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不倫騒動から始まった純愛話

心底理解できない。だから僕は素直に君への気持ちを口にする。

作者: ふと浮かんだから書いてみた

このお話は特定の誰かのアンチを叫んでいるわけではなく、一連のニュースを見てふと浮かんだのでできたものです。

何よりの被害者は奥さんだと思うのに、苦労してた時代を支えた妻を捨てる男がいても、その後の妻が幸せになりました的な話って公にはでてこないなぁって思ったので、書いてみた。


それは作られた舞台セットの上で、まぶしいほどの光を受けていた男性の言葉から始まった。



 新しい年を迎えて数日。

 そのスキャンダルは芸能界に、そして一般の視聴者たちにとんでもない驚きをもたらした。

 「元気で明るく清潔感のある女の子」

 そんな十代の少女たちにしか似合わないような言葉を付けられることも珍しくはない30代の女性タレントの不倫スキャンダル。

 相手はデビュー直後から好調に売れ出しているバンドマンの男。

 別に互いが独身であったならなんて問題もないことだったろう。

 独身の20代後半の男と30代前半の女であっただけならば、いっそ祝福すらされたはずだ。


 けれど男は既婚者であった。

 しかも新婚。

 入籍後半年も経っていない。


 男の妻は一般女性で、男がデビュー前からの付き合いであり、男一人の収入で食べていけない頃から同棲して支え続けてきという。

 ファンへの影響を考え既婚であることを隠していたこともあり、既婚でありながら妻以外の女性と親密な関係を持った男が当然悪い。

 男女共に世間から叩かれようとも仕方のないことであるが、男もだけれど「愛人」への世間からの拒絶反応も酷いものだった。

 まだ愛人の彼女が正直に告白し関係各社そして互いのファン何よりも男の妻へ真摯に詫びていたならばまだ違うかもしれない。

 けれど彼女は違った。

 関係各社への詫びだけだとしか思えない会見を開き、その会見の場所になんと「ウェディングシューズ」として知られている靴を履いてきていた。

 もちろん花嫁だけが履く靴ではないだろう。けれどあまりに質素と清潔でまとめてきた上半身に対し、足元の靴だけが浮いていたのだ。

 細いピンヒールで華やかな飾りのついた靴では、上と下での印象が離れすぎ、それに気が付いた人々により明かされた靴の意味に彼女の恐ろしさを感じた人も少なくはなかった。


 彼女は「愛人」から「妻」へなる決意を表明したのだろう、と。


 男の妻へ悪いなどと思ってもいない、それどころか相手の妻は彼女にとって「敵」なのだと。

「敵」に阻まれていて想いの叶わない可哀想な自分たちだけれど、この辛い期間を耐え忍びいずれ二人で幸せになろうと、そう直接会えなくなった男へ示したのだとしたら、それはもう狂気の沙汰ととられても仕方がないだろう。


 夫婦とは法により認められている間柄だ。

 あの白と茶の紙に署名をし役所へ提出すれば、正も負も全てを分かち合う間柄であると、いざという時はお互いの生死における決意をする決定権すら持つ存在だと、お互いがお互いに対して契約を結んだのだと宣言し認められたことになる。

 内縁の妻などと嘯こうが何年同居しようが、戸籍上の妻がいるならば「愛人」なのだ。

 男が不幸にもなくなればなんの権利もなくなるどころか、緊急時に手術のサインをする権利だって「愛人」にはない。

 妻のいる男に横恋慕して相手の家を壊す悪であると言われても、反論など何一つできるわけもない存在だ。

 仮に先に男の家庭が破たんしていて妻を必要としていなかったのなら、他に恋しい相手を見つけた時点で離婚を急いでいたはず。

 それが「愛人」ができてから離婚をほのめかしだしたなど、まさしく「愛人」が家庭を壊したのだとしか言いようはない。


 しかもその「愛人」は「世間的に良い子」とされている女性タレント。

 まっさらですよ良い子ですよという顔をしながら、裏では妻を捨てさせようとするなど、そのイメージとのあまりのギャップに人間不信に陥りそうなもの。

 何も知らずに男の様子のおかしさに心を痛めていた妻にしてみれば、それは言葉になどできないほどの悲劇を突然開幕されたようなものだ。

 男からプロポーズされ入籍したけれど、ファンへのこともあり結婚の事実を隠してくれといわれても承知し、僅か数か月で有名芸能人相手に不倫騒動で自分も連れて行ってもらえたことのない相手の実家へ、世間的には良い子とされている愛人を連れていかれているという。


