記憶喪失の魔王
昔書いた作品。PCのディスクに蔓延っていた奴を引っ張りました。
暇つぶしに読んでやんよって気分で読んでね☆
物心ついた時から、俺は魔王だった。前も後もないはずなのにふと思うときがある。なぜ俺は、魔王なのか・・・
いつからこんなに思うようになったかなどは定かではないが、ひどく喪失感を覚える・・・このところは、特にそうだ・・・
何かが、こぼれ落ちてるように・・・それを思い出すことができない・・・・ひどくもどかしい
憂鬱な日々を過ごしていた。
何も面白みも感じなかった。
ただ・・・時折俺に戦いを挑んでくる人間を嫌悪していたが、このところそれで憂さ晴らし中だ。
最近思うよになって思い出したことがある。人間が、俺たち魔族を嫌悪してるが、実際のところ、俺は、この世界では欠かせない番人だ。
俺は、もともと天界の神だったはずだ。詳しくは知らん。なぜだかそう記憶している。天界の神共に有り余る力に持て余され魔界に落とされた・・・・それ
だけなら構わなかったが、ついでに面倒事を押し付けられた・・・・冥府の番人だ・・・・人間が死んだら赴くあの世というやつの扉役だ・・・意味もなく
玉座に鎮座してるが俺の魔力で扉が閉鎖してるが・・・・俺が退いたら当然開くのだが・・・・まあ、魔界よりも人間界の被害が大きいらしい・・・それを
人間ども知る由もない不本意ではあるが・・・人間は魔王を倒したら安寧が訪れると勘違いしている・・・・・・魔界も色々きな臭くなってきてるしな・・
・ほら・・・そうしてるうちにまた人間界の勇者が現れた・・・
「魔王覚悟しろ!!」
勇んで剣を構える。遥か遠くで三人が走ってこっちに向かってきていた。
「・・・愚かな人間共め・・・この魔王に挑むとは身の程知らずめ」
俺は、玉座に鎮座し足を組み頬杖をついた
人間に俺が倒せるはずがない・・・自分でさえも退くことがかなわないのに・・・
「ほざけ!!」
勇者が魔力を放出し剣に絡ませ俺めがけてかけてくる
そんなこと許すはずなどないがな・・・
無詠唱で魔法陣が現れ防御癖をうみだす
「っぐ!!!っかは!」
勇者の剣戟を弾き、素早く爆風を生み出し勇者が入ってきた扉に吹き飛ばした
「ガクト!」
「無茶するな!!!!」
「みんなで戦う!」
やっと追いつくことができた三人が次々にガクトと呼ばれた勇者のもとにかけよる
フム・・・一人はエルフの女、それと剣士・・・最後に魔法使いのガキか・・・丁度暇を持て余していたところだ・・・軽くいたぶって退場させるか
「許さない!・・・大地の精霊よ、地下深くよりわれの声に応え赴くままに動け!」
エルフの女が杖を振りかざした
床が盛り上がり泥人形が三十体くらい現れる。素早く魔法使いの女が呪文を唱え始めた
「紅蓮の炎に焼かれ大地に大輪の花を咲かせ・・・我リディア・プラントが命ず」
一面火の海に焼かれる・・・・俺の城なのによくもまあ・・・フム・・・あいつらはそこそこ魔力が強いのだな
「でりゃああああぁああぁぁぁぁ!!!」
雄叫びをあげ剣士が上から降ってきた。まあ、予想はしていたので驚かなかった・・・また俺は無詠唱で水の最大魔法をぶつけた・・・ついでにあたり
の炎は鎮火する
「うわーーっ!!!っぐ・・・」
またも壁に叩きつける暫く震え気絶した・・・死んではいないそこらへんは手加減したしな・・・
「テルノ!!」
「!!!」
エルフと魔法使いの少女が息を呑む
案外あっけなかったな・・・・あの様子では絶命したと思うだろうな・・・
「テルノーー!!!貴様ーーーっ!よくも!!」
勇者が怒り狂い震える体を立ち上がらせていたそれにすかさず魔法使いの少女が治癒魔法を唱える
「面倒になった・・・俺が直々に剣で相手してやろう・・・光栄に思え」
度重なる人間達による襲撃で内心イライラしていた・・・夜もおちおち寝てられないんだ・・・書類も書かねばならないしな・・・執務が忙しい時に限って
こいつら人間がやってくる・・・昼間は人間の相手・・・夜は執務・・・眠くてどうにかなりそうだ・・・俺は今機嫌が非常に悪い・・・許せ人間手加減が
できそうにないな・・・・・ん?・・・そういえばいつも気絶させて遠くの村に置き去りにしてるせいで減るどころか逆に増えて何度でもやってくる・・・
