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ブラック企業での日々  作者: 黒井 新
第四章
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大手進学塾⑲

(なぜだ……? 副社長が、なぜ出てこないんだ……?)

俺は胸騒ぎを覚えた………。


今までの全社会議は、毎回副社長の岡本さんが最初に挨拶をし、司会を務めていた。しかし、今回はそれが違っていた。


(まさか………、辞めたのでは……?)


いつも通り社訓の唱和がおこなわれた。


「……………それでは、本日の全社会議の内容に関して、岡本さんからお話しいただきます。」

米山さんがそう言った。


それを聞いて、俺は安心した。



しかし、その安心は後に絶望に変わる………



「本日は皆さんに嬉しいお知らせがあり、急ではありましたが全社会議を開催させていただきました。」

岡本さんが言った。


(嬉しいお知らせ……?)



「我が社は予てより、日本一の塾を目指してきました。日本全国への拡大を進める中で様々な障害がありましたが、皆さんの情熱や努力でそれらを乗り越えてきました。本当にありがとうございます。」

岡本さんはそう言って、深々と頭を下げた。


「しかし……、様々な県への出店を続ける中で………、どうしても自社だけでは乗り越えられない壁が出てきました。そこで……、私たち経営陣はある決断をしました………」

岡本さんが間を取る。


「………それが、M&Aです。」



(M&A……? 買収されたってこと………?)

エリアの皆も驚きの顔を隠せない……。



(………一体どこに……?)


副社長が話を続けた。

「………それでは、ここから『株式会社神村塾』の代表取締役 神村篤さんより、お話しいただきます。」


(神村塾!! 塾業界の最大手………。確か上場もしていたような……)


神村塾は全国に2000教室以上を展開している個別指導塾。

俺たちの会社は個別指導もやっていたが、集団指導がメインだった。

同じ塾業界ではあるが、畑違い。

集団指導の場合、校舎長が授業をすることが多い。

しかし、個別指導の場合には、指導はアルバイトの先生が中心で、校舎長は管理や運営が中心になる。


「初めまして、皆さん。神村塾の代表取締役、神村篤と言います。今回、このように、皆さんと協力関係を結ぶことができ、大変嬉しく思います。」

神村さんは、そう言ってにこやかに笑った。

そして、次のように続けた。


「M&Aと聞いて不安になられた方もいると思いますが、ご安心ください。皆さんの普段の業務内容が大きく変わることはありません。寧ろ、当社のシステムを使うことで業務効率が飛躍的に改善されます。経営に関しても、私たちが口出しすることはなく、岡本さんが中心となって行っていきます。」


(岡本さんが中心となって……? どういうことだ? 水城社長は……?)



エリアのみんなは、「M&Aへの不安」、「具体的に自分たちの動きがどう変わるのか」、「何が改善されるのか」などを口々にしていた。


困惑が大きかったようで、水城社長の件に気づいていないようだった………。


俺は頭が真っ白になり、その後の話は上の空だった。



……

……

……



「以上で、本日の臨時全社会議を終わります。今日も生徒一人一人の幸せのため頑張りましょう。」

米山さんがそう言って、臨時全社会議は終了した。




(エリアのみんなも不安に思っていることが多いはず………。俺が冷静にならなくては……。)


俺の様子に気づいてか、岩田さんがみんなに声をかけてくれた。

「まあ、色々と不安があるとは思うけど、俺たちがやることは変わらないから………。不安な顔で生徒を出迎えられないだろう? 一気に情報が出てきたから、整理しきれていないところもあると思う。

気になること、不安に思うことは、明日の朝礼で話し合うことにしませんか、黒井さん?」


「………はい、そうですね。じゃあ、明日の朝礼で話し合いの時間を設けましょうか。皆さん、それで大丈夫ですか?」

俺がそう言うと、全員が賛同してくれた。


……

……

……


「岩田さん、先ほどはありがとうございました。」

俺が岩田さんにお礼を伝える。


「いえいえ。………気になることが多い会議でしたね……。水城社長がいらっしゃらなかったこともそうですが、『自社だけで乗り越えられない壁』が何なのか、いつ頃からM&Aの話が進んでいたのか………。経営状況は悪くなかったので、急いで買収される必要はなかったはず……。

黒井さん、一度、長谷部さんに、連絡をとってみてはいかがですか? 幹部社員なら、何か知っているかも知れません。」

岩田さんが、言った。


「確かに……、そうですね。今日の授業が終わったら、長谷部さんに連絡してみます。」

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