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烈日王に極光の歌  作者: ジョシュア
剣の歌
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エルフの里(2)

「そこで止まれ、人よ。そこから動けば、次にはお前の眉間に矢が突き立っていると思え」


 矢が一つ、放たれる。ノォトの足元に刺さった。ちらりと見たその矢は、戦うためのものではなく、狩猟のものであった。


「そちらの見知らぬ女もだ。同じエルフでありながら、何故なにゆえここに人を連れてきたのか、説明してもらおう」


 フィオネはぐっと構える。けれども弓も短剣も構えはしなかった。決して、武力では解決するつもりはないらしい。

 同じエルフとして、対立するわけにはいかないのだろう、とノォトは察した。


「それはこちらの言葉だ、エルフの者よ。俺たちにはあなたがたの森を荒らす意図はない。森を荒らす巨人の討伐がこちらの目標である。それはそちらの意思に反するものではないはずだ」


 ノォトは言った。だが、返ってきたのは二本目の矢だった。暗に、黙れと言っているのだ。お前の言葉は聞かないと。それを見て、ノォトはもう何も言うまいと思った。

 このエルフはフィオネと根底から考え方が違う。異なるものを認めないという思考の元に動いている。なにか理由があるのだろうが、わかりあうことは、少なくともいまは無理だ。

 であるならば、ここは黙った方がいい。これ以上、不利にならないために。


「やめなさい。自分たちが何をしているのかわかってるの? 無辜むこの者を捕らえて、恥を知りなさい」

「そちらこそ理解しているのか? ここから先は我らの領域。何人たりとも、侵すことは許さぬ。たとえ、我が同胞の想い人だとしてもな!」

「誰がこんなやつと!」


 突然、フィオネが敵に回る。ノォトは口を開きたくなるのを必死に堪えた。


「って、そうじゃない。いま、この男は私の下にあることをちぎっているわ。私が私の所有物を持ち歩くのに、何の許可がいるというの」

「当然、許しは必要だろう。ここは我らの領土。そして我らは、それを認めぬと言っているのだ」


 話は平行の一途をたどるように見えた。ノォトとしては、一刻も早くこの状況から逃れたかった。しかし、周囲のぐるりと囲まれており、退路はなかった。


「せめて、帰りの道を開けてもらえないかしら」

「ならない。その男はこちらで預かる。抵抗するならば、命の保障はしない。この森を守るためだ」

「この、わからずや……!」


 フィオネには言われたくないだろう、と思いながらも、このときばかりはフィオネの味方をせざるを得なかった。

 我慢できなくなり、ノォトはフィオネの前に出た。


「承知した。お前たちの元へ行こう」

「ノォト!?」


 フィオネの制止の声。それを振り切って、さらに続ける。


「ただし、この女の自由は認めてくれ。ついでに馬の世話もだ」

「……良いだろう。お前たち、準備をしろ」


 男はエルフたちに声をかけた。木々から飛び降りてきたエルフたちは、少しずつ二人に近づいてくる。

 構わずに、フィオネはノォトに詰め寄った。


「ノォト! 勝手に決めないで!」

「いまはそれ以外に道はない。いまは少しでも進むべきだ」


 ノォトは言った。

 それに、彼らの元に行けばまだ活路はある。フィオネや自分が彼らをどうにか説得するか、逃げおおせるか。ここまで来て、みすみすと殺されるつもりもない。

 少なくとも彼らには自分たちの命を奪う意図はないように思えた。そうでなければ、いますぐ矢をこちらに向けて放っているはずだ。むろん、これだけの人数を相手にしたところで負ける気はさらさらないが、ことを荒立てないようにするべきだろう。エルフと対立するのは、ノォトとしても得策ではない。

 まだ猶予はある。そう思えば、いくらか気が楽だ。


「もう、本当に……図太いって言えばいいのか」


 呆れたようにフィオネは言った。ノォトは少しだけ、頷いてみせた。

 エルフたちの手によって剣を取り上げられ、ノォトの手に縄がかけられた。だが、縄を巻く手をノォトは優しく押しのけた。


「無駄だ。そんな細い縄では、俺を抑えることはできない。抵抗はしない。このまま連れて行け」


 そう言うと、エルフたちは少し気圧されたようだった。

 フィオネは気丈に振る舞っている。グラニを連れて、頭上から話しかけていた男のエルフとともに前を歩いいていた。胸を張って、振り返ることもなく。

 それでいい。ノォトはおとなしく、心の裡に笑みを浮かべて、エルフたちのあとについていった。

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