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ArcanaReWrite  作者: 上月琴葉
第三部ステラ・マリス
26/31

第二十一幕 双星

ついにふたつの【星】は対峙する。


第3部ステラ・マリス、次話にて完結。物語は急展開を迎える。

 ーー「星」をずっと探し続けた。


 眩しくて鮮烈な俺の【星】を。


 やっと見つけた輝きを全てを賭けて守り抜こう。



 ーー【星】に触れたことを忘れていた。


 自らを燃やして輝き続ける【太陽】を。


 夕陽が夜へ沈んでも、夜に輝く【星】になって君の道を照らそう。


 もう君が、迷わないように。


 ーー誓うよ。二度と君を喪ったりしない。



**


 夜が明ける。


「作戦当日、かあ」


 水鏡の館で目を覚ました紡は雨音を聞きながら身支度を終えて食堂へ向かった。


 宵霧の体質や闇夜に紛れる利点などを考えた結果、パフェは作戦の決行を今夜に決めたのだった。


「おはよう、紡」


「シレーナ。その、よく眠れた……?」


 シレーナは困ったように微笑んで首を横に振った。


「ううん。流石にあまりよく眠れなかった。紡もでしょ?あんまり顔色良くないから」


「……うん。記憶が戻って、勇陽のことを思い出した。だから、少し怖くなったんだ。僕は、シレーナも勇陽も助けたい。少しでも可能性があるなら、危険でもなんらかの代償を払うとしても迷いはない。だけど、目の前で喪ったらって思ってしまう。ひとりじゃないけど、やっぱりね」


「……きっとみんなそうだと思うわ。多分今、勇陽さんも同じことを思っていると思うの」


「勇陽は多分、僕やシレーナが自分のせいで危険に晒されるなら自分を傷つけてでも止めようとするだろうけど、それじゃダメだ。これはあくまで僕の勘だけど……アルカナ保持者は……欠けちゃダメな気がするんだ……」


「その予感はおそらく正しい」


 食堂に姿を現したのはグーフォ・ストラーノ。寝起きだからか、口元を覆うペストマスクは外されていた。


「先生」


「今回の共同戦線を終えたら、なかなか接触する機会もないかもしれない。やることがあるのでね。シレーナは、rOMaNに保護してもらえるように話がついている。また、これも伝えておこう。金山緋弦、フィオレ、リキ、香宮津紫穂の四人はしばらくmYtHに行くことになった。これはアクト・フィグメントの動向を警戒した上で一時的なものだから安心してもらいたい」


 紡は頷いた。


「僕はトリチェッロ区で眠っていた時間も多いから詳しくは知らないんですけど、緋弦が【棒】に狙われていて、その【棒】が金山財閥の社長ってことだけは莱人さんから聞いています。あれ、でも勇陽もmYtHにいたはずですよね?」


 グーフォは目を細める。


「今のmYtH の長は先代とは本当に似ても似つかないな。照眞は勇陽が無事に戻ってきたらrOMaNで受け入れて欲しいと東雲に要請したらしい。君次第だよ、紡。君がふたりを助けられたなら、シレーナも勇陽も君のそばを離れていくことはないだろう。もちろん私も最大限に手を貸すことを約束する」


「ありがとうございます。グーフォさん。ただ、ひとつ気になっていることがあって」


「ふむ。答えられるなら答えよう」


「照眞さんがアクト・フィグメントに詳しい理由。そしてグーフォさんが先代mYtH に詳しい理由。……もしかして、アクト・フィグメントと先代のmYtHは何か関係があるんですか?」


「ああ。隠すことでもないだろう。君自身にも無関係な話ではないからな。アクト・フィグメントは、先代のmYtHの生き残りが生み出した組織だよ。先代のmYtHは今のように穏健な組織ではなかったんだ。人道的倫理的に問題のある実験を繰り返していてね。災害孤児などを孤児院で受け入れるとともに被験体にしていた。元々は私も、ただの孤児だった。霧に包まれた死者の島の末裔だと知りアルカナ保持者であることを知ったのは孤児院が燃えたあとだった。とはいえ、現代シルクスは【文字喰い】や【石喰い】、【紙魚種】を除けばそこまで治安が悪いわけではない。そして実験にはどうしても数が必要。だからこそ次に彼らが取った行動は、クローン技術や、人工生命の研究だったというわけだ」


「……そして僕が生まれた」


「ああ。研究所産の被験体にはいくつか特徴がある。そのひとつに真っ白な髪があってね。ただ、君はおそらく、かなり特別な被験体だろう」


「特別な……?僕が……?」


 戸惑う紡に、グーフォは告げる。


「私も内容までは詳しくは知らないが……先代のmYtHはひとつの計画を進めていた。【創世計画】。そのような名前だった」


**


「かつて、あるひとつの計画があった」


 薄暗く無人の研究所の中。培養槽の林の中を歩きながら少年は呟く。


 漆黒の髪に紅の瞳。マフラーで口元は隠れている。


「【創世計画】。先代mYtHの長が主導し、今のmYtHの長が阻止した計画。照眞はきっと、主導者がいなくなることで少し安心しているんだろうけれど、甘いな。まあ、彼はボクのように、冷酷にはなれないだろうから仕方ないけれど」


 少年は研究所の奥、鳥籠の寝台で眠る女に声をかける。


「起きろ、【杯】」


「……覚醒しました……ご命令を……」


 女はゆっくりと身体を起こす。長い耳を持ち、身に纏うのはレースが散りばめられた漆黒の司祭服。瞳には光がなく、朧げな表情で少年を見つめている。


「準備をするぞ。ついてこい、【人形】」


「御意」


 人形と呼ばれた美しい女は付き従うように少年とともに仄暗い闇の中へ姿を消した。


**


 月が昇った。


 トリチェッロ区、北地区。水鏡の館が隣接する水路からナーヴェの船は静かに出港する。目的地の海域までは自動航行なため、各チームは作戦の最終確認のために会議室に集まっていた。


「さて、作戦は開始された。最終確認だけしておこう」


 パフェはホワイトボードに番号の振られた紙を貼る。


「まずは海戦担当第一部隊、ナーヴェ戦団。湾岸地区組とソーレとラピョージャ。担当は本拠地の守備戦力の無効化と陽動作戦」


「続いて第二部隊、照眞さん率いる救出部隊。第四部隊以外のrOMaNはここ。担当は鏡像の元の人物の保護と情報収集」


「第三部隊は俺とシトラスとキラリティ。第三部隊で分けるつもりだったけどキラリティの水鏡占いの結果、分けることにしたよ。部隊間の連絡と支援と治療の遊撃部隊。何かあったらすぐに連絡してね」


「第四部隊はグーフォさん率いる勇陽救出部隊。戦闘が一番激しくなるみたいだからひとりでは戦わないこと!」


作戦会議が終わる頃、船は目標海域に着いた。一度錨を下ろし第二部隊は小型モーターボートに乗り換える。


「では先に行くよ。ご武運を」


 夜の闇に紛れ、第二部隊の乗ったモーターボートはすぐに見えなくなる。


「それじゃ、残りのメンバーはとりあえず全速前進!」


 ナーヴェが船のスピードを上げて海域に突っ込むと同時に、巨大な砲弾が船めがけて発射される。その砲弾の弾をシトラスが風の刃で切り刻んだ。


「ナーヴェ、こちらも砲撃準備はできた。操舵は任せる」


「おう!」


「流れ弾は切り刻む。敵の砲台を撃ち抜いて無効化してくれ!」


「発射!」


 雨のように降る砲弾をナーヴェは巧みな操船術で駆け抜けていく。


 ユナタは正確に砲台を撃ち抜き、海へ沈めていく。


 それでも防げない弾はシトラスと、月が昇り力を得た宵霧が切り刻んで空中で破壊した。


 やがて砲台は沈黙し、アクト・フィグメントの本拠地の荷上げ港にナーヴェ一行は無事到着した。


「じゃあ、しっかりやれよ。オレたちはここで敵を引きつける。そこのセンサーの範囲内に入ればーー」


 けたたましい警告音と共に防衛砲台が現れる。


〈侵入者排除。侵入者排除〉


「機械は水に弱いのがお約束だよな!……天の涙よ地を濡らせ!コーリングレイン」


 ラピョージャは局地的に雨雲を呼び出し、防衛砲台たちに雨を降らせた。水を浴びた機械がショートしていく。


「ついでに爆発と行こう。突入部隊は爆発タイミングで本拠地内へ!」


 ソーレは意識を集中し、湧き上がる熱が彼の手に収束する。


「爆ぜろ!エクスプロージョン!」


 放たれた熱球は機械にぶつかるなり大爆発を起こした。


 蒸気と爆音が消えた時、防衛砲台は鉄塊と化し、突入部隊の姿は消えていた。


**


 一方その頃、潜入部隊は突如響いた爆音と振動に刹那、足を止める。


 照眞のチームには彼の懐刀ふたりが合流していた。


 ひとりはアイドルでメイドでボディーガード、[[rb:灯護冥々>ともりめめ]]。


 もうひとりは長身の執事、[[rb:逢沢嘉御>あいざわがおん]]。


「爆発とか派手にやりますねえ」


「あなたほど派手ではないでしょう冥々……」


「陽動としては王道だね。派手なほど、意識は向こうに向くだろうから」


「照眞さん、偵察してきたけど、特に仕掛けとかはなさそうだ。戦利品はこれ」


 先行していたフィオレが照眞に見取り図を手渡す。


「流石は義賊とはいえ怪盗。潜入任務には頼りになりますね」


「ああ、別にこれは人から盗んだわけじゃない。……奇妙なんだよね。この本拠地。ロボットばっかで人がいない。まあ、金山財閥の社長なら人間より高性能な警備ロボットを配備できるだろうから違和感はないけど……」


「……フィオレ。ここ……血の匂いがする」


 リキの言葉に、


「冥々。眠ってるはずの鏡像の被害者の人数は?」


「嘉御さん……今……数えたら……ひとりも……」


 冥々は青ざめた顔で答えた。


「……緋弦……絶対に俺から離れないで」


「迎撃する!」


 フィオレと紫穂はそれぞれ武器を構える。


「ふふ。彼らは皆【石喰い】の餌にさせてもらったわ。セイレーンの餌にね。


初めまして皆様。わたくし、金山財閥の社長にして、アクト・フィグメントの【棒】でございます。運命からは逃れられないようね、緋弦。もっとも、今ここで貴方を連れ戻しても意味がない。儀式はあなたの次の誕生日まで行うわけにはいかないもの。それまでは残り少ない生を謳歌しなさい」


「……諦めない。あたしは最後まで足掻いて見せる。あんたが……お父さんもお母さんも殺したこと、あたしはわかってるんだから。許さない……化け物……!」


 緋弦は震えながらも真っ直ぐに社長を睨みつける。


「母親に向かって化け物だなんて」


「いや、あんたは化け物だ。動物たちはあんたを見てこう言った。【血の匂いがする、気持ち悪いおっさん】。流行りのバ美肉ってやつか?」


 空気を全く読まないリキの発言に、女は顔を歪める。


「貴方、何者なのかしら?」


「図星だな?」


「……まあいいわ。わたくし、効率の悪いことはしませんの。今ここで戦ったって分が悪い。どうせ貴方たちは【セイレーン】を止めに行くでしょうから始末は彼女にお任せしましょう」


 社長と名乗り、女の姿をしたものは煙幕を張り、姿を消した。


「なるほど、あれがフィオレくんが倒すべき敵で緋弦さんの親を騙る者か……」


 照眞は少し考え込む。


「妖力がかなり強い。方法には心当たりがあるから、この事件が解決したら詳しく話そう。今はとりあえず本拠地の資料を回収して、セイレーンのいる場所への道を探らなければ……嘉御」


「お任せを。皆さまはこの近辺の部屋を調べて資料を集めてください」


 仲間が近くの部屋に入ったのを見て嘉御は床に手を当てる。


「我は冥界の番人。ゆえにしばし眠りを妨げること、許されよ」


 ゆらり、と顔のない影が立ち上がった。


「汝らの辿った道を示せ」


 黒い影が壁の一点を指し示す。


「ここですか……はあっ!」


 嘉御の拳が壁をぶち抜くと、地下へ続く螺旋階段が現れた。


「……ありがとうございます。眠ってください」


 黒い影が消えたのを確認して、彼もまた資料回収に加わった。


**


 一方その頃。


「生存者は?」


「……ダメみたい。傷が深すぎる。キラリティ、この人たちは【鏡像】被害者で間違いない?」


「残念だけど間違いないかな。だけど、わからない。【鏡像】は元の人間が死ねば消える。つまり、今トリチェッロ区ではここにいた十名以上の人間が一度に消失する大事件が起こっている。そんなことをすれば確実に足がつく。犯人の狙いはなんなんだ?」


「生贄だよ」


 赤い海をゆっくりとかき分けてスーツの男が現れる。その胸元に煌めく区主の証をキラリティは見逃さなかった。


「トリチェッロ区長……そうだね。あんたほどの権力者なら【鏡像】の十人ぐらい揉み消せるよね。【海鎮めの一族】を祭りのたびに生贄にしてきたんだもんな」


「海の精霊に人魚を捧げる儀式だ。人魚なのだから海が本来の居場所だろう?今頃どこかの海の底で元気に歌でも歌っているんじゃないかね?」


「……長話をするつもりはないから要点だけ。トリチェッロ区長。【石喰い】であるセイレーンを呼び覚ましてあなたは何をしたいんですか?ご自分の領地をめちゃくちゃにするメリットが、俺にはよくわかりません」


 いつもより低い声で、パフェが区長に問う。


「簡単さ。アクト・フィグメントの【創世計画】がーー」


 区長の姿が異形へと変わる。


「魅力的だったからだよ!」


「っ!」


 巨大なイカの触手を素早くシトラスが切り落とした。


「……そうですか。それではこちらも……容赦なくいきます……【童話の魔女】、背負いし七罪の名を【強欲】。シトラス、キラリティ。物騒なティータイムを始めよう」


 パフェはぺこりと一礼してうさぎ型の精霊を呼び出す。


「戦うのは好きじゃないけれど、不得手ではないんだ」


**


 時は少し巻き戻る。


 紡と親友との対峙は思ったより早く訪れた。


 場所は本拠地の屋上。傍らに立つのはアクト・フィグメントの【金貨】。


「本拠地に乗り込んでくるのは予想通りです。しかし、区長の求める生贄の少女シレーナに加え、見知った顔を見るとは思いませんでしたが」


「お前とは会いたくなかった。二度とな。お前がいなくなれば現代シルクスの厄介ごとは半減するだろう。【創世計画】をトリチェッロ区長に教えたのはお前だな。その上その記憶だけ抜き取って最終的には異形にした。救いようのない狂科学者には【死】を与える方がいいだろう。紡、シレーナ。こいつは任せろ。君たちは勇陽を取り戻せ!」


 グーフォは力を解放し、その姿を変えた。漆黒の長く伸びた髪、紫の瞳。その手に携えるは死神が持つ大鎌。


「いいでしょう。相手に不足はない」


 【金貨】は巨大なクラゲの異形を呼び出す。


「やりなさい」


「……勇陽」


 グーフォと【金貨】の戦いに背を向けて、紡は真っ直ぐに勇陽の元へ歩いていく。


「……」


 勇陽は答えない。操られているのか、目に光がなかった。


「……今助けるから。僕が君の【星】だっていうなら……照らしてあげる」


「……シレーナ、宵霧。手は出さないで。宵霧はシレーナを守って。ここは敵の本拠地だから、彼女を狙っている相手がいるかもしれない」


「ああ」「頑張って……」


「……行くよ」


 紡はそっと目を閉じて、燃え上がる炎に心を預ける。


 炎は怒り。炎はぬくもり。炎はーー


「生命の輝きだ!」


 紅の炎が燃え上がり、紡の持つ両手剣へと姿を変える。


 赤く染まった髪と瞳が夜を焼きはらう炎のように輝いた。


「……!」


 先に動いたのは勇陽。身のこなしが軽い上に元々の戦闘能力が高い。


 繰り出される拳と蹴りの嵐を、紡は両手剣で防ぐのが精一杯だった。


「だったら!」


 紡は隙を見て勇陽ではなく、地面を攻撃する。炎を纏った両手剣の一撃は、屋上の地面に深い穴を残した。


 ーースピードに勝てないなら、足場を崩す!


 少しの間で屋上の地面は穴だらけになり、いくつかは下の階へ通じる落とし穴になった。


 だが、勇陽の攻撃速度は落ちない。


「しまっ……!」


 ついにその拳の一撃が紡を捕らえ、吹き飛ばされた紡はそのまま下の階へ落下する。


「う……」


 受け身は取れたが、瓦礫で足を怪我したようだ。全身の痛みに耐えることはできても、万全の状態ですら勝てない相手に機動力まで奪われては勝ち目がない。


〈紡。私が力を貸しましょう。海の力は全てを飲み込み、そして全てを癒す。あなたも、あの子もーー〉


「ありがとう。僕もここで、負けるわけにはいかない。治すのは足だけで大丈夫です。足さえ動けば、まだ戦えます」


〈無理はしないで。さあ、この短剣を〉


 青い光に包まれて、紡の体は水を纏う。海色の髪と瞳は両手に短剣を持ち、屋上へと駆け戻った。


「……っ、う……」


 一方、操られている勇陽には異変が起こっていた。


 穴に飛び込んで敵を追い詰めなければいけないはずなのに、体が動かない。


「おれ、の、ほし」


「勇陽!あんたは紡の親友なんだろ!だったら戻ってきやがれっす!」


「勇陽くん!この歌を聴いて!」


 ーー歌声が聞こえる。


 あの時に紡を夢から醒ました澄んだ旋律。


 その歌声に導かれるように、勇陽は一雫、涙を落とした。


 屋上に戻ってきた紡は、短剣を構えたまま静かに勇陽の元へ歩いていく。


「勇陽。今、終わらせるよーー」


 二本の短剣が切り裂いたのは勇陽の身体ではなく、彼を操っていた首輪と宝石。


「……あ……」


 勇陽の瞳に光が戻る。


「おかえり」


「……ただいま……」


 紡は何も言わずにぐったりとした勇陽を抱きしめる。


 その時、限界を迎えたように屋上が崩れ、紡と勇陽は眼下の海へ投げ出された。


「紡!」「勇陽くん!」


「グーフォさん!宵霧!シレーナ!先に行って!必ず追いつくから!」


 約束だけを残して紡は勇陽とともに海へ沈む。


 残っていた地面も崩落が始まり、グーフォ、宵霧、シレーナの三人は急いで屋上から地下へと駆け降りた。


**


「ぷはあっ!」


 海に落ちた紡は海の守りもあり、無事本拠地の研究セクターの水路に流れ着いた。


 勇陽はぐったりとしたままで、顔色が悪い。手頃な部屋を選んで扉を開け、見つけたベッドに勇陽を寝かせた。


「あまり長くは休めないけど……僕も流石に二回も力を使ったから少しきついな……ん?」


 適当に座った机の引き出しから、書類の端っこがのぞいている。


「……【創世計画】……?」


 紡はぱらぱらとページをめくり、書類一式を持っていくことにした。


「多分、後で詳しい人に見てもらった方がいい。それにしても勇陽は大丈夫かな……」


「……大丈夫だ。なんとか動ける。どのみち敵の本拠地には長居できないし……シレーナに渡すものがある。だから、連れて行ってくれ。鏡像たちを救うなら地下だ。案内はできる」


「……わかった。でも、無理はしないで」


「ああ」


 紡は勇陽とともに長い螺旋階段を降り、地下へ向かった。

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