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烈日王に極光の歌  作者: ジョシュア
剣の歌
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凍り降りの洞窟(3)

 骸骨たちを、グラニは容赦なく踏み抜いていく。ノォトは片手でフィオネを支え、もう片方の手に剣を握った。骸骨の兵士たちの動きは緩慢であり、グラニの脚ならば振り切れるだろうと思った。

 洞窟の奥へと、どんどん進んで行く。剣を振るって、飛んでくる武具を弾いていた。それぞれの練度は大したことはない。だが、あまりにも数が多い。すべてを相手にしているうちに、また剣が折れてしまうことは目に見えていた。

 なるべく戦わぬように、ノォトはグラニを手繰った。洞窟は一本道ではなく、たくさんの方向に穴が伸びていたが、骸骨の兵士たちはそれを塞ぐようにいて群れを成していた。陣形はまったくできておらず、統率ができているように見えなかったのだが、なんらかの狙いがあることが見て取れた。

 それはノォトの、戦士として、将としての経験と才から出てきた推測であった。


「誘い込まれているな」


 そしてその推測は外れていないだろう。もっと恐ろしいことも考えられるが、いまはこの状況をどうにかしなければならない。

 骸骨の兵士が、宙から落ちてくる。彼らは現れる場所を選ばなかった。ノォトは剣で思い切り弾き飛ばす。無軌道な彼らをまともに相手をしていてはきりがない。

 グラニを走らせていると、大広間にたどり着いた。いくつもの柱が伸びているそこは、もしかすると、ここはドヴェルグたちがかつて賑わいを見せていたころに市として言葉が飛び交っていたのかもしれない。

 しかし、いまそこにいるのは骸骨の兵士たちだった。ノォトはその中心を突っ切って行く。だが、ひときわ大きな骸骨の兵士が現れ、グラニは立ち止まってしまった。

 ノォトはとっさに、フィオネをかばってグラニから転がり落ちた。そのとき、ノォトたちがいたところに三本もの槍が突き立った。グラニは興奮して、骸骨の兵士を蹴り飛ばした。

 取り囲む骸骨の兵士たちが、槍をノォトたちへとむけた。かたかた、と骨がきしむ音。がちゃがちゃ、と鎧がぶつかる音。それが追い詰められているなによりの証としてノォトに突きつけられた。

 剣をぬいて、背をグラニに預けた。周囲へ剣をむけつつ、フィオネの様子を見た。彼女はノォトの胸を掴んで、じぶんの力で立とうとしている。だがうまく力が入らないようだ。

 フィオネの不調の原因はまず間違いなく、この骸骨の兵士たちだろうと見当がついた。彼らが振りまく、木々さえ枯れさせそうな死の気配は、エルフにとっては猛毒に等しいものであるのだろう。


「ノォト……」


 フィオネがノォトを呼んだ。そんな情けない声で名前を呼ぶな。

 そう言いたかったが、言えなかった。必死になって名前を呼んでくれたフィオネを、どうして批判ができようか。


「俺は大丈夫だ」

「聞いて。きっと彼らは、これが狙いなのよ。私たちを追い込んで、いたぶって、殺すつもりなの」

「わかっている」

「きっと、あの巨人もその一部なのよ。そうに違いないわ」


 それはノォトもまた考えていたことだった。

 手口がまったく同じなのである。あの巨人はノォトたちを追いかけているように見せて、この洞窟に追い込んだのだ。骸骨の兵士たちも、ノォトのいく先々に現れていくべき道を誘導した。彼らは繋がっている。

 であるならば、その背後に誰かがいることもわかる。目の前の魔の兵士たちに意思は感じられないから、彼らを操る何者かもいるはずなのだ。


「姿を現せ」


 ノォトは言った。


「いるのだろう、この者どもを操りし術者よ。姿を現してみたらどうだ!」


 声が空洞に響いた。反響した声が、返って来る。

 途端、骸骨の兵士たちの動きが止まった。彼らは突然、整然とした動きで、ノォトたちの前に空間を作ったのである。

 くす、くす、と笑う声。幼い少女の声だった。その声はやがて大きくなる。


「まさか、まさかまさか、ノォトの方から私を呼んでくれるなんて!」


 真っ黒な霧が渦となって現れる。そして渦の中から現れたのは。


「ねえ、呼んで。私の名前。知ってるでしょう」

「まさか」


 ノォトはその者に会ったことはない。いや、この世にいる者でその者と会ったことのある人物がいてたまるか、とすら思う。オーディンやフレイヤと会った者がいても、じぶんのように戦乙女を見た者がいても、この者だけは絶対に。

 知っている。その名も、そして何者かも。


「……ヘル」


 笑いが、さらに大きくなった。その名を呼ばれた者は姿を現した。

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