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記念すべき引きこもりライフの再開だ

「あっそ。ま、好きにしたらいいんじゃねえの」


 シュンは耳をほじりながら答えた。

 彼としても、勇者の目的を批判するつもりはないのである。


 魔王を倒すために旅に出る。


 それが悪いことだとは思っていない。

 むしろ、人類のために頑張っているとさえ言えよう。


 だからこそ、シュンは勇者を気絶させるだけにとどめた。

 もしアルスが根っからの悪人であれば、容赦なく命を奪っているところだった。


 勇者アルスはどうしようもなく真面目で、それゆえに頭が固くなっている。それがなんとなくわかっていた。


「だってよ。おまえ、どうすんだ」


 シュンは背後のロニンに問いかけた。


「あ……あう……」


 幼い少女は、なにも言えないままにうつむいた。


 生きてこの場から帰ることができる。

 それはたしかに喜ばしいことだった。


 しかしながら、ロニンは本来の目的を果たせていない。

 すなわち、勇者を討伐すること。

 もし身の危険を感じたなら、村人を人質にしてでも勇者を殺すこと。


 にも関わらず、勇者の討伐はおろか、名も無き村人に助けられて帰ってきた。


 そんなこと、絶対に父には報告できない。


「わ……わたしは……」


 かすれる自分の声を聞きながら、それでもロニンは勇気を振り絞って言った。


「シュンさんに……修行をつけてほしい……」


「はぁ?」


 さすがに予想外だったのか、シュンはぱちくりと目を丸くする。


「おいおい。そりゃもしかして、俺の村に来るってことかよ」


「うん。駄目……かな……?」


「いや。駄目ってこたぁないが……」


 シュンはぼりぼりと頭頂部を掻いた。


 モンスターと人の共存。


 それもただのモンスターじゃない。

 魔王の娘という、とんでもない血が流れた女だ。


 一般の村民はもちろん拒絶するだろう。だから立場を隠させながら暮らすしかあるまい。


 この上なくめんどくさいことである。


 しかし、シュンにはなんとなくわかっていた。

 ロニンにはおそらく、行く宛がないのだということ。

 このまま放っておけば、勇者どころか、魔王に恨みを持つ者に殺されるかもしれないこと。


 それを考えると、邪険にはできないのであった。


「はあ……わかったよ」


 シュンは顔をしかめながら答えた。


「だが、覚悟しておけよ。俺に修行をつけてもらうということは、おまえも引きこもりになるってことだからな」


これにて序章は終了です。

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