紫陽花が散るまでに
掲載日:2026/04/02
「紫陽花が散るまでに答えを教えて」
好きだと言われた。考えさせてと言った。今の俺には好きな人がいないけど、だからって承諾するのは違うと思った。今は梅雨の始まり。紫陽花はまだ、咲いたばかりだ。
考える。先輩の気持ちには応えたい。でも、だからって好きじゃないのに付き合うのは果たして良いものか? それは、不誠実ではないか? 俺はいずれ、先輩のことを好きになれるのか?
「応えたいと思うなら、それはもう恋なんじゃない?」
確かに、応えたいとは思う。でも、俺の中の感情は、依然として形を持たないままだ。――紫陽花が散るまでに答えを教えて。あれから一ヶ月、そろそろ梅雨が終わる。
「先輩、俺……」
答えようとした。けど、先輩がシーッと唇に手を当てた。
「決まってないなら、答えなくていいよ」
「でも……」
「知ってた? 紫陽花って散らないんだよ」