どれほどの悲しさだろう。

どれほどの辛さだろう。


 そのような裏切り方をするならば、プロポーズから入籍まで半年以上かけたのだ。

 いっそプロポーズ自体を撤回し、これから大切な時期だから別れてくれと、同棲していた女性に別れを切り出していれば、まだ彼女への傷は浅かったかもしれない。

 自分も夢中になって応援し続けたバンドであり男である。

 辛くとも悲しくとも泣きながらでも大人しく分かれたことだろう。

 しかし、裏切られた妻という立場になってみれば「何故」だ。

 何故自分と結婚したのだ、何故自分との離婚が成立する前に実家へ不倫旅行など、何故相手が良い子の仮面をかぶった相手だったのだ。

 何故何故何故何故。

 あげだせばきりの無い何故しか浮かばなかっただろう。

 それなのに芸能界の多くの人たちが、浮気をしていた不倫をしていたと報道された過去のある男性どころか、酷い裏切りを受けた妻と同じ性別である女性たちですら、ただただ「愛人」の女性タレントの肩を持つ。

 裏切られた、家庭を壊された妻への配慮などせず、ただ「愛人」の擁護をすることに自分は気持ち悪さしか感じない。



「そう、思うのはおかしいことかな?」



 スタジオはシンと静まり返ってきた。

 端正な顔で無表情なままで、僅かばかり首を傾げている姿は、彼にとてもよく似合っていて、その口から静かなトーンで語られる内容さえ違ったなら、彼の目の前で真っ青な顔で立ち尽くしている女性どころか、スタジオ内の女性すべてからうっとりとした顔で見つめられていたことだろう。

 けれど去年大きな騒ぎになった不倫疑惑離婚騒動後、不倫カップルの入籍そして先月その不倫カップルスピード離婚が成立したばかりの醜聞まみれで始終した話を、まさかここで蒸し返されるとは誰も思ってもいなかった。


「このまま数年たてば「そんなこともあったね」ですませられる、そんな考えが透けてみえるようで心底嫌悪感しかありません。

 去年、被害者でしかない奥方ではなく、愛人を擁護した方々は、同じことをしている、もしくはこれからする方々なのだろうとしか思えないので、愛人擁護派の君とお付き合いすることは絶対にありません。

 悪いことをしたのだと、奥さんに心の底から謝ってそれから反省をと促し、再びやり直すなら待っているよと迎えるならまだしも…何故あんなにも肯定されたんです?

 僕にはまったく、これっぽっちも、全然、理解できないし、したくもない。

 僕は僕の恋人や妻に誠実さを求めます。

 好きになってしまったものはしょうがない、などという理由を正義のように振りかざし、悪びれもなく不倫をされる未来は冗談じゃない」


 憧れの相手や好きな相手に公開告白をするという企画の番組で、事前の報道でも彼女は本気の告白をするのだと相手をぼかして伝えられていた。

 叶うなら結婚を前提とした恋人に。

 頬を染め夢見るような顔で決心をしている顔は事前CMやネットで流れ、人気若手タレントでもあるだけにこの告白は番組の目玉のような扱いですらあった。

 彼女自身の好感度も高く容姿も優れていて叶わないまでも、お友達からという話でまとまるだろうとたかをくくっていただけに、今の状況に撮影スタッフどころか共演者の誰もが迅速に事態回収もできない。

 彼女が凍り付いて動けない間に男性はさらに言葉を続けた。


「擁護していた人たちもですがそれを推す番組制作陣たち…結婚という契約の不履行を起こした相手を擁護するということは、様々な契約事項も利益の良い方へと簡単に変更されたり裏切られたりするかもしれない…そう思ってしまった、信じられなくなったから、テレビに出なくなったんです」