なんで俺は人間を殺さず痛めつけて村に捨てるようになったのか思い出せないな・・・・部下にも示しが掴んし・・・無駄な殺生は好かんがワラワラと集ま
ってくるのはいい気がせぬな・・・俺は餌か!人間界滅ぼそうかな・・・そしたら俺に向かってくる人間はいなくなるし、睡眠時間も増える・・・うん、い
い加減殺っていいよな☆
魔王は立ち上がりゆっくりと玉座から離れ階段をゆっくりと降りるその手には瞬時に召喚した剣を掴んでいた
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」
魔王と勇者の剣激で衝撃波が生じる。連続で勇者が畳み掛けるが魔王はそれを軽くいなす・・・それが気に入らないのか勇者の剣幕が強くなった・・・だが、
俺の相手ではなかった・・・強者が弱者を甚振るごとく暫くすると勇者が押され気味になってきた。息があがってきてるな・・・そろそろ潮時か・・・
勇者の剣を弾き飛ばすその勢いのまま懐に入り溝を狙うその時ーーーー・・・・
『ーーー・・・ダメだよ・・・弱いものイジメしたら・・・ーーーー』
急に走馬灯のように声と少女の姿が流れ込んできた
『ロシュ・・・スグそんな顔しない!』
黒髪黒目の少女の声が、鈴の音のように心地よく響く・・・
なぜ俺の名を知ってるのか不思議に思ったが不快感はなかった・・・知らないはずなのに酷く懐かしい雰囲気だった
『ルゥ!あんたもよ!!』
少女はすごい剣幕で腰に手を当て横に向かって睨む・・・今気づいたが横に白銀の髪に深い青色の目をした幼子がたっていた
『だって・・・これも習得の為なんだよ・・・』
ルゥと呼ばれた幼子はブスっとし唇を尖らせていた
『でも、弱りきった動物を甚振るなんて頭の小さい者のすることよ・・・ルゥほどの腕前なら一瞬で仕留められるでしょうに・・・ロシュにはまだ無理よ
!!』
狩りをしていただろうか?・・・思い出せないな・・・ルゥというこの幼子に俺は劣るというのか?否・・・ありえない、俺は魔界を統べる魔王だ・・・
どんな生き物か知らんが、一瞬で終わらせることなど朝飯前だというのに・・・この少女は何を言ってるんだ?寝言は寝て言え・・・
ルゥと呼ばれた幼子は手混ぜをしながら呟くように喋りだした
『それにロシュだってまんざらでもなかったし・・・姉さんが心配するほどでもないよ?それに・・・っ怪我一つしてないし・・・』
呟きの最後らへんで少女の剣幕が増したためルゥはビクビクしながら答えた
『ルゥ・・・あんたって子は!素直に謝ることもできないの?』
『だって・・・それに力をつけたいってロシュが僕に頼んできたんだよ・・・・』
否、俺はお前に頼まずとも狩りなどちょちょいのチョイだ!お前ら二人はオツムがおかしいんじゃないか?なんせ俺、魔王だし・・・・
『だってもクソも受け付けない!それと、頼んだ物ちゃんと獲ってきた?』
『うっううん・・・・』
プルプルと首を振るルゥの足元にあった袋を少女が徐に持ち上げ中身を確認する
『ルゥ・・・・・ウチ言わなかったっけ?ウチは、夕飯の魚を獲ってきてって頼んだじゃない!!なんで腹の足しにもならない鼠なの!?それも大量に!!
信じられないし、食べれないわ!!気持ち悪いわ!!ん?底に・・・・・んぎゃーーーっ!!!
っーーーなんてもの袋に入れてるの!!?信じられない!!!うひゃぁーーー!!しかも生きてるし!!』
袋の中身を半分以上地面に捨てていた少女は少し固まり、唇を戦慄かせ袋を地面に叩きつけた・・・悲鳴を上げながら・・・すると待ってましたと言わんば
かりに黒い虫がわらわらと袋から出てきたそれを見た少女は悲鳴を上げながら足踏みを繰り返し俺とルゥと呼ばれた子供に抱きついてきた
あれは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「(たしか・・・人間界で言う)ゴキブリか?」
フム・・・確かそんな名前だった気がする・・・ふと現実に引き戻された感がするが・・・なんだったんだ?あ・・・たしか人間と戦っていたな思い出し
た
「!!!・・・・・貴様!私の何処が!ゴキブリだーーー!!」
勇者は距離を取り転げながら剣を素早く拾い上げていたが魔王の一言で思考を一瞬停止し大きく叫びながら剣戟を交わしながら攻撃をしてくる
