飛び込み営業②
「あの、吉田さんは…?」
「体調が悪いらしい。黒井さんは、今日齋藤さんについて回って。」
マネージャーは、吉田さんを心配している様子も見せず、答えた。
(まぁ、昨日の営業の感じだと落ち込むのも無理ないよなぁ。)
齋藤さんは、黒髪のロングヘアーの女性で、おっとりした印象だった。しかし、それなりに毎日契約を取っているらしい。
「今日は朝礼の後、シミュレーションしてから現場に入ってくれ。」マネージャーが全員に伝える。
シミュレーションとは、営業トークの練習である。このおっとりした齋藤さんに、吉田さん以上の営業トークが出来るのだろうか。
「はい↑、ではですね↓、…」
(ん、んん? 何か声のトーンが3段階くらい上がったwww)
「…ということで、早速ですが算数のテストから始めましょう。苦手な方を先にやった方が良いですよ~。」
(ん、んん?いつの間にか診断テストを受けてる…、良いって言ってないのに。)
シミュレーションと同じような流れで、齋藤さんはこの日3件の診断テストを行った。
「診断テストは素晴らしいものなの。だから、受けてもらうことが大切なの。今日の子達も今後の人生大きく変わっていくから、黒井さんは自信を持って売ることが大切よ。」
齋藤さんは、その日の最後に俺にそう言った。
俺は齋藤教に入信しそうになっていた。