新たな知見と、そこからの考察(オヤジバックについて)
数年前の事である。
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その日は、調査の現場に車で来ていた。運転するのは私ではなく、アラサーの調査員。
駐車場に車を停めようとしてバックさせるのだが、その調査員は、後ろを全く目視する事なく、サイドミラーだけを見て車をバックさせている。
私は、正直ちょっとびっくりしてしまった。
「バックとは言え、進行方向を全く目視せずに車を動かすとか有り得ない。」
確か、私はそんなことを言ったと思う。
そしたら、こんな返事が返って来た。
「教習所ではこう習いましたよ。」
Σ( ̄。 ̄ノ)ノ
私はそんな風には習わなかった。
ちょっとびっくりした。
だが、それが事実だとすると、何故そんな教え方に変わったのか。
その時は答えがわからなかったので、その件は取り敢えず忘れた。そして人生は続く。
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で、数年後。
ネットの某サイトの記事で、この件についての答えを見つけてしまったのである。
「車をバックさせる時に後ろを目視してバックしようとすると、体を捻る格好になるので、ペダルを踏み間違える可能性が高まる。」
((((;゜Д゜)))))))
そんな理由だったのか!
なるほど。
体を左に捻って後ろを目視しようとすれば、骨盤の向きも傾くから、足の位置の感覚が狂い、ここだと思って踏んだブレーキが実はアクセルペダルだった……ということはあり得るかも知れない。
個人的には、体を左に捻るのだから、足も左に引っ張られるわけで、ブレーキと間違えて踏むのはアクセルではなくフットレストのような気がするが、でも想定される危険は出来るだけ排除すべき、という考え方はまあ分かる。ブレーキと思い込んでフットレストを踏み続けるのも、アクセルペダル程ではないが危険ではある。
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ペダルの踏み間違えが原因の事故、最近はニュースなどで良く耳にする。そんな事故が起こる度に「ジジイは一律免許返納しろ」みたいな議論が起こるのだが、事故のデータを見ると,若い世代も結構踏み間違い事故を起こしている。つまり、「踏み間違い」は年齢に関わらず起こす可能性のある事故なのである。教習所での教え方が変わったのも、恐らくそう言ったデータを踏まえてのものなのだろう。最近は新車のバックカメラの装着が義務化され、レンタカーを借りると100パーセントバックカメラが付いているので、ミラーとモニターだけを見ながらのバックも充分可能になって来た。
ペダル周りにも、最近の車は工夫がなされている。
特に日産車がそうだが、アクセルペダルとブレーキペダルの間の床に微妙な段差が付けられていて、アクセル側のほうが少し高くなっている。すると、踵がブレーキペダルの正面に誘導される形になって、アクセルペダルはそこからつま先だけを横にずらして踏む格好になる。メーカーも色々考えているようだ。
ただこれ、長距離ドライブではだんだん疲れてくる。
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まあ、これを言ったらお終いなのだが、そもそも同じ「踏む」という動作で、片方は加速、もう片方は減速という逆の結果をもたらす装置が、目視確認できない足下に並んで付いているというのは、機械の設計としては悪手である。最近では、これを改善しようとして、ゲタのように大きなブレーキペダルの右上に、爪先で横に押す形で操作するアクセルがついた「安全ペダル」と言うものがある。これ、なかなか優れたアイデアだと私は思う。
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だが、ジジイの私は、この「安全ペダル」を取り付けようとは思わない。何故か。
それは私の車がMT車だからである。
MT車でバックをする時は、左脚は常にクラッチペダルの上にあって、基本的に半クラッチで速度調整しながら車を後ろに進ませる。やばいと思った時には、右足がブレーキを踏むより前に、左足がクラッチペダルを踏んでいる。だから、その時右足が間違えてアクセルを踏んでしまっていても、クラッチが切れているので、少なくとも暴走はしない。
前進している時も同じである。前進時はクラッチペダルに左足は乗せないが(乗せてはいけないが)、何かあって急ブレーキを踏む時は、エンストしないように必ずクラッチも一緒に踏む。教習所でそのように習うし体がそう覚えている。
クラッチは、ある種の安全装置の役割も果たすのである。
余談だが、このMT車の急ブレーキ時のペダル操作について、某自動車雑誌系のサイトが、こんな事を書いているのを見て椅子から転げ落ちたことがある。
「MT車で急ブレーキをかける時は、クラッチペダルを踏んではいけない。クラッチを踏んでいると、アクセルを離すことでかかる筈のエンジンブレーキの分の制動力がかからなくなるからである。エンストしてもいいから、クラッチは踏まずに急ブレーキをかけるべきである。」
これ書いたやつ、実際にやってみたのだろうか?
どうせ急ブレーキなんだからエンストしてもいい、というのは間違っている。何故か。エンストしてしまったら、パワーステアリングが効かなくなるからだ。急ブレーキをかけた先で回避すべきもの(歩行者とか)がなければそれでもいいかもしれないが、そうでなければ、パワーステアリングが切れた状態でハンドルを切っての危険回避など不可能だ。
危険極まりない記事である。
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はい、余談でした。
バックの話に戻ろう。
理屈は分かったのだが、私は相変わらずミラーとモニターだけを見ながらのバックは苦手である。カメラにも死角はあるし、サイドミラーには駐車マスの白線は映らないから、この二つだけに頼ってバックするのは、私はまだ怖い。
だから私は、後ろを振り返って目視しながら車をバックさせる。ところが、私の車は真後ろが見えにくい。
なので、一度リアウインドウ越しに安全を確認したら、今度は窓をあけて首を出して、今日も私はオヤジバックをするのである。




