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屋敷の悪魔?

盗賊(上に行った組)視点のお話です。

 


「うーん、二階は特に収穫無しだなー」

「強いて言うならコレっしょ、この盾。っつってもボロいしそこまで高く売れるかっつーと微妙だがよ」

「まあ真ん中の銀細工のエンブレム含めりゃマシだろ。でも流石にもう何もねーなぁ」


 男二人は数少ない戦利品を革袋に入れ、階段を下りていた。


 この屋敷は、とある貴族の老人が別荘として使っていた屋敷だ。どうやら物好きな貴族だったようで、人気の少ない森の奥地にヒッソリと佇んでいた。しかしそこそこ大きな家系だったらしく、来た当初は大量の装飾品や高価な芸術品など、たくさんの物が置いてあった。それらをまとめて売り払えばかなりの金額になるだろうことは容易く想像が付くくらいに。


「親方―!そっちはどうでしたー?」


 大声で下にいるであろう仲間たちに問いかけるが、その問いに応える声は一向に聞こえない。


「あり?反応帰って来ねぇな?いつもなら、うるせぇぞ!って怒鳴り込んでくるのに」

「まだどっかで物色してんじゃね?もしかしたらこっちを気に掛ける暇がないほどの、すっげ―お宝でも見つけたんかもな」


 なんて軽口を叩きながら階段から降り、仲間を探し始めるも彼らが見つかることは無い。


「なあ、いくら何でもおかしくないか?」

「もしかして先に外に出たのか?入口戻ってみようぜ」


 流石に疑問に感じ始め、速足でエントランスへと向かう。彼らのリーダーはここらじゃ名の知れた盗賊だった。故にそんな彼がしくじるなんてことは想像もできない。恐らくエントランス辺りにいるものだろうと軽い気持ちで向かう。



 ――しかし、そこに待ち受けていたのは予想外の展開だった。



「なっ、なんだよ、これ・・・!」

「なんで・・・?親方、しっかりしてくださいよ!」


 震えながら蹲る仲間と、散らかったエントランス。開け放していたはずの扉は固く閉ざされ、ビクともしない。そして、意識を失った彼らのリーダーは頭に打撲の跡ができていた。


「おいお前っ!親方と居たはずだろ!何があったんだ!?」


 床に蹲っていた仲間に駆け寄り声をかけると、男は震えながら呟いた。


「や、やばいっすよ、ここはやっぱり悪魔の館だったんす。言い伝えは本当だったんだ・・・」

「おいっ!悪魔の館ってなんだよ!何が起こったんだ!?」

「あはは、俺らは終わりっす。人間が悪魔なんかに勝てるわけねえ・・・」

「何を言って・・・」


 いつにもなく取り乱した様子の彼は、既に正気じゃなかった。しかしその様子にただならぬものを感じ思わず後退る。


 そしてそれは、間違いではなかった。


 ひたり


「「っ!?」」


 ひたり、ひたり


 ゆっくりと、ゆっくりと近づいてくる足音。思わず振り返っても、周りには誰もいない。言いえぬ恐怖に、冷汗が頬を伝って落ちる。


「一体何なんだ・・・?」


 ひたり、ひたり、ひたり


 足音は確実に近づいてきている。しかし一向にその姿は見えないまま。


 カラン


「「!?」」


 突然鳴った音に驚いて振り向く。そこには、この屋敷の物であろうネックレスが置いてあった。


「・・・何だ、これ?」

「さっきまで無かったよな?」


 思わず訝しんでいたが、手掛かりになりそうなものはこれしかない。恐る恐る近づき、拾い上げる。


 それは、真っ赤な宝石が嵌め込まれた不気味なほどに美しいネックレスだった。


 ボッ


 次の瞬間背後からパチパチと火花が散るような音がした。


 世の中には、知らない方が幸せなこともある。なのに彼らは、盗賊として培ってきた本能により、反射的に振り返ってしまう。


 そこには、真っ白な何かがいた。そしてその近くにはふよふよと漂う小さな火の玉。


「ひぃぃぃぃっ!!!!」


 見たこともない現象を前に、一人が思わず震えあがる。真っ白な何かは、一見白い布を被った人に見えるが、足が無かったのだ。


「な、何だよこれっ!?」

「いや、落ち着け、恐らく魔法具だ!中にちゃんと人がいるなら物理攻撃も効くはずだ!」


 怯えて縮こまる一人に対し、もう一人は冷静に状況を判断する。恐らくあの布が魔法具で、その効果で姿を消しているのだろう。それならば対処のしようはある。


 男はナイフを取り出し、構える。そもそもあれは、ただただ漂っているだけで今のところ危害を加えたりしてこないのだ。だからこそ不気味に感じるわけだが、逆に考えれば手出しはしてこれないのかもしれない。


 そして己の身体能力を駆使し、素早く回り込んだ。


「さっさとその魔法具を渡してもらおう。悪く思うなよ」


 そしてナイフは、布越しに相手を貫いた・・・と思われた。


「な、何で感触がない・・・!?」


 間違いなくナイフは布を貫いている。なのに、肉を抉る感触がしなかった。それも、未だに布は浮いたまま。つまり、中には誰もいないことになる。貴族なら魔法を使うことがあると聞くが、それでも物を浮かせるなんて魔法は聞いたこともない。


「どうなってるんだ、これ・・・。まさか本当に悪魔・・・?」


 悪魔は多様な魔法を使いこなす。何せ、悪魔とは魔法の申し子のようなもの。人間が使う劣化版の魔法とは違うのだ。貴族でもない自分たちが勝てるわけない。


 反射的に半歩後ずさる。


 と、そこで足元に何かが転がっていることに気づく。



 ・・・それはさっきまで共に屋敷を探索していた男だった。



「はっ?何で・・・?」


 男は既に気絶していた。そのうえ、物音も悲鳴も聞こえなかった。抵抗した形跡もなく、生気を失ったかのように倒れている。


 意味が分からなかった。


 思わず周りを見回す。辺りには誰もいない。親方も、仲間二人も、既に倒れている。これでその場で意識のある人間は自分一人となってしまった。どうして彼らが倒れているのかも、分からないまま。


 目の前には白い布を被った何かがいる。そしてその傍には、ゆらゆらと火の玉が浮かんでいる。ゆらゆら、ゆらゆらと。不規則な動き方はまるで魂でも浮いているかのように見えて。


「うわあああああああああああああああああああああああ!!」


 男は一も二もなく逃げ出した。攻撃も効かない、実態もない。目の前のこいつはいったい何なんだ。出口の扉に向かい、扉を開けようとする。しかしギシギシ音を立てるばかりで開く気配がない。全く開かない扉を前に、男は焦りだす。


「なんで開かない、開けっ!開けよっ!!!」


 カタッ


「!?」


 背後に物音が迫り、男は処理落ちした機械のようにカクカクになりながら振り返る。


 ・・・そこには赤く光るナニかが目の前にあった。


「何なんだよ、この屋敷は―――!!」


 体が恐怖で軋む。そのまま尻餅をつき、床を這いずった。ついこの前までは何もなく、それなりに盗賊としてやっていけてた。だからこそ、油断したのかもしれない。盗賊団の中で最も腕利きの親方も既に倒れ、頼りになる仲間たちも既にいない。そんな絶望的な状況で、いったい自分に何ができるというのだ。


 迫りくるそれを最後に、とうとう彼は意識を手放した。




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