勇者はさっきの行動を言ったのだと勘違いしていた。それを知らない魔王は首を傾げた
「?どうした?(あれは間違いなくゴキブリだ)ゴキブリをゴキブリと言って何が悪い?」
それを受け流しながら俺は答えた
魔王の笑みはその黒い虫の名を思いだし笑った(他人が見たら不敵な笑み)
「ゴキブリだとーー!?一度ならず何度も!!ふざけるな!」
ますます激怒しながら剣戟を繰り広げる
「ガクトをゴキブリ呼ばわりするなんて!!魔王あんた目腐ってるんじゃないの!?」
「ゴキブリ真っ黒・・・勇者黒くない・・・金色の髪してる・・・むしろコガネムシ・・・」
勇者の仲間が叫んていたがどうでもよかった・・・フム・・・そろそろ切り上げるか
「訂正はする気はない(間違いなくゴキブリだ)・・・お前もしぶといな・・・そろそろ終わりにする」
魔王は目つきを鋭くし、少し距離をおき居合の構えをしたすると、魔力が溢れ玉座の間内に広がる
「光栄に思えよ・・・人間の勇者よ・・・末端の力を受けることを・・・残念ながらお前では、俺の足元にも及ばぬ・・・自惚れるな愚かな人間よ」
その刹那・・・・時が止まったかのような静寂がすぎるいつの間にか勇者を通り越し魔王は剣を鞘に収めていた
勇者は何が起こったか分からず、構えを解かずに素早く後ろを振り向くが動作が酷くゆっくりと感じた・・・・まるで映像をコマ送りで見てるかのように
・・・
・・・ーーーチンッーー・・・
やっと振り向くと魔王が剣を鞘に収める音があたりに響く
「ーー・・・っま・・・王・・・」
口から血を吐きながら切られた所から血が流れる・・・勇者が膝を織り前のめりに崩れ落ちる・・・
「いやーーー!!!!ガクトーーーー・・・」
「勇者様・・・」
エルフの女と魔法使いの少女が勇者に駆け寄っていく
「ガクト・・・死なないで・・・お願い・・・お願いだから!」
「勇者様・・・」
勇者の傍に近づきエルフの女が抱き起こす
「人間・・・何を叫んでおる?俺に挑んで、敗れた、それだけだ」
その横をゆっくりと魔王は通り過ぎるコツンコツンと足音を立てながら答える
「この外道!!魔王がいるから・・・この世が混沌に落ちるのよ」
「愚問だな・・・それは間違いだ・・・・俺が、魔王が、存在してるから均等が・・・世界が落ち着いてる・・・・俺が消えればお前ら人間は生きて行け
ぬ・・・・・それにそいつはまだ死んでおらん・・・早まるな・・・」
「え!?」
「・・・・・ホントだ・・・まだ生きてる・・・良かったねベルベラ」
「ガクト・・・・待ってて今回復をするからね・・・」
魔法使いの少女が勇者の脈を恐る恐る測ると安堵したかのように微笑んだ。それを聞いてエルフの女は少し落ち着きを取り戻した
「・・・・祝福と喜びの女神よ・・・我の喜びと共に命の息吹を與たまえ」
エルフが唱えると勇者は淡い緑色に包まれる
「・・・ここが聖域なら完全に回復するのに・・・」
魔法使いの少女が悔しそうに呟く
「でも、血は止めることができたわ・・・だけど・・・」
エルフが魔法使いと喋ってたが、魔王の歩く後ろ姿を睨む
「安心しろ・・・お前ら人間など相手にせぬわ・・・」
魔王は立ち止まるも振り向かない
「信じないわ!!」
「かなわなくても・・・戦う・・・」
「っそ・・・うだ・・・戦わなきゃいけないんだ・・・」
気絶していた剣士も震えながら立ち上がる
「・・・・・・・・はあ・・・」
人間は本当にめんどくさいな・・・弱いのに俺に立ち向かってくるし?なぎ払ってもなぎ払ってもやってくる・・・・可愛いってもんじゃない・・・まるで
害虫だな・・・うん・・・・害虫駆除をしよう
魔王はため息を吐くとその刹那に剣士の目の前に現れると同時に額に人差し指を当てる
「っ!!!!」
「【動くな】・・・」
周りの人間を魔力を込めた言葉で縛る
「っ!!!!」
「っむ!」
「っぐ!!!!」
「知ってるか?・・・・知らないだろうから教えてやる・・・・お前たちがこの魔界に足を踏み入れた時から俺は殺ることができたんだぞ・・・なに、簡単
なことだ、今お前たちが縛られてる意味がわかるか?俺がお前ら人間の真名を知っているからだ・・・」
「「「!!!!」」」
三人は驚愕の表情をつくる
真名を魔族に知られたら縛られ、奴隷と同じに扱われる一生傀儡として扱われるのだ。人間達はそれを知っているために細心の注意をしていたのだ。そのは
