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烈日王に極光の歌  作者: ジョシュア
竜の歌
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異変の村(1)

 グリエルの城を出たノォトとブロムは、一路、邪竜の棲むという山を目指す。

 さすがにグリエルの領土の中では、アルヴァルトの手先が襲ってくることはなかった。そのことに安堵を覚える。これから邪竜へ挑むというのに、気がかりがあっては満足に戦うことはできないだろう。

 ブロムが言うには、ここから馬を飛ばせば三日もかからずに着くという。空を見れば、しばらくは雨が降らないだろうとわかる。問題がなければすぐに着くだろう。

 だが、その問題があるのは、グリエルが言うに明らかだった。心してかからねばなるまい。


「ノォト、グリエルとはいったいなにを話したのだ」


 道中、ブロムは聞いてきた。ノォトは少しだけ言葉を選んで答える。


「運命と、父についてだ」

「なにか言っていたか」

「激励は受けた。だが、それだけだ」


 ノォトがそう言うと、もったいない、とブロムは言った。


「せっかくなのだから、己の運命でも見てもらえばよかったものを」


 会う前までは、寄り道だなどと言っていたブロムがそんなことを言った。ノォトはちらり、と彼の顔を見てすぐに前を見た。

 ノォトは彼に、グリエルでさえも運命を見ることができなかったことは伝えなかった。そんなことをいえば、この研究心旺盛な養父は、根ほり葉ほりノォトを問いただすに決まっているからだ。口下手なノォトには、それは避けたい事態であった。


「養父上は知っているか、彼の予言について」

「おおかた、魔法と差異はないだろう。彼の王の力は、神々から言葉を受けとる術の先にあるものだ」


 ノォトはなるほど、と頷く。


「つまり、神々の側から視ることができるということか」

「お前は本当に理解が早いな。そうだ。グリエルは完璧でないものの、その術を天性のものとして持っている。お前の血統も似たものがあるが、彼のものはこの世において卓越していると言っても過言ではないだろう」


 グリエルの力は、確かに常軌を逸している。魔法の力と言えどそこまで万能ではない。

 そもそも魔法とはあり得ないことを起こすものだ。ブロムから教えてもらった言い回しから言うならば、どこかにあるはずのものを目の前に置き換えるのだという。それが正しいかどうかはわからない。だが、グリエルの予言の力はその何歩も先をいっているのだろうことはわかる。

 こうなったら、魔法にも長けていたフィオネにいろいろと教えてもらうんだったな、とノォトは思った。戦士である自分は魔法など使わないと決めていたが、知とは力なのだから知っておくに越したことはないだろう。

 例えば、魔法使いと戦うときを考えれば。

 ノォトがそんなことを考えていると、ブロムはため息をついた。


「だが、その理屈はさっぱりだ。やれやれ、かれこれ魔法の道を三十年以上歩んでいるが、この世界の一分もわからぬ」

「お前でもか」


 ノォトがそう言うと、ブロムは途端に不機嫌な顔になった。いまのは失言だったか、と反省する。しばらくは口を閉ざしていようと決めた。

 ブロムがそうなのであれば、すべてを知っているとさえ言われる大神オーディンはどれほどのことを知っているのだろうか。彼の知とはいったい、どれほどのものなのだろうか。そして父が言っていた「神でさえ運命に縛られているように見える」とはいったいなんなのだろうか。

 ノォトは思った。オーディンであれば、いずれ来る終わりの時を超える術を知っているだろう。そしてそのために、いかなる手段を尽くすことも想像に難くなかった。


「だが、俺が王を目指すことには変わりない」


 それさえきっと必要なことなのだろうから。なによりも自分にとってである。


「あれは……?」


 ノォトは遠目に村を見つける。エルフほどではないが、優れた視力を持つノォトはブロムに先じて見つけることができた。だが、少しだけ様子がおかしかった。人の気配はまったくなく、生活の様子もない。


「おかしい、なにかあったのか」

「ノォト、関わるとろくなことはない。まっすぐ抜けるのが得策だ」

「だがこれから先の道中になにかあるのかもしれない。先に知ることができるなら、それに越したことはないだろう」


 相手を知ることは戦いにおける常道だ。避けられない困難なら先に知っておくのがいい。

 ノォトがそう言うと、ブロムは渋々と頷いた。感謝する、と言ってグラニを走らせる。妙な胸騒ぎとともに。

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