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七世

引き籠りニートの僕は、異世界ループに入っている事をすぐに理解した。


フラッシュバックする記憶の中、窓から落ちる記憶がスマホを起動しろと強く要求しているのが分かった。


パニックと恐怖で手が震える中、スマホを起動する。メモ帳が起動されており、ぎっしりと文章が書かれていた。


-----

次の僕へ


僕が気が付いたように君もループに入っていると気が付いただろう。

更に、僕は、スマホのデータだけループしていない事に気が付いたんだ、すごいだろう?

どうも記憶の継承はかなり曖昧のようなので、ここに僕の48時間の成果を残す。



まず、以後音を立てない事。音を立てると死ぬ。

スマホ本体や電源は、君が死ねば回復する。これが僕らの生命線だと思うから、大事に使う。

バックランプ設定は最低、省エネモードで常に使う事。


さて、僕らがどうすれば生きられるかという計画を立てた。

僕がこの世界について知っている事は、君がそこの部屋から見える事とほぼイコールだ。

とりあえず燭台の横の箱の中に、紙切れが11枚入ってる。その紙切れは全てカメラでデータに保存してあるから、持っていく必要はない。


そこに書いている事が恐らく重要な事だろうと思うのだが、僕には解読する能力も時間もコネもなかった。何か分かったらここに記録していこうか。


今回の僕が主に考えた計画は、部屋からの脱出計画についてだ。

ゾンビの獣、これをタイガーゾンビと名付けておこう。

タイガーゾンビは、さっきも言ったように音に反応している。


そこの部屋の戸を開いたりすれば、その音でも反応してくると思われる。

反応しない時間を見つける事も可能かもしれないが、僕が沢山死ぬだろうから、あまりやりたくない。


そこで、この部屋のすぐ横に別の部屋がある。僕はもう脱水症状でふらふらすぎてどうにもならないから試せないが、君なら窓から立って、窓ガラスを当てて壊すかする事が出来ると思う。


そしてタイガーゾンビが真横の部屋をドガンと開けた瞬間に、この部屋の戸を開けて、横の部屋とは逆の方向、つまり左に逃げる。僕の曖昧な記憶だと、タイガーゾンビは右から来てると思うから、左に逃げた時に、どこかに隠れる事ができれば、タイガーゾンビは恐らく右に帰っていくと思う。戸を開けた音とタイガーゾンビが横の部屋の戸を開ける音とかぶせる事が重要だ。


この計画は、となりの部屋に戸がないと失敗する。この部屋の戸も壊されてこなかったのだから、隣もあるのではないかという推測だ。


最後に、僕らの最大の敵は、タイガーゾンビでもこの世界でもない。

僕ら自身の心の闘いである。将来の僕らが全てを諦めてしまった時に、僕らは永遠に不幸になるだろう。だから僕のように死ぬ事になっても次の僕の事を考え、希望を持って死んで欲しい。将来の君のために。


言わなくても君も同じ結論に達しただろうけども、僕には冷静に2日考える時間があったから、先輩からの忠告だと思ってほしい。


2014年2月2日15時32分から2014年2月3日17時32分まで生きた僕から。

-----


このメモ帳を読んで、いくらか記憶も戻った。


最後の方は、読まなくても何が書かれているか分かっていた。他人からの励みの言葉を読みたくて読んだ。前の僕もその効果を狙って書いているのだろう。よくやった俺。



よし、やろう!


指示通りに、隣の部屋の窓ガラスを11枚の紙が入っていた箱を投げて割る。

ガラスが割れる音が響き、戸に耳を澄ませば、タイガーゾンビが忍び寄る音が聞こえる。


ドガン!


音が聞こえた瞬間に、こちらの戸を開き、廊下を左に曲がり忍び足でかけていく。廊下の左はすぐ下りの螺旋階段だった。階段に足を下ろす位置ならもうゾンビタイガーからは見えない。


このまま階段を下りるよりもタイガーゾンビが逆の方向へ歩くのを待つべきだ。


召還部屋の隣の部屋でタイガーゾンビがしばしガサゴソとしていたが、廊下を出て、回れ右をして上の階段の近くに寝そべった。


僕は、ここで一度スマホに作戦成功の一行を付け足す。


螺旋階段をゆっくり下りていき、建物の最下層にたどりつく。

どうやらこれは塔であったようだ。


鍵がかかっているかと思ったが、塔の門は以外とあっさりと開いた。


恐る恐る外を覗くと、自分が何度か落下した地面が見える。ちょうど、召還部屋から見ていた景色の真下にいるという事だ。


という事は、城門は左で、、、いや、まてよ、城門には何かがいた。


僕は塔の門を一度閉じて、スマホを起動する。

画像ビューアのアプリを起動して、窓からの様子を撮影した画像を凝視する。


内堀の水路の位置を確認して、水路に向かう。


水は濁っていて、気色悪かったが、無理やり喉に流し込んだ。


それから物陰に隠れて、スマホを再度出し、ここまでの記録を登録した。


水路を目の前にして、このスマホは防水対応していて、水没しても問題がない事を思い出す。


スマホのメモ帳に、以下の一文を付け足す。


こちら七世、内堀水路からの脱出を試みる。

泳いでいる最中一応電源を落としておくので、途中記入が難しいだろう。

完全にフラグ発言なのだが、追記がなかったら水路からの脱出は失敗であったと思ってほしい。

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