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烈日王に極光の歌  作者: ジョシュア
剣の歌
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ドヴェルグの炉(4)

「こんなところにいたのか」


 ドヴェルグの国にやってきて、数日が経った。

 工房を後にして、ノォトはフィオネを探していた。夜も更けてきて、ようやく見つけたのはドヴェルグたちの国の、一番高いところだった。

 地上に一番近い場所か、と思いきやそうではない。ドヴェルグの国は確かに地底にあったが、この場所は物見櫓になっているようで、山の中腹に位置していた。穴からは空に昇ってる月が光を落としており、広大な森を見渡すことができる。

 フィオネはその窓枠に座っていた。外を眺めている。彼女にとって、地の底は退屈なものなのだろう。


「話は終わったの?」

「ああ。いまは作業をしてくれている。俺の出番は、だいぶ後だ」

「そうなの。私は、鍛冶のことはぜんぜんわからないから」


 エルフの武器は、基本的に石を削ったものだ。矢にしろ、短剣にしろ、彼らの武器は素朴である。ノォトにはそれは戦争の道具ではなく、狩りのためにあるものだという風に考えられた。

 鍛冶師であるノォトには、魔銀を持ちながらも勿体無いと思える。それと同時に、彼らには鍛冶が不要なものなのであろうとも思う。森を守ることを意義としているのだから、木を大量に必要とする鍛冶をすることは、その意義に反してしまう。

 だから、自分たちは仲良くできない。種として違う、ということは、生きている意義が根本として違うということなのだから。


「なんだか、不思議な気持ちなの」


 フィオネはそう言った。そしてどうしてか、その気持ちがノォトにはわかる気がした。


「私はドヴェルグが嫌いよ。暗いところが好きだし、木々をたくさん切る。それに、人だって好きじゃない。欲の塊だし、真実に気づかないで愚かなことばかりするもの。でもノォトは別。エイトリも、ノォトのためにいろいろしてくれたし、憎いわけではない」


 それはきっと、貴方もエイトリも似たものなのでしょう。

 そう言うフィオネの顔は、月明かりの影になってよく見えなかった。


「私たち、いま一つになれてるんじゃないかなって。巨人を倒すために。それも、人の剣に託すために。ねえ、なんか変じゃない?」

「ああ」


 それはおかしなことなのだろう。ノォトもそう思った。

 少なくとも、歴史的にも類を見ないことのはずだ。三つの種族がともに手を取り合ってるというのは。エルフと人は、ときに手をとることはあろう。ドヴェルグと人は、鍛冶という点で多くの接点がある。けれどもエルフとドヴェルグがこうして同じ場所にいることはない。


「ノォト。貴方はきっといい王になれるわ」


 そう言うフィオネ。顔を傾けて、その表情が覗けた。微笑んでいた。色気があった。


「……なる、と決めている」

「そうね。そのために学ぶべきことはきっとたくさんある。でも貴方は、不思議と私たちを惹きつけるわ。まっすぐ走る貴方を、支えてもいいかなって。すごいことよ」


 それは、ノォトとて同じだった。フィオネのまっすぐで気高く、ときに高慢で、ときに慈悲深く、ときに素直な様は、ノォトの描く理想の王に近しいものがあった。王を目指す自分でも、お前になら従ってもいい、と思うほどに。そして、それでも対等の友としていてくれたことに、深い感謝を覚えていた。


「柄にもないことを言ったわ。もう」


 彼女は不機嫌そうにそう言ったが、それでも笑っていた。その笑顔はずるいだろう、とノォトは思った。


「魔銀はもう、エイトリに渡してるわ。あとは剣の完成を待つだけ。地底にいるのは退屈だけど、こういうところがあるのは助かったわ」

「外の空気が恋しいか」

「貴方だってそうでしょ。こんな暗いところの薄汚い空気を吸ったら、体の中から灰色になっちゃうんだから。そんなの耐えられないわ」


 ふん、とフィオネはそっぽを向いた。フィオネらしいとノォトは内心で笑う。


「感謝している。魔銀のことも、気絶していた俺の面倒のことも」

「いいのよ。私たちにとって必要なことだった、それだけよ」


 それこそが、王としてやるべきことだった。フィオネもエイトリも、そう言うだろう。であれば、ノォトもまた()として応えなければならない。

 魔剣を必ずや再生させ、巨人を討つ。そして邪竜を倒し、地上で最も優れた王として在ろう。それこそが自分に協力してくれた彼らへの報いである。


「……あれは、なに?」


 フィオネが言った。ノォトもまた、窓から向こうに広がる森を見た。

 そのはるか先に、土煙が登っているのが見えた。月の光が明るくてようやく見える程度であったが、それは確かに異変だった。

 木が倒れたにちがいない、と思うとともに、その正体はすぐに見当がついた。日の光に弱いドヴェルグと言えど、国から離れた遠くで木々を切るはずがない。ならば、一つしか考えられなかった。


「巨人!」


 フィオネはそう言って、睨みつけた。

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