア。王には支持者が必要だ。独裁政治ほど愚かなものはないよ。

 ーー国民のためを思い、国民のために尽くしなさい。それがおまえの使命なのだ。


 堂々とそう語る父を、セレスティアは素直に尊敬していた。周囲の国民たちも、狂信的なまでに父を信頼していた。

 ーー私のお父さんはすごい。

 その事実は本当に誇らしかった。

 だから自分も、父のように立派な指導者になろうと思った。


 ーーだけど。

 さきほどシュンたちに脅迫まがいの謁見をしたエルノス国王。

 あれが王としての勤めなのか。父の言うとおり、大義のためならば多少の犠牲は肯定されてもいいのか。


 わからない。私はいままで、なにを目指してきたのだろう……

 そこまで思索を巡らせたところで、やっと目的地に到着した。セレスティアは近くの扉を手を差し、二人に話しかける。


「ここよ。なにか用があったら、気軽に召使いを呼んでいいから」

「お、おう」

 シュンが微妙な表情で頷く。

「なあ。おまえ、戻りたかったらいつでもーー」

「え?」

「いや、なんでもねえ。ロニン、入るぞ」


 こくりと頷き、シュン夫婦は室内に入っていく。

 私は、どうしよう……

 ひとり残されたセレスティアは、ぽつりと、そう考えるのであった。

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