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烈日王に極光の歌  作者: ジョシュア
剣の歌
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さよならは言わないで(2)

 ドヴェルグの国をあとにして、ノォトはグラニと共に自分の国へと帰った。帰り際、ノォトの手にはたくさんの手土産を持たされていた。それは首飾りや腕輪の装飾品から、剣に到るまで様々だった。

 凱旋をしたノォトはすぐに王城へと迎えられた。長い旅を終えて、魔剣を再生させ、巨人を打倒せしめた英雄の帰還の出迎えは簡素なものであったが、そこにいる者たちはみんな笑顔だった。義父のアルヴァルト、母のヒルディース、そして数人の将兵たち。

 王の間に迎えられたノォトは、巨人討伐の顛末、ドヴェルグの国から持ち帰ってきた財宝の目録、そして魔剣を紹介した。

 その魔剣を抜いたとき、戦士として戦場に立つ者はみな、目を輝かせ、同時に畏怖した。この世で最も強き剣は、戦士たちを驚かせるほどの輝きを持っていたのだった。一方で、母の顔は曇っていたが、ノォトはあえて無視をした。


「よくぞ帰ってきた。その任を果たし、そして自分の目的もまた達成した……。まさに、この世に二人とない英雄と呼ぶに相応しいだろう」

「感謝する、王よ。貴方が授けてくれた愛馬グラニも、素晴らしい活躍だった。友として共に戦うのが、実に心地よく、彼のおかげで難を乗り越えられた場面も少なくなかった」

「なにを言うか。それはお前の働きがあったからこそだ」


 ははは、と笑うアルヴァルト。ノォトは頷くも、複雑な気持ちだった。


「それにしても、エルフの女王にドヴェルグの王……彼らと手を組み、巨人を討つとはな。ドヴェルグの元へ行くように言ったのは私だが、本当によくやる」


 そう言って、肘掛に腕を乗せ、くつくつと笑うアルヴァルト。その笑みの裏にある何かを、ノォトは感じた。言葉の表面にはない、なにかを。


「恐縮だ。運がよかったか、巡り合わせがよかった。無二の友を得ることができたのだから」

「お前の口から友という言葉を聞けることを嬉しく思うよ、義息子よ」


 それには思わず、ノォトは苦笑をする。友というものをいままで持ってこなかった自分を、彼はそういう風に思っていたのかと。母もまた同じような笑みを浮かべていた。


「ヒルディース、お前からも息子に声をかけてやれ」

「私は……私の息子が帰ってきた。それも大きな怪我もなく。それだけで嬉しいのです」

「相変わらず、戦士の母らしくない物言いだな」

「ノォトの母ですから」


 アルヴァルトの物言いに顔に憂いげの色を見せるヒルディース。ノォトの視線に気づくと、年齢を感じさせない美貌を少し綻ばせた。

 夢の中で見た母の姿を思い出し、そして父の姿も思い浮かべた。彼女がたびたび、そう言う理由もようやくわかった気がした。


「して、ノォトよ。次なる目標はもちろん決まっているだろう」


 そう言ったアルヴァルトは、立ち上がる。

 ノォトはまさか、と思った。ヒルディースをここに連れてきた理由も、将兵ばかり少数で行われたノォトの帰還の儀も、このためにあったのだとノォトは悟る。


「目指すはフンディングの首。ノォト、お前の父の仇討ちを以って、義父であり王であるこの私に、王たる証を立てよ! そしての暴虐なる王の首級は、我らにとっても悲願である!」


 我が愛する妻の悲しみ、その根源故にな。

 アルヴァルトは、冗談なのか本気なのかわからない口調でそう言った。将兵たちは笑いながらも、腕を掲げて賛同する。彼らの手もノォトに貸してくれる、ということなのだろう。

 嵐の予感がした。壮絶な嵐が、吹こうとしているのだと。




   *    *    *




 遠い昔のお話。

 一人の英雄が、英雄としての道を歩み始めたお話。

 ただ強いだけの者が英雄ではなく。

 ただ神々に愛された者だけが英雄ではなく。

 人には過ぎたものを背負う覚悟をした、ただそれだけでも英雄的な行為で。

 なおも己の道を歩む者を英雄と呼ぶことを、誰が止めることができるでしょうか。

 彼は、まごうことなき大英雄。

 これまでの道も、そしてこれから歩もうとする道も。常人ではとても歩めない道。

 背を見せることはなく、前を見据えて歩むことがどれほど難しいか。

 逃げたくなってしまうようなところで、立ち止まることなく進むことがどれほど厳しいか。

 自分の弱さと向き合うことが、どれほど大変か。

 数多の英雄を見てきた私でさえ、目を見張ってしまうもの。


 誰よりも、強くて、自分に厳しくて、愛おしく、そして優しすぎる人。

 これは、そんな彼が一本の剣になったお話。

 そんな彼に歌う、賛歌。

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