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分散された権力

 シュン、セレスティア、ミュウの三人はしばらく雑談に耽っていた。


 今後この国をどうするか、人間界とどう関わっていくか、もし外部者が訪れたらどうするか……等々の真面目な話も交えながら、数時間近くも話し合った。


「う、ううん……」

 さすがに限界が訪れたのだろう。ミュウが頭を抱えてうずくまった。

 無理もあるまい。まだ十にも満たない子どもが、ここまでよく退屈せずに付いて来られたものである。そろそろ限界だろう。


「おいおい」

 とシュンはミュウに声をかける。

「もう休んできたらどうだ。頭、爆発しそうだぞ」

「うう……まだついていけますぅ……」

「無茶すんな。動けねぇときは休め」


 ーーなどとまあ、引きこもり野郎がよく言えたものだが、ミュウは素直に「はぁーい」と従った。これも《支配力》のなせる技なのかもしれない。


 とぼとぼと退室していく背中を見送ってから、シュンは素直な感想を述べた。

「ああいう子どもがいりゃ、将来はまあまあ安心だな」


 嬉しかった。あの歳でシュロン国の行く末を考えてくれているということが。

 ならばこそ、現代国王たるシュンも正しく行動していかねばなるまい。


「……あのさ」

 ふいに、セレスティアがやや沈鬱な表情で言った。

「あん?」

「あの子がいたから話さなかったけれど……やっぱり、予想したことが起きたよ」

「……やっぱ、あれか」

「うん」

 セレスティアが暗い表情で頷く。


「ーーお父様が、会いたいって。あなたに」


 予測できることではあった。

 一般の人間から見れば、ある日突然、モンスターが綺麗に姿を消したのである。しかもまったく見知らぬ土地で人間と共存しているというのだから、これに驚かない者がいないはずがない。それに加えて、その国はありえないほどの速度で発展を遂げているーー


「お父様は相当に警戒しているわ。この国と、あなたを」

「警戒ィ? なんでだよ」

「……お父様は、権力者が二人以上いることを良しとしない。分散された権力は争いを生むから……」


 ということは、シュンがいつか本当に世界の中心者となるかもしれないと考えているーーということか。


「へっ、馬鹿馬鹿しい」

 シュンは鼻で笑った。


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