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理不尽。

 


 くるりとこちらへ振り向いた男は、目を瞬かせた。


 まずい。これはまずい。完全に見つかってしまった。もしかしたらナイフで切りかかられたりナイフをぶん投げられたりするのかな?さすがにもう刺されたくはないのだけど。


 内心冷や汗ダラダラの私だったが、男はきょろきょろと辺りを見回し、首を傾げるだけだった。


「うーん、何もないっすねぇ?」

「どