表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
烈日王に極光の歌  作者: ジョシュア
剣の歌
36/102

魔剣転生(1)

 ノォトとフィオネ、エイトリ。そして幾人ものドヴェルグたちが一堂に会した。

 森のはるか彼方に現れた巨人に対してどのように対処をするのか、彼らは話し合うべく机を囲んでいた。

 と言っても、できることは限られている。一切触れることなく、嵐のように立ち去るのを待つか。それとも打って出て、ここで森の邪魔者であり災厄である巨人を討ち取るか。

 多くの者が、触れずに放っておくことを意見として唱えた。数日は近くにいるかもしれない。それは困る。だがこちらに手出しさえしなければいい、という風に考えているのだ。


「いや、あの巨人が退くとは考え難い」


 思わず口を挟んだノォト。フィオネが引き止めるが、ここで黙っているのは性に合わなかった。

 洗いざらい、話す。自分を多くの者が狙っていること。死の女神を筆頭にし、あの巨人もその傘下にあること。そしてきっと、巨人はノォトを狙っており、ここを去ることはないということ。

 それを聞いたドヴェルグたちの間に動揺が走る。そして彼らは、口々に不満を漏らした。他種族の者が災いの種をもってきたと。助けたのは間違いだった、と。

 ノォトは耳が痛かった。だが、黙ったままでいるしかなかった。

 フィオネも頭にきたようだったが、事実であるから大きな声で反論できないでいる。


「うろたえるな!」


 エイトリが言った。彼の顔は朗らかだったが、目は笑っていない。

 情けない奴らめ、と言って、周囲を睨みつける。見られた者はみな萎縮してしまった。


「ふん、さすがはノォト、人の中で最も強き者と言ったところか。お前は死に愛されながらも、死に抱かれたことのない者というわけだ。身持ちが固いか、冥府の女神がよほどの醜女しこめだったかのどっちかだな。言わなくてもいい、後者だろう?」


 その言い草に笑ったのはフィオネだった。彼女はドヴェルグたちの真ん中で大笑いをして、そして言った。


「間違いないわ、おまけにすっごく臭いのよ!」

「そいつは……勘弁だな」


 下世話なことを言って、二人は笑った。ノォトは声は出さなかったが、口元だけ歪めて笑う。

 その笑顔が不敵に見えたのだろう。ドヴェルグたちがわずかに、恐れをなしたのがわかった。


「ノォト、お前が巨人を討て」

「言われずとも」


 ノォトはエイトリの言葉に頷いた。魔剣を鍛え直すにあたって、元よりそういう約束だった。


「俺は魔剣の鍛錬を手伝う。なに、あと少し、ノォトが打って形にすればいい。そのとき、魔剣はおのずと目覚めるさ」

「簡単に言ってくれる。だが、やろう」

つかだとかは気にするな。お前は刃を鍛えることだけを考えろ」

「……感謝する。陣頭指揮はどうする?」

「私が執るわ」


 ノォトの問いに、フィオネが言った。彼女は腕を組んで、自信ありげな顔をしている。こういうときの彼女はまさに無敵だとノォトは知っている。


「森といえば、私の庭よ。ドヴェルグより知り尽くしてるんだから。それに、森を荒らされて私が腹を立てないわけがないでしょう?」

「違いねえな。ここにいる野郎どもを好きに使え。なに、エルフでも美人な嬢ちゃんの言うことなら聞く現金なやつらだよ」

「俺のグラニも貸そう。フィオネなら、任せられる」


 エイトリとノォトがそう言うと、フィオネが少しだけきょとんとした顔をする。そして嬉しげに、少しだけ照れて笑って見せた。


「なんかいいわね、こういうの」


 フィオネはノォトに耳打ちをする。そうだな、とノォトは思った。

 これは、ただ一時いっときの共同戦線。巨人と同じ敵を持ったがゆえの共闘である。終わってしまえばきっと、エルフとドヴェルグは元の険悪な仲に戻り、人も彼らとは隔絶し人同士の戦いへと戻っていくのだろう。

 だが、ノォトに、フィオネに、エイトリに、あるいはここにいるドヴェルグたちには残るものがあるはずだ。種を越えて手をとって戦ったという記憶が残るはずなのだ。ノォトにはそれが、大切なもののように思えてならなかった。


「よし、作戦はこうだ。エルフの嬢ちゃんが前線で指揮。巨人がある一定の線を越えたら仕掛けて、時間稼ぎをできる限りしろ。なに、一日もかかりはしない」

「やってみせるわ。エルフの誇りにかけてね」

「ノォト、お前が巨人討伐の要だ。魔剣を鍛えろ。出来上がらなかったら、俺らはみんなで大っ嫌いな冥府の女神に抱かれることになるぜ?」


 冗談めかして言うが、それこそ冗談ではなかった。

 皆がノォトを見つめる。言葉を待っているのだ。少しだけ顔を見渡す。


「悪いが、俺は死を恐れない。それも運命というなら受け入れよう。だが、そう簡単にこの命、くれてやるつもりはない」


 ノォトは低い声で、しかししっかりと響くように言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