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50m走②
俺はやっぱり手を抜く事にした。だって怖いもんキャメロス君。あの子の髪型ドラゴンボールに出てくる人の形してるんだよ?ベジータだよ?怖いよ。
「鈴木、本気でやれよ」
「……え?」
キャメロスが意味深な事を、いや特に深くねえけど。
「お前いままでずっと手を抜いていただろ?」
「……別にいいだろ」
手を抜く云々は自分で決める事、自分が良いならそれでいい。しかし何故か言葉が詰まってしまった。
「まあ、そうだな。でも俺は」
キャメロスは前を向いたまま続ける。
「物事をきちんとやらずに終わらす奴は嫌いだ」
とても低い声だった。
………え?俺が悪いん?
「いくぞー」
先生が開始の合図をする。大したことじゃないのに鼓動が速くなる。本気を出せ?上等だ。
「ピッ」
笛の音と共に走り出した。
背景が物凄く速く変わっていく……
「キャメロス、5秒40。鈴木、5秒58。」
勝ち負けはないが負けた気がする。これが俺の全力。