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根も葉もない噂

「こ、これは驚いた。まさか本当に魔王などと……」


 目を瞬かせる国王に、ロニンはズボンをすこしだけずらし、尻尾を露出する。人間には絶対についていないはずのそれを見て、国王はもう一度、目をぱちくりさせた。

 が、数秒後、おほんと喉を鳴らすと、落ち着きを取り戻したように告げる。


「……よもやこの王城に魔王を招待することになろうとはな。さすがに驚いた」

「わたくしも最初は驚きました。こんな小さい女性が魔王だなんてね」

 昔のことを思い出しながらシュンが語る。当時は魔王ではなく、娘であったが。


 小さい、と言われてロニンがぷくーっと頬を膨らませるが、それを無視して国王が口を開いた。


「人間とモンスターの共存。たしかそなたの目指す国はそのような趣旨であったな?」

「……ええ。その通りです」

「聞けば、かなり順調に建国できているようではないか」


 そこで国王はセレスティアに目を移す。

 皇女はこくりと頷き、シュロン国をべた誉めした。


「……本当に、素晴らしい国です。モンスターと共存するなんて絵空事だと思っていましたが、そんなことはありません。モンスターは実に真面目で働き者です。そして性格も穏やかで……正直、なぜ戦争をしていたのかすらわかりません」


 嬉しそうにロニンがうつむいた。恥ずかしそうに、けれども真っ直ぐにモンスターの王は国王を見据える。


「私たちも……先代が人間と争っていたからならっていただけです。明確な敵意があったわけではありません」

「そうか……あのモンスターがのう」


 国王はシュンに視線を戻す。


「余も多いに助かっているよ。そなたは長い戦争を止めた功績者だ。王都の代表として、礼を述べよう」

「……ありがたき幸せであります」


 シュンがゆっくりと頷いた瞬間。

 国王がその目つきを変貌させた。いままでの穏やかな雰囲気と打って変わり、獲物を狙い定めるような、狼にも似た眼孔。


「だが、我が国はそなたたちに対し、賛辞だけを述べているわけではない。一部に懸念の声もある」

「……と言いますと?」

「そなたたちが、モンスターを従え、準備を整えたとき、我が国を支配しようとしている……そのような声もあるのだよ」

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