 そう、男性もミュージシャンであるのだが、彼のバンドは去年からぴたりとテレビにでることをしなくなった。

 それは言われてみれば去年の1月半ばからだったことのように思いだされる。

 最後はそう、問題の不倫男と共演にもなってしまっていた音楽番組だ。

 それ以降彼らはテレビから姿を消した。

 これは業界内で有名な話になっているのだが、現在の彼らの音楽は素晴らしく人気であるというのに、あらゆるテレビ番組にはでてこない。

 楽曲作りやライブを優先する状況も珍しくないのがミュージシャンたちなので特に気にしている存在は少なかったが、新曲を発売しようとタイアップに曲が使われようと、テレビにでてこない状態は言われてみればおかしいのだ。

 ヒットチャートの上位を独占しても、彼らは自分たちで流す動画かライブ以外ではその姿を見せることはなかったし、フェスなどでも自分たちの姿をテレビ局に撮影させることは許さなかった。

 その意味が今ここで公表されている。

 事務所や力ある者からの圧力で行動する者たちを信用できないし、気持ち悪いと思っている者達と共演などもできないからこそ、テレビから姿を消したのだ、と。

 彼から向けられる無表情と淡々と語られた内容がようやく頭に入ってきたのだろう。

 告白をした女性タレントは何も続けられずに、けれど己のしたことをきちんと覚えていたのか、男性に向かって頭を下げてから今度は自分たちに向けられていたテレビカメラへ向かっても頭を下げ、自分の席へと戻っていった。

 その彼女を見送ったままだった男性は改めてカメラの方へ振り返り、にこりとこの場で初めてになる笑みを向ける。


「その点、僕は理想の女性を見つけたのですよ。

 彼女はキラキラした瞳で音楽を語り音楽に聞き惚れ、愛した男のためにたとえようもない悲しみを抱えながらも男を支え続けた。

 彼女を見かけた時、どれだけ男を好きなのかを察して挨拶しかできなかったけれど、あんな顔であんなに嬉しそうに世話をしてくれる女性を妻にできたなんて、なんて羨ましいと正直羨んでいました…けれど、彼は彼女の価値をまったく理解していなかったようだから。

 もう僕が遠慮なく彼女に歩みだしても誰にも文句を言われないと思うんです。

 手紙でしかやり取りをしたことはなかったけれど、いつも彼女の言葉に、気遣いに、僕もバンドメンバーも支えられてきました。

 彼女からの気遣いあふれる優しい言葉を目にするたび、あふれるように想いは生まれたけれど、彼女を汚すようで口にできないから音楽にしていったら、なんだかこの一年は新曲ラッシュになっちゃったんですよね」


 そう、彼のバンドはこの一年の間に一か月に一枚の新譜を出し続けていた。

 そういう企画でもキャンペーンでもないらしいのに続いた十二曲。

 順番に並べてみれば連続発売の始まった最初の頃は温かく優しい曲で、だんだんと元気づけるような曲が多くなり、年末からは愛を囁くものになっていたのだ。


「これの放映日がバレンタイン当日でしたよね?最新曲の発売日。

 一年前から、毎回彼女へ事務所を通して手紙と一緒にCDを贈っているんだけど、今回のこの曲も発売日当日に彼女の手元に届いているはずだし。

 放映時間も夜で、もしかしたら彼女も見てくれているかもしれないから、番組の内容にちなんで僕も告白していいですか?」


 彼は現場にいたプロデューサーへ顔を向けた。

 半ば茫然としたまま相手が頷いたのを確認し、自分に向いてきたカメラへ向かって男性は目元をわずかに赤くさせ、それでも隠せない愛しさをおもてにのせて微笑んだ。


「ねぇ?曲、聴いてくれた?

 この一年、君は僕らをずっと応援してくれたね。ありがとう。

 たくさんの音楽を好きで、彼の行いと曲は別だからと、彼の曲を今も好きなことも知ってるよ。

 音楽に嫉妬しそう、なんて本当に初めてのことで自分でも呆れるばっかりなんだけどね…

 あのね、君は笑うかもしれないけれど、彼に夢中だった君に一目惚れしたんだよ。

 そうして折れそうになった君が心配でたまらなくなり、気丈にも立ち上がった君を尊敬したんだ。

 しばらくはやせ我慢だったんだろうけど、それでも大丈夫だ元気だと書面で訴える君に頭が上がらくなり、そうして元気づけるために贈った曲に喜んでくれる姿に僕こそが嬉しくて。

 周りには『何?今更気が付いたのか?』って呆れられたけど…

僕の迷惑になったら申し訳ないからと、ファンレターという形で送ったCDや手紙への感謝を示し続けてくれた君に、僕は二度目の恋をした。

 君に一切の迷惑をかけない、なんて言えない。そんな不確定な約束はできない。

 でもこれだけは約束するから。

 僕は君への想いがどうなろうと、ごまかしも放置もしないから。

 良くも悪くも君に正直に告げると約束します。

 だから僕と歩む未来を、可能性としてでもいいから考えてくれない?

 はなっから「ありえない」とか言わないで、ちゃんと考えてください。

 それで僕のことを好きになれたら、僕と結婚を前提におつきあいしてください!」


 よろしくお願いします!

 そうはっきりと告げ深くお辞儀をした男性にスタジオ内からぽつりぽつりと拍手が巻き起こり収録は終了した。

 女性タレントの告白から彼の告白までをノーカットで放映するなら放送可という書面での契約を交わした後、この問題の収録番組は無事に世間に放送されたのだが、彼が婚姻したという話がでるまでには二年という時を要する。

 その間に彼のバンドは恋愛色の濃い曲を次々出し続け、ファンたちからも「もう諦めて捕まってしまえばいいよ」「そしたら次はウェディングソングだね」などと温かく見守られ続けるのだが、それは問題のテレビ番組を見ていた中、初めて当人に自宅突撃をくらうはめになっている彼女には想像もできない未来のお話。




「ねぇ、僕の告白、ちゃんと見てくれた?」

「いや待って、ちょっと待って落ち着いて!?

 何がどうなって今ここに貴方がいるの!?

 今テレビでって…収録?だったんだろうけど、え?は?

あの番組の相手って……………ありえないから!!!」

「ありえないって言わないでって言ったでしょ?」

「いやいやいやいや。ほんとに待って!?」







書きたい部分だけ詰めた短編なのでいろいろアレで申し訳ありません。

これ、不倫男のバンドがデビュー直前の頃、そのライブ見に行ってて裏方スタッフとしても支えていた奥さんを勝手に一目ぼれして親密な空気を感じて勝手に失礼してた告白男がいたという前段階があり。

で。


不倫スキャンダル勃発→離婚調停(リアルな某スキャンダルの方は是非訴訟を起こして頂きたいがこのお話の中では奥さんの心身が安定したら素直に離婚)→離婚報道でた直後から男は奥さんへ励ましやら応援やらのCDと短い手紙を渡したらお返事もらってそれが続いちゃう→月一新譜=月一CDと手紙を贈る→二回目の恋どころか一目惚れからマジ惚れ重篤化→離婚後半年経過したら元夫と元愛人が結婚→あれと同じはムリとどうせすぐ終了だろうともうちょっと様子見→某夫婦破局→さぁもう攻撃にでてもいいかな♪


な、流れで、今回の短編はこの攻撃部分でございます。

やらかした二人へ、そしてそちらを擁護してた理解できない人たちへ素直な気持ちを正直にと、愛しい彼女へ向けてアピール開始な部分の一部。


真面目に全部書いたらどんだけ長くなるの…と、一番書きたかったとこを書きました。

この部分前は無自覚攻撃を垂れ流し、この後は自覚ありありで砂糖が吐けそうな勢いになりますね、この男。

純粋な実力もいるけど人気商売でもある。でも、言ってることは正論なんで、業界内とかはともかく一般人には当たり前に受け入れられるどころか人気も上がるだろうってことと、男の性格を知る周囲は諦めも含めて好きにさせた結果。

外部発ざまぁ後幸せEDでございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 正論。不倫擁護厨ざまぁ、な点。 [一言] 奥さんを気にした発言してたのは、毒舌でカムバックした某子役出身俳優ぐらいかなぁ。番組内で出演者が擁護に走る中、一人きっぱりと否定していたニュースを…
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