ずなのになぜこの魔王は、我々の真名を理解したのか・・・・この時ほど魔王の恐ろしさを再認識したのだった。魔王の手の内で転がされてたことに・・・
「魔界は俺の一部だ・・・・踏み込んた時点で感知はしていた・・・俺の目は千里を見通す・・・・真名で縛ることなんて意図も容易いお前らの情報なんて
手に取るようにわかる・・・・あえてその場で殺らなかったのは害がないと判断したからだ・・・それに無駄な殺生は好まん」
「ま・・・・王・・・・貴様・・・・」
動けるはずもない勇者が苦渋の表情になりボロボロ涙を流し這い蹲りながら答えた。
「な・・・かま・・・に手を・・・だす・・・な・・・ハァハァ・・・」
「「「ーーーーーっ!!!」」」
縛られてた三人は勇者の姿を捉え涙を流した。
「(もうやめてくれ!ガクト!お前はこれ以上魔王に逆らうと死んでしまう!!俺の前で・・・俺より先にいかないでくれーーー!!)」
「(ガクトーーーー!もうやめて・・・こんな終わり方見たくなかった!!!私が・・・私が助けたかったのに・・・あぁ・・これならガクトに告白しとく
んだった・・・)」
「(勇者様・・・・一生おしたい申してました・・・・助けてくれた・・・・ご恩・・・まだ、返してない・・・こんなところで・・・死ねない!!)」
「・・・・貴様も【動くな】」
「っ!!!」
魔王はため息を吐くと剣士の額から指を離し勇者のもとへとゆっくりと近づいてきた
「「「っーーー!!!!」」」
皆が死を覚悟し目をつぶり衝撃に備えた
・・・・・・・・・・・・・が、いくら待てども衝撃も来なかった恐る恐る目を開けると魔王はゆっくりと玉座の方へ向かっていた。魔王が玉座に腰掛けた
「興が覚めた・・・つまらん・・・それに約束を思い出した・・・・故にトドメは刺さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・だが、また狙われたら
気分が悪い・・・・・・・・・・・・・・・エルダ=シジソウス・・・・ラルバ=クインデ・・・・トディ=ソルカ、ミラ=ナデ・・・貴様らの名は縛った二度
と魔界への立ち入りを禁ずる・・・その時は、分かっておるな?」
魔王は指を鳴らしたすると勇者達は縛りから解放された
「「「「っ!・・・・・・・・・っは!!!!」」」」
勇者含め他三名は真名を言い当てられ驚愕した。今は見逃すが、また魔界へ足を踏み入れたら命はないぞ・・・・と脅しをかけてきたのだった・・・そして
勇者たちは魔界へ他の勇者達と一緒に足を踏み入れたとき半数が忽然と消滅したのを思い出していた。その時は不思議に思ったが、今この時理解したのだ・
・・
「せめての情けだ・・・・」
魔王はそう言うと指を鳴らした
勇者たちの足元には幾十にも重なった色とりどりの魔法陣が現れた一つ一つが眩く光りだす
「っこ・・・・これは!!!」
勇者改エルダは重傷のはずだったが完治していた
「なっ!!!なんだこれは・・・」
剣士改ラルバの傷も癒されていた
「こっ・・・・これは!!!最大にして最強の治癒魔法・・・・テンディルバルゥンガ」
エルフ女改トディは文献でしか見たこともない魔法陣をみて感動していた
「暖かい・・・・気持ちいい・・・とても・・・とても懐かしい・・・ルティア姉、ルティル兄の気配がする・・・」
魔法使いの少女改ミラはほころぶような笑みを浮かべ涙を流した
・・・・・・・・・・魔法使いの・・・・面倒だもういい・・・・ミラはいま何と答えた?引っ掛かりを覚えた俺は小首を傾げていた
「ミラ・・・貴様さっき・・・なんといった?もう一度答えよ・・・」
ミラはビクッと震えるそれでも怯えはあるが真っ直ぐに魔王を見据え答えた
「暖かい・・・気持ちいい・・・?」
ミラは小首を傾げた
「違う・・・・」
「とても懐かしい・・・」
「そのあとだ・・・」
早鐘のように鳴り響く心臓がうるさく感じたミラの喋る言葉が小さく聞き取るのもやっとだった
「ルティア姉、ルティル兄の気配・・・」
「それだ!」
魔王は今までの喪失感ももどかしい気持ちの意味を理解したのだった
思い出した・・・はっきりと・・・俺には家族がいた・・流民の民のたしか・・・・ルティアとルティル、末のルゥだ!
なぜ忘れてたのか・・・わからないが・・・俺はいつの間に魔王になっていたんだ?なぜ俺がここにいるんだ?分からない・・・なぜ?なぜ!?この喪失感は
物心ついた時から一緒にいた俺の家族・・・
探さなくては・・・・
会いたい・・・・
会って抱き合って他愛のない話がしたい・・・
ルゥと喧嘩もした・・・あの時喧嘩別れをしたままだった・・・
どうせルゥのことだもう忘れているだろうな・・・
ルティアは怒るととても怖かったのを覚えてる・・・
ルティルは決まってなだめ役だった・・・
懐かしい・・・覚えてる・・・俺は・・・俺は・・・・
魔王は片手で顔を覆った。体から迸る魔力があたりを包んでいく
「なっ・・・・何が起きてるの?」
トディは刺すような魔力に耐えられないかのように答えた
「分からない・・・昔お世話になった人の名前を聞いてから・・・」
「私もそう思った!」
その魔力は瘴気をおび魔王を包んで見えなくする
「陛下何事ですか!?・・・・・・!!!陛下!!誰か来なさい!」
魔王の側近が声を張り上げながら入ってきた
「うるさいぞディルンド・・・一体なに・・・・陛下!!魔王陛下!!お気を確かに!」
「ヴォルンガル!!至急、ガンヴィルハルトと呼べ!念の為にサンデロイドもだ!!!」
「おう!分かったぜ!!」
ヴォルンガルと呼ばれた魔族は踵を返し走ってその場から立ち去った
「陛下が珍しく時間をかけてると思いきや・・・まさかこのようになるとは・・・予想外でした。いつぶりですかね?・・・・オヤ?まだ人間が生きてるで
はないですか?しかも無傷で・・・・はぁ・・陛下もおかしなことをされる・・・ましてや治癒まで施しよう・・・」
ディルンドは勇者達を確認すると汚物でも見るかのような素振りを見せた
「な!!!何だお前は!?」
「禍々しい魔力だな・・・魔王の側近だろう・・・」
「・・・・思い出した!血濡れの覇者ディルンドだわ!!!」
「魔王よりタチ悪い」
「虫けらの分際でうるさいですよ?陛下が助けた命、今ここで立ちましょうか?ですが・・・何かされても目障りです。よって拘束します・・・」
ディルンドはパチンと指を鳴らした。瞬時に勇者たちの足元に魔法陣が現れた
「魔法陣から出ることはできませんよ。無理やりだと命の保証がありません」
笑って答えているが目が笑ってなかった
「さて・・と、陛下~聞こえてますか?速やかにその禍々しい瘴気をといてください~~ぶっちゃけ消滅するのは構いませんが私に魔王の座を譲ってからに
してください~・・・・な~んて冗談ですが(笑)さておき魔界に影響が現れる前に~~・・・・・・・・・・・・・てか手遅れかもしれませんね・・・・
あぁ失礼いますよ。よいしょ~~人間臭いですが仕方ありませんね」
そう言うと魔王に近づいていたが、踵を返し勇者達を拘束するための魔法陣の中に入ってきた
「んなっ!!!」
「なら出て行けよ!」
「そうよ!私達を拘束する魔法陣でしょうが!!」
「魔族と・・・一緒・・・嫌・・・」
勇者達はそろっって嫌悪した
「何ですか?地味に傷つきますよその言い方・・・人間のくせにたてつく・・・・ぁったた!!そこの魔女!!!杖で攻撃するな・・・・・・この魔法陣内
での魔法は使えないんですよ?・・・・・・・・・私ですか?もちろん!!!・・・・使えませんけどね(笑)それにしてもよく出来てるでしょう?この私
でも形無しですから・・・・ハハハ・・・ハァ・・・ここを出たら私でもキツいんですよ・・・言わば毒沼に全身つけてる状態ですもん・・・それならここ
に入りますよ・・・一番安全ですしね」
ディルンドは腕を組みながら遠い目をした。
「おい・・・本当に血濡れの覇者か?」
「人間界を恐怖に追いやった威厳はどうしたんだろうか・・・」
「何言ってるのよ!雑魚の偽物なのよ!」
「本当・・・威厳もない・・・力もない・・・私でも倒せる・・・・」
勇者達は小声で囁きあう
「・・・・・・・・・・・・私のような優秀な魔族がいるはずがないでしょう?若い頃はそりゃぁバカやりましたよ・・・・あの頃は若かったと私も思いま
すよ?だってまさか分からないじゃないですか・・・喧嘩を売った相手がまさか、まおぅ・・・・・・・・・失礼話がそれたようですね」
ディルンドは癇癪を起こし熱く語りだしたが勇者達は思った
あのあと人間界が征服されるんじゃないかって時に急に噂が途絶えたのはひとえに魔王に討伐されてたのかと理解した瞬間だった。
「おい・・・これはいつ収まるんだ?」
「さぁ?私が知るわけないでしょう?一年後か、五十年後か、はたまた数百年後かには少しは収まるでしょうね」
「なんとかならないのか!?魔族だろうが!!」
「魔族といっても相手は魔王様ですしね。歴代魔王の中で最強を誇り、もっとも長く即位し、今も更新中ですもん。おかげで魔界は平和ですね。我らでは足
元にも及びませんよ」
「なっ!!!」
「歴代最強ですって!?ちょっと待って!!魔王って代替わりしないの?」
「さぁ?私が初めて魔王様とやられっけほ・・っんん・・・・・・拝見したときはまだ幼かったと理解してますが・・・あぁ、代替わりしましたね・・・つ
いこの前と感じますが旧勇者が魔王との死闘が繰り広げ三日三晩の末、相打ちで死に絶えたと伝わってますね・・・その時の宰相が発見したときは既に白骨
化した勇者と魔王の死体があったと聞いていますね」
「旧勇者?・・・・・まさか遥か昔に存在したという伝説の勇者エルル=シソウスと残虐非道と言われた魔王カディーン・エルバ=ヴォヴァディン・ソルタ
との死闘となった言い伝えか?」
「おとぎ話じゃないの!?」
「おとぎ話とは生ぬるいですね・・・事実ですよ?嘘をついて何の得がありますか?そのあとから約半世紀でしたかね・・・それから今の魔王様が即位され
てますから・・・・・人間の感覚はわかりかねますが・・・だいぶ長いと思いますが・・・」
「うっそだろ!?その間も勇者に討伐されなかったのかよ!?」
「ええ・・・数え切れない数の勇者が来ましたね。その勇者はどうなったか知りませんがね・・・・魔王様お一人で戦われてましたし・・・・・・さて、そ
ろそろ来る頃ですかね・・・・・・・・・・あぁ来ましたね。お~い、ヴォルンガルこっちですよ。助けてください」
魔法陣の空間以外は瘴気で真っ暗闇の中ヴォルンガルが歩いてきていた足元には人一人が収まるくらいの魔法陣が歩幅に合わせて移動していた
「ディルンドか・・・・・てかお前何やってるんだ?」
「見てわかりませんか?人間と不本意ながら一緒に魔法陣の中にいますよ?」
「誇り高き魔族が気安く助けを呼ぶな・・・・」
「誇りなんて鼻かんでティッシュに来るんで捨てますよ!我が身が可愛いんで(笑)・・・・・それに貴方のように浄化の魔法使えませんから?どうでもい
いから浄化しろ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや・・して下さい。お願いします」
ヴォルンガルは人を目線で殺せるかのような形相で睨むとディルンドは萎縮した
「バカも休み休み言え・・・・これだけの規模の瘴気を俺らで浄化できるはずがないだろうが!!!俺の周りだけで精一杯だ!!!それも長く持たん・・・
既に魔王城を取り囲み魔界全土に侵食して行っている下級魔族共は瘴気に当てられ消滅した・・・このままじゃ俺たちもヤバイな・・・」
「なっ!!!冗談じゃありませんよ!!私は瘴気にやられてくたばってる暇なんてないんですよ!?」
「俺だってまだ陛下に借りを返してねぇってのに!どうせお前は陛下を亡きものにし魔王になろうって魂胆だろうが!!」
「当たり前です!!私こそ魔王に相応しいんです!現に私が人間界の人間を呪い厄災が来るように手を貸しましたし!すべて魔王の差金と言って人間共に悪
意を植え付けましたし!!私の時代がやってくるんですよ!!なので早く浄化してください!!今が絶好の殺り日和なんです!!」
「あの厄災はお前の仕業だったんかい!!ふざけるな!どんだけ陛下が頭を抱えたか知ってるのか!?そのせいで人間界から勇者が来るようになるし!!警備
が厳重の筈なのに人間どもはワラワラ入ってくるしで、どれほど!!どれほど陛下に申し訳なかったことか!!!お前は一生その中で人間と仲良く手を繋ぎ
ながら暮らしてろ!!」
「あ!そんなこと言うんですか!?全く血も涙も糞もありませんね。これだから筋肉バカは困るんです。いいから脳内筋肉塗れになる前に私を助けなさい!人
間と同じ空気を吸ってると思うと寒気がします!!っだ、あだだだ!やめ・・・やめなさい・・・・・・って~~何するんですか!?人間の分際で!!」
勇者はディルンドを蹴り倒しこぞって蹴りまくる
「お前には呆れて声も出ねぇよ・・・まだ魔王の方が人間味が感じられるぜ」
「だな!真の敵は貴様だ!!」
「あんたのせいで!!私達の世界は機能しなくなりかけてるのよ!!!」
「私達でも・・・こんな奴と一緒・・・・・願い下げ!!魔法使えないけど・・・・体術なら得意」
勇者達は鬼の形相になり指を鳴らした
「死に晒せ!!!!!」
勇者と剣士が剣を振りかざした
「っぐは!!!~~~~・・・っはは私がこれしきのことでくたばるとでも?生ぬるいですよ・・・私は千の命を持ってます何度でも・・・何度でも生き返
ることだってできるんですから」
「なら・・・・あと999回・・・・覚悟しろ・・・」
「は?おぶろっ!!!!」
勇者達はこぞってディルンドの命を絶って行く
「はぁはぁはぁ・・・・すぐに生き返りやがる・・・・」
「ーーー・・・・っはぁ・・・当たり前です。ですが痛いんですよ」
勇者達は息も上がっていたがディルンドももちろん荒い呼吸だった。
その間も魔界は瘴気に覆われていく・・・ーーーー次々と魔族が体調を崩し始めた。
「魔王様・・・・」
「魔王陛下・・・どうか我らにお慈悲を・・・ーーー」
「魔王様助けて・・・・苦しいよ・・・・」
次々と仲間が消滅していく中で口々にそう呟いていた。
「やれやれ・・・全く困ったもんだね・・・」
そう声がしたと思ったら謁見の間にあるただ一つの扉に突然魔法陣が現れる
勇者達も側近達もその声を探し首を巡らすと魔法陣を捉え身構えた
「気が揺れるから来てみて正解だったよ・・・あぁ、こんなになって・・・」
魔法陣から出てきた青年はスラリとし、髪が漆黒で瞳は黒曜石を埋め込んだかのように澄み、服装は、異国を思い出すような旅装束を纏い、その人物から漂
う気は澄んでいて神気を思わせるほどの神々しさを漂わせていた
その人物は優雅な動作でゆっくりと歩いて魔王に近づいていく
「魔王様!!」
「魔王陛下!!陛下をお守りしろ!!」
「はっ!!・・・・・っく・・・なに!?動けないだ・・・と?」
ヴォルンガル、ガンヴィルハルト、サンデロイドらが駆け寄るため歩を進めたが何かに足を取られたかのように膝をついていった。
「あまり瘴気に当たりすぎたからだろう・・・現に魔法陣の効力が薄れてる」
謎の人物は側近三人を目線だけ寄越し答えた
「そんなはずは・・・・!!!力が抜けていく・・・」
「おそらくですが・・・・この瘴気は魔力を吸収してると感じる・・・」
「そんな・・・・!!!魔王様に何を!!?」
謎の人物はとうとう魔王の元にたどり着く・・・徐に手を伸ばし魔王の喉元に手を伸ばす・・・・・ーーーーかに見えたが、謎の人物は魔王の右頬を引っ
張った・・・それもギリギリと
「ふむ・・・これでも反応が見れないな?では、これなら?」
反対の手ももう片方の頬を摘み同時に引っ張る
「む・・・・これでも反応なしか・・・・だが、この顔もなかなかに愉快だな!ははっ・・・おい見てみろよ・・・てか瘴気が濃すぎてうまく見えてないな
・・・」
謎の青年は至極愉快そうに笑っていた
「おい・・・いい加減起きろよ。わざわざ出向いてやってんだ・・・お前の自慢の顔が悲惨なことになってるぞ?・・・・ぶっふ!!ふははは!!!これはどう
なってんだ?あぁ、変な服だから気になったが、こうなってんだな・・・・どれどれ?んん?・・・・・・・これはこれは・・・・・・・・・」
それっきり喋らなくなった青年に側近達は慌てだした
「っ貴様!!陛下に一体何をしている!!」
「何って?強いて言うなら頬抓ってる以外何もしてないぞ?」
「そんなのどうでもいい!!早く陛下から離れろ!!」
「へいか?ほぉ・・・コイツも偉くなったもんだな・・・・いつの間にこんなに大きくなったんだか・・・・うんうん兄ちゃんは嬉しいぞ☆むっかしは泣き
虫だったくせにな・・・・」
謎の青年の声音はより弾みだした。
魔王の頬を抓っていた手を盛大な音と共に離した青年は腰に手を当て大きく息を吸った
「いい加減に起きろ!!いつまで放けてやがる!ロシュ!!帰ってこい!!自分を見失うな!」
その声に反応するかのように魔王は肩を震わせ正気に戻ったかのように瞳に光が戻るのを確認した青年はニカッと笑う
「よう、起きたか?起きたならこの無駄な瘴気を早く消せ。お前の守るべき対象の魔族共が次々と消滅して言ってるからな」
「?・・・・・瘴気?この禍々しいのは俺が出したのか?」
側近達は陛下の声が聞こえ俯いていた顔を弾けるように上げた。禍々しい瘴気はだんだんと収まりだし体が楽になっていく
「へ・・・いか?」
側近達は安堵の息を漏らした。
「あぁ、そうだ。お前ももう子供じゃないんだからちゃんとしろ!!」
「・・・・・誰だ、貴様。なぜ誰も知らないはずのその名を知っている」
目の前の青年に敵意丸出しの視線を向けた
「・・・はぁ?お前何言ってやがる・・・・お前の自慢の頭はそんなことも忘れたのか?困った奴だな・・・・本当にどうしようもない奴だ」
青年は痛いほどの視線を向ける魔王に溜息を吐きながら鼻を摘み引っ張った
「ーーーーーっ!!」
想定外の事態に俺は反応が遅れてしまった。俺の不意をつくやつなんて初めてだと思い目を丸くしてしまった
「名前を知っていて当然だろうが・・・俺を誰だと思ってる。お前の自慢の千里の瞳はお飾りか?ロシュ?」
摘んでいた鼻から手を離し腕を組み青年は凄む
「・・・・・・・・・・まさ・・・かお前ルゥか?」
ルゥと呼ぶと青年はニカッと笑った
「あぁ!!やっと思い出したか」
「はぁ・・・・?だってお前髪の色違うし瞳の色だって・・・・」
俺は似てもにつかない姿のルゥに度肝を抜かれた。俺が記憶しているのは白銀の髪に深海色の瞳だったはずだ・・・・
「ここに来る前までロシュの想像している容姿だったな」
ルゥはひと房自分の髪を摘みながら言ってのけた。
「なんでだ?」
「さぁ?んでも、今まで入れなかった城にお前のおかげで入ることができたぞ?」
「何を言っている?俺はそんな結界は張っていないはずだったが・・・・」
「お前は体よくあの馬鹿共に洗脳されちまってな・・・・・いつの間にかいなくなるし、探しても見つからねぇし、兄さんも姉さんも血眼になってお前を探していたんだぞ?」
探す?俺を?俺は今まで何をしていたんだ?確かあの時・・・・ッ!!
酷く頭痛がした。何か忘れている・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・思い出したぞ。
あの腐れ野郎・・・・・・確かあの時ルティアとルティルが呼んでると聞いてそれから・・・・・気づいたら知らない空間に居たんだ。
そこに腐れ野郎共が審議にかけるとか言って俺を勝手に魔界に召喚した。あの時意識を少しなくしていたからその時に洗脳されてしまったんだろう・・・
クソが!!俺の大事な家族を忘れさせ面倒事を押し付けた報いこの俺が絶対にはらすぞ・・・・・・・
不敵な笑みを浮かべる魔王に部下達、勇者達は戦いていた。
「お前が俺達を思い出してくれて本当に良かったよ!ずっと会いたかったんだぜ?あんときはゴメンな?」
ニカッとルゥは晴れやかに笑う。俺も吊られて頬が緩むのを感じた。
「俺の方こそすまなかった」
俺とルゥは無事を確かめ合うかのように抱きついてしまった。
「陛下が・・・・・陛下が笑った?」
「俺の気のせいだろうか?不敵な笑みは見たことはあったが、あんな綻ぶように・・・・」
「奇跡じゃ・・・・」
瘴気が収まり魔王の無事を確認に来た魔族達は王の変わりように目を丸くしていた。
「ロシュ・・・来るか?」
「何を言っている?当たり前だろうが!」
何馬鹿なことを言うんだこのルゥは・・・
「ぎゃ―――――!!!!黒い、黒い奴が!!奴がいる!!!無理無理無理!!!これ以上いけない!!ルティル私はもうダメ先に言って・・・・」
「何言ってんの?寝言は寝てからいいなよ?ルティア、君の大事な弟がこの先にいるんだよ?」
「だ、だって~~~・・・・・グズッ・・・ねえおんぶして?」
「なんで僕がルティアをおんぶしないといけないの?嫌だよ?重いし、肩疲れるし、いつ首締められるか分かったもんじゃないよ・・・・分かったよ手をつないでやるからそれで我慢してよね」
「ルティル優しい!ありがとう。大好き!!」
「たかだかゴキ・・・」
「それ以上言ったら殴る・・・」
「ルティアが言ったら洒落になんないよ」
そんなやりとりをしながら近づいて来る声があった。俺は目を見開き声のする方に視線を向けた。
俺の姿を確認したら泣いていたルティアはルティルの手を振りほどきかけてきていた。
「ロシュ!!」
俺は呆然としてしまいルティアが体当たりしてきてその衝撃に耐えられず後ろに倒れてしまった。
「ロシュ!!探したんだから!!ずっと探したんだから!!」
「ルティア・・・・・ゴメン」
俺の頬に暖かい雫が落ちる。ルティアがとても小さくなっている。いつの間にか俺のほうが大きくなっていたんだな・・・・
「ルティアそろそろ離れようか?すごい絵面だよ?」
満面の笑顔でルティアを引き剥がすがルティルの目は笑っていなかった。昔と変わらず姉っ子だな・・・・
「いくら昔暮らしていたからってルティアは無防備すぎなんだよ?相手は男、男は狼だっていつも言っているのにすぐ忘れるんだから」
「でも、ロシュよ?」
「ロシュでもダメ」
「ホントに君は僕らを心配させておきながら何を悠々と暮らしてさ、ホントに心配したんだからね?(何今更思い出してんだよこのピ―――が僕らがどれだけ苦労したと思ってんの?まさかそのままコトを運ぶつもりはないよね?大事なルティアを奪わないよね?そんときはわかってる?)」
今、音声よりも副音声が長く聞こえた気がしたが・・・きっと気のせいではないのだろうな・・・・・
「遅いよ二人共・・・」
「仕方ないだろう?ルティアが城の中探検するって言って聞かないのを引きずってきていたら遅くなったんだ」
「あ、私だけのせいにするの!?ルティルだって楽しんでたじゃないの!!」
「ぐっ、た、確かに楽しかったさ・・・」
「兄さん・・・・」
「でも、これで皆揃ったね?」
「そうだね」
「・・・・・」
「ロシュ、たくさんのものを見てきたけど、ロシュと見る世界はもっと輝いて見えると思うの!!行こう!!」
「あぁ・・・・」
俺は歓喜に震えるのを感じた。よし、行くか
「陛下・・・・」
「魔王様」
口々に俺を呼ぶ声がした。洗脳されていた時になった魔王についてきた魔族達・・・俺は伸ばした手を止める。
「ロシュ?」
「すまない・・・・俺はここを離れられない・・・・」
「だったら、一緒にこの魔界を収めて言ったらいいじゃん?」
「そうだな、俺達はいろいろなところを見てきたしな!!」
「だから、残りの余生をお前といてやるよ」
ルティル、ルティア、ルゥはロシュをみて笑った。俺は涙を堪えるのに忙しすぎて何も答えられなかった。
ありがとう
俺を見つけてくれて
俺と一緒にいてくれて・・・・
本当にありがとう
泣いていることに気づいた三人からからかわれたのはいい思い出だった。
最後読んで下さりありがとうございました(´▽`)