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大手進学塾⑨
「お疲れ様でした。お先に失礼します。」
江原さんが来て、寺内さんに今日の業務の報告をして帰っていった。
「私も帰ろうかな。」
寺内さんが言った。
「細川さん、まだ残っていくの?」
「はい、このプリントだけ仕上げたいので。」
細川さんは答えた。
「じゃあ、戸締まりよろしくね。お疲れ様でした。」
寺内さんも帰っていった。
校舎の事務室内には、俺と細川さん、山田さんがいた。
細川さんがタイムカードを切る。
(あれ、急に帰る気になったのかな?)
俺が見つめていると、それに気付き細川さんが言った。
「最近、総務がうるさいんですよ。残業するなって。でも、生徒に少しでも良い点数をとって欲しいじゃないですか。だから、タダ働きでもプリントを作ってあげたいんですよ。」
(……惚れた、この人こそ、本物の教育者だ。)
「俺も手伝います!!」
俺は考える間もなく言葉を発していた。
「ね、そうなりますよね? 僕も最近、細川さんの手伝いをしているんです。考え方に感化されてしまって。」
山田さんが言った。
(うぉ~、同士! 心の友よ)
こうして、俺たちはタイムカードを切った後、午前1時までプリント作りに励んだ……。




