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ブラック企業での日々  作者: 黒井 新
第四章
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大手進学塾⑳

俺は、授業後に長谷部さんに連絡をした。


「あ、黒井さん。久しぶりですね、お元気ですか?」

長谷部さんが尋ねた。


「長谷部さん、お久しぶりです。まあまあ、元気にやっています。

ところで……、今日の全社会議の件ですが………」

俺は、水城社長が不在だった件やM&Aについて、長谷部さんに尋ねた。


「実は……、今日の全社会議の前に、水城社長は辞任されたんです………、

そして、退職の道を選ばれました………」

長谷部さんの言葉に、俺は今まで味わったことのない衝撃を受けた。


(辞任……、水城社長が会社を辞めた………)


俺が何も言えずにいると、長谷部さんが続けた。

「私も信じられなかったんですが、2週間ほど前に、水城社長に様々な嫌疑がかけられまして……」


(嫌疑って………)


声にならなかった……、でも長谷部さんは俺の気持ちを察してくれたようで、話を続けた。


「会社資金の横領、アンケートの捏造、社内不倫、パワハラ………、10項目くらいありました。証拠も何点か出されたため、私も何も言えず……」


証拠のためか……、突然の事態のためか……、幹部社員の誰一人として、水城社長を庇う者はいなかったらしい。



「…………その疑惑って、誰が言い出したんですか?」

俺が尋ねた。


「岡本副社長です。」

長谷部さんが答えた。


点と点がつながり始めた………。




(会社のために頑張ってきた人間を、こんなにも簡単に切ってしまうのか……?)


怒りや悲しみ、喪失感など、たくさんの負の感情が溢れてきた………。


会社に対して不信感しかなかった……。



「なんで、誰も水城社長を信じなかったんだ!」 

「なんで、誰も水城社長を守ってやれなかったんだ!」


そう叫びたかった。

しかし、自分がその場にいたとしても、証拠がある以上、それが出来たかどうか…………。


心の中が黒い霧に覆われたようだった。



「M&Aのことについては、私も今日知ったので、詳しくは分からないんです………」

長谷部さんがそう言っていたが、俺はもう脱け殻のようになっていた……。





臨時の全社会議から、1か月が過ぎた。

俺は、心の中にモヤモヤした感情を抱えながら、業務にあたっていた。


エリアの社員と会うたびに………

生徒たちの純粋な笑顔を見るたびに………


真摯に仕事に向き合えていない自分……

情熱を持って指導にあたれていない自分……


それらを感じるたびに罪悪感が生まれた。


自分は、みんなの上司としてここにいて良いのだろうか……

教育者として、教壇に立ち続けて良いのだろうか……







俺は、長年勤めたこの会社を辞めることを決意した。

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