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烈日王に極光の歌  作者: ジョシュア
竜の歌
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魔法使いの言葉(2)

 ノォトはグラニに跨り、ブロムもまた馬に乗って街に出た。

 二人でこうして馬に乗ることは、幼い頃の記憶の中にしかなかった。かつては遠出をして、森の木々や花、川のことを教えてもらった。獣や鳥のことも教えてもらった。小さい自分には何もかもが新しく、興味深く見えていたな、などと一人で懐かしさに浸る。

 後ろを走るブロムを見た。その顔は上手く見えなかったが、彼もまたこちらを見ているような気がした。

 前を見る。遥か先に山が見えた。ブロムがいうには、邪竜は西の山の麓、その洞窟に住んでいるという。馬で飛ばせばすぐであるが、急ぐのはよくないというのがブロムからの助言であった。


「急いてはいかんぞ」


 ノォトの様子を見て、ブロムは何度も言った。

 気がはやっているのは確かである。だが、ブロムの言うとおり、急いてはことを仕損じるとも言う。

 相手は邪竜である。万全を期して挑みたい、という思いもあった。

 だが、ノォトは先を急ぐべきだと思った。ゆっくりしていると、嫌なことが起こる予感がしていた。ノォトの第六感がそう告げている。


「ノォト、そういうときこそ、落ち着くのだ」


 改めて、ブロムは言った。ノォトは頷く。彼の言葉はいつも的確だ、とノォトは信頼していた。昔からずっとそうだった、とも。

 少しだけ、戦士ではなく、王でもない、息子としての感情が芽生える。

 だが、それも一時だけのこと。道に沿って進んで行くと旅商の一向が見えた。ノォトは何事か、とその旅商の一人に声をかけた。


「おお、戦士さま。この先に賊が出てるんです」

「賊が?」


 こんな場所にか、とノォトは思った。ブロムがそれを聞いて、耳打ちしてくる。


「油断するな。奴らは何かを企んでいる」

「どういうことだ」

「誰かの優しさを、利用しようという輩もいるということだ」


 ノォトは首をかしげた。だが、手を差し伸べずにはいられなかった。疑心暗鬼に囚われるな、と自分に言い聞かせた。

 遠くを見やれば、確かに賊がいる。こちらに気づいている様子はなかったが、明らかに待ち伏せをしている。


「どうやら本当のことのようだ」


 ブロムもまた、遠見の魔術を使って見ていた。

 武装は大したことがない。だが、手入れがされていないのか、どれも少し年季が入っているように見えた。おそらく、戦場の跡から盗んだものを使っているのだろう。


「腕に覚えがあるのなら、どうか彼らを退かしてもらえませんでしょうか」


 商人の一人が言った。確かに、あの程度であれば魔剣がなくとも問題なく討つことができるだろう。しかし、並の戦士であれば相手をすることは拒むような数ではある。

 ノォトは商人たちを見た。彼らの様子に少し違和感を覚えながら、頷いた。戦えるのであれば、行くべきだと思ったからだ。

 待て、と言うブロムを置いて、ノォトはグラニの腹を蹴った。ブロムもまた、ノォトのあとを追った。


「落ち着け、と言っている」

「これ以上なく、落ついている」

「ならばなぜ行くのだ。間違いなく、これは罠だ。あんなおおっぴらに賊がいるのもおかしければ、奴らも商人などではない。これはすべて仕組まれているに違いないんだ。なぜ言いなりになる必要がある?」

「進むべき方へ障害があるならば、それは除かねばなるまい。そしてこれが罠であろうと、王として人の前で下がるわけにいかない。押し通るしかないのだ」


 そうだろう、とノォトは言った。ため息をついたブロムは、それでもノォトについてきていた。

 魔剣〈憤怒の剣〉を抜いた。賊と思われる一味が、ノォトに気づいた。魔剣の輝きを見て少し怯んでいたが、かまわずに襲いかかってきた。

 矢が飛んでくる。七本を目で見た。だが、そのすべてがノォトを貫く軌道を描いていた。並大抵の腕ではない。ただの賊ではないことがわかる。ノォトはそう思いながら、魔剣で弾いて前進していった。

 そして、賊と商人たちの間を過ぎたとき、ノォトの背後からも矢が飛んできた。ちらりと見れば、商人たちの荷物の中から弓を構えた者たちが出てきていた。


「やはり賊と組んでいたか。いや、賊ではないかもしれぬな。ノォト、お前は多くの者に狙われている。わかりきっているだろうがな」

「……邪魔をするなら、倒すだけだ」


 ノォトはそう言った。魔剣を構えて、目の前の賊たちへと突っ込んでいく。悲鳴をあげながらも、ブロムもまたノォトに続いた。

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