〈 叶わない恋、叶えたい恋 〉
それは、きっと初恋だったのだと思う。
私の事をきちんと見てくれた男の子。力強い言葉を言って励ましてくれる男の子。私の事をちゃんと意識してくれた男の子。大切な人なんだ、私にとって本当に大事なひと。
彼と過ごす時間はとても楽しくて、いつも大事な事を教えてくれた。笑顔が好きなんだ、体温が好きだった。でも、叶わない事がわかっている初恋。
彼は過去に好きだった人と私を重ねていたのだ。
それを知ったのはつい最近だけど、物凄くショックだった。だって私を見ていたわけじゃなかったから。彼女に昔伝えたかった事を代わりに私に言っただけだったから。私に似た誰かの事を意識していただけだったから。
「それでも好きなんだろ?あいつの事」
それでも好き、本当にそうなのだろうか。
「なぁ、お前の好きや大切ってそんなもんだったのかよ。確かにあいつは馬鹿だ、いつまでも過去に囚われて過去の事ばっか気にして。もう戻れるわけないのに、今は今しかないのに、、、」
おもむろに手を私の方へ伸ばし、彼は私の髪をそっと撫でてくる。優しく触れた彼の手のひらはとても大きくて、そして暖かかった。
「でも、お前も馬鹿だよ。あんな奴やめといて俺にすれば良いのに」
「、、、、、え?」
そっと呟いた彼の顔はとても真剣で嘘なんかには思えない。
「お前には嘘なんかつかない。ずっと前から、本当はお前の事が好きだったんだ。」
「そんな、全然私、知らなーーー」
「あぁ、悟らせて仕舞えば今みたいに困った顔すると思ったから。好きな子いじめようとするほどガキじゃないよ。でも、どうしても今伝えたかった、、」
彼はどんな気持ちでその言葉を言ったのだろう。私にはわからないけれど、今の彼の顔はとても辛そうに見えた。
「大丈夫、お前の気持ちはわかっているからそのまま黙っていて。
俺は、お前が好きだ。お前があいつなんかを好きでも、絶対に叶わない恋ってやつだとしても、俺はそう簡単に諦めたりなんかしない。ずっと好きでい続ける。それほどお前の事が好きなんだ。でも、お前もそうなんだろ、、、?」
こくん、と私は頷く。いっぱいいっぱいの私にはそれしかできない。
「それでいい。そんな簡単に好きなやつを諦めたりしちゃ駄目なんだ。あいつも同じだよ、でも想いは生きてるお前じゃないと伝えられない。失敗しても平気だ、今すぐ本当の想いを伝えてこい。初恋……なんだろ?」
ありがとう、と呟いた言葉は果たして彼に伝わったのだろうか。
ごめんね、本当にありがとう。
気がつくと私は走り出していた。頬に当たる風はほんのちょっぴり冷たかったけど、気持ちよかった。
誰かにとって大切だから、頑張ろうって気になれる。