引っ越し業者①
話は少し戻ります。
2つ目のブラック企業の就職が決まったタイミングで、実家を離れワンルームのマンションで一人暮らしを始めていました。
飲食店から未払いの給与を回収したものの、これからの生活費に困っていた俺は、派遣のアルバイトに登録していました。
今回はその派遣先でのお話。
その引っ越し業者は、派遣の人達から悪い評判しか聞かない企業だった。
「え~と、黒井さん。あなたは馬場さんのところ。」
営業所で、恰幅の良い中年男性が俺たち派遣を振り分ける。
「ちょっ……、馬場さんって、どの方ですか?」
(初めてなんだから、馬場さんって言われても……)
俺の質問が聞こえなかったのか、恰幅の良い男性は、足早に去って行ってしまった。
「あの、馬場さんって、どの方ですか?」
トラックの荷台に梱包用の段ボールを積んでいる男性に尋ねた。
「いや、俺も今日が初めてなんで、ちょっとわからないです。」
俺の馬場探しは、10分ほど続いた。
広い駐車場に止まっているトラックを1台1台聞いて回った。正直、馬場はもうどうでも良いから、早く帰りたかった。
そう思い始めた頃、ついに馬場が見つかった。
しかし、……
「お前、ふざけてんのか!?」
初対面の馬場から怒号を浴びせられる。
「何してたんだよ、荷物の積み込み終わったぞ!! やる気あんのかよ!?」
(やる気はあるが、お前の下で働くやる気はない)
こっちの言い分も聞かず、馬場のシャウトが続く。
「まったく、お前のせいで出発時間過ぎちまったじゃねえか。」
(馬場がシャウトしなければ、無事に出発出来たのでは……?)




