二話
僕が最初に試した魔方陣は、「ディヴァインウィング」と「グラヴィティレジスト」だった。前者は光の翼を自身に付与し、後者は術者の体重を10分の1にする。これらにより空中で驚異的な機動力を持つようになる。
早速ディヴァインウィングとグラヴィティレジストを発動し、空中に浮く。
うぉ、これぞ無重力。
そして、「フレイムバリア」「フローズンスペース」「アースウォール」「セイクレッドフィールド」と結界系の魔方陣を作動させた。自身を覆う結界を多重にかける事で、あらゆる物理攻撃と魔法攻撃を防ぐ事ができるわけである。
攻撃魔法は、広いところであれば、空間魔法「ビックバン」と「パーフェクトケージ」のコンボが最も凶悪と書いてあった。
早速空を舞っているスカイドラゴンにビックバンをかけてみる。
次の瞬間には非常に大きな爆発が起こり、スカイドラゴンを爆発が割いていく。
更に、パーフェクトケージをかけるとスカイドラゴンの回りに厚い結界が作られ、結界中での大爆発は行き場を失い、結界内の物体に圧倒的な圧力をかけ続ける。10秒ぐらいしたところで結界にひびが入り、核弾頭が爆発したような全てを巻き込む爆風が吹き荒れる。結界が割れると同時に、中のスカイドラゴンの肉片は空中に飛び散った。全長100メートル近い龍は完全にミンチと化したのである。
「ふははは、ふはははは!」
「いひぃーひひひぃ、いひー」
「あひゃひゃひゃひゃひゃ」
あまりにも愉快だったため、僕は空中で笑い転げた。
何回も色々な音を出して、腹の底から笑い続けた。
僕は最強だ。誰も僕を止める事はできない。
ドラゴン程度、何匹もいたところで僕の多重結界を破る事すらできないし、僕にそもそも攻撃を当てる事できないだろう。
魔王がどんなやつかは知らないが、今のビックバンとパーフェクトケージを食らって生きている生物はいまい。
先代は、こんな魔法を持っていて魔王とか言うのに負けたのか。
旅に出てからの記録が一切無いところを見ると、さしずめバッテリー切れといったところか。
バッテリー切れ。。。
僕はとてつもない不安に突如駆られた。
もう僕は、このスマホなしでは生きられない。
こんな愉快な事がある事を知ったら、こんな力を手にしたら。
魔王やこの世界の事はどうでもいい。バッテリーの問題を解決せねば。
そうだ、魔方陣の中に、「たぶん5Vの電流」という魔方陣があった。
説明書を見てみる。
---
なんとなくこれが、スマホの裏に記載されている5V1Aだと思うが計測するものがない。
もしかしたら大きく外れてるかも?試してみたいが壊れるんじゃないかと怖い。
というか壊れる可能性がたぶん高い。どうしようもなかったらお試しあれ。
そもそも電流とか電圧とか良く分かってない。VとAとか違い何?グーグル先生もいないしね。
---
。。。
先代、あほ。
うーん、俺もよくわかってないんだよなぁ。
勉強しておきゃ良かったなぁ。
グーグル先生にいつでも聞けると思ってたよ。
俺?ん、俺だ。俺でいい。しっくり来るじゃないか。俺、俺。
先ほどスカイドラゴンをミンチにしたことを思い出し、再び笑いがこみ上げてくる。
そのまま気分よく空中でアクロバティックな飛行を試してみる。
ふむ、意外と翼を曲げるタイミング等が難しいな。
調子に乗り、地面すれすれをターンしようとして失敗し、地面に激突してしまった。
結界のおかげで、地面に穴が開くだけである。
なるほど、技術がいる部分もあるわけか。どの状況でどの魔法を使うべきかとかもあるだろうしね。
ふぁあ、辺りは真っ暗である。
寝床を確保するか。
「シャープアイズ」
視力が強化される魔方陣を起動し、地表にいる敵を視認していく。
「マルチロックオン・ファイアランス」
意識を向けた全敵に向かって、ファイアランスという中級魔法を飛ばす複合型魔法。
何十というファイアランスが一つの魔方陣から飛び出し、見えている敵を突き刺していく。
「ふむ、意外と生き残るやつがいるもんだ。」
一発殲滅というわけには行かなかった。ヴァンパイアみたいのもいるしなぁ。
蝙蝠に変化して、こちらに飛び掛ってくるもの。届かないにも拘らず、手槍や弓を飛ばしてくるゴブリン。さらに、落雷系の魔法は対象が高くても当たるので、いくらか落雷魔法をもらった。もちろん結界で弾いたが。
あーもういいや。
スマホを起動し、ビックバンの魔方陣を5つコピーする。
「ビックバン」「ビックバン」「ビックバン」「ビックバン」「ビックバン」
物凄い砂煙が当たり一面を覆う。
何も見えなくなってしまったので、「ウィンドストーム」を使用し、砂煙を消し飛ばす。
城も町も全て吹き飛んで、ところどころ残骸のようなものが残り、長い年月をかけて風化した遺跡のようになっていた。
ふぅ、すっきりすっきり。
ってあれ、寝床を確保するためだったっけ。
あー、王女のベッドで寝ようと思ってたのにー!
結局、その日は野宿をする事になった。
ここまでチートだと、虚しくなりますね。
ストーリーの通過点に過ぎないので、今しばしお付き合いください。




