強行脱出
まだ町が寝ている星空の中、六人は馬を走らせた。昼にはシナイグの国境に近い町に着いた。そこでクライドは五人に言った。
「ガイン、私の馬を頼む。私はこれより町の中心の家に火をつける。役人に私が捕まっても手を出すな。取り調べで罪を作ろってシナイグに連れてかれるだろう。皆はあとをつけてきてくれ。脱出の指揮はクレインに任せる。頼むぞ。」「お気をつけください。」クレインは言った。
数時間後。町から煙が上がった。役人がクライドを殴り縛りつけ連行していった。クレインは役所の近くにフェイルを配置させた。役所からシナイグの兵が馬車を使ってクライドを連行しはじめた。フェイルはクレインにカラスを使って知らせた。すぐ四人で追った。途中の川の近くを通ったさいにガインを待機させた。次に門から少し離れた林にブリックと焔を待機するようにめいじた。クレインは方術を発動した。
『虹の布よ、見える姿を消し去れ 霞包姿』クレインの姿は誰にも見えなくなった。クレインは、王都に潜入すると匂いを追って先に潜入したフェイルと合流した。
一方 罪人を捕らえる牢にクライドは連れてこられた。連行されながら目を光らせると、髪がばさつき顔中キズだらけのセアルドらしき人がいた。すれ違いざまだが「・・・帰れ」といわれた。間違いなく本人だ。クライドはセアルドの下の牢に入れられた。
夜になり罪人が寝静まった頃クライドは方術を発動した。『我が信念を現せ 水刃』水の剣で音もなく牢の格子を斬るとクレインと同じ霞包姿でセアルドの牢にむかった。牢兵を水刃で斬り捨てセアルドの牢の前に来て格子を斬ろうとすると、セアルドが腕をつかみ止めた。「一人で逃げろ、私は残る。」「何故です!」
「捕まった時に他の者は処刑された。戻っても生き恥を晒すだけだ。ならここで死ぬほうがいい。」
「馬鹿な事を考えるな。貴方が死ねばセアルド隊の兵はどうなる。貴方は隙を計って命をすて復讐する気だろう。」
「・・・」
「古い付き合いだ。何をするかくらいわかる。だが今は逃げ延びることだ。そしてセアルド隊全員で弔おう。」セアルドは頷いた。「頼む。」クライドの腕を離した。格子は切れた。
『地脈に眠る水龍よ我に力を授けよ 水龍豪波』地面から透明の水の龍が現れ天井に水砲を浴びせ地上までの道が出来た。