表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/263

不平等条約

「そ、そんな馬鹿なこと! あるわけないでしょう!」


 ロニンは立ち上がり、声を荒らげた。

 自分の心拍数が高まるのを感じる。それだけに、いまの国王の言葉は聞き逃すことができなかった。


 ーーモンスターが今更、人間に戦いを挑むだって?

 そんな無意味なこと、ロニンはもはや考えてもいない。戦争がいかに無益であるか、二年半前に身を以て知っている。モンスターはそんな野蛮な種族ではない。

 なのに、人間界を支配しようとしているだって? まったくの事実無根である。


「おいロニン。おい」

 シュンがこちらを見上げ、地面に向けて指を差す。座れ、と言いたいのだろう。

 ロニンは頬を膨らませ、かすれる声で言った。

「で、でもシュンさん。いまの発言は……」


「まったくの事実無根である、と言いたいのかね」

 国王がロニンの言葉尻を奪った。

「いいから座りたまえ。この話には続きがある」

「…………」


 ロニンはなにも言わぬまま、静かに腰を下ろした。国王に従ったのではない。あくまでシュンの言うとおりにしただけだ。


 国王はうむ、と頷くと話を再開した。


「事実かどうかは関係ないのだよ。魔王ロニン殿。あなたならば、人間とモンスターが長らく争っていたことは痛感しているはずだ」

「……ええ」

「その確執は二年やそこらで消えるものではない。国民の多くは、モンスターを野蛮な種族として認識している。いつ寝返るかわからない……そんな不安の声もあるのだよ」


「で、でも!」

 ロニンは真っ直ぐに国王を見据え、真摯に訴えた。

「私たちは別に戦いを望んでいたわけではありません! モンスターの多くは、争いのない、平和な世界を望んでいます!」


「ならば……それをどう証明するのかね? 余の国民に、それとわかる形でモンスターの誠実さを証明できるのか?」

「そ、そんなの……」


 証明する方法ーー

 そんなもの、存在するわけがない。

 いくらロニンがモンスターの真面目さを演説したところで、まったくの無駄であろう。おそらく人間たちは信じない。


「であれば、余も王として、手をこまねいているわけにはいかないのだ。だから本日、とある条約を結んでもらいたい」

「条約だと……?」

 シュンがオウム返しに呟く。

 エルノス国王は嫌らしい笑みを浮かべ、シュンに向けて片手を突き出した。

「我が国の騎士を、そなたの国に常駐させ、警備させるのだ。その負担費として、作物の収穫の半分を、我が国に献上してもらいたい」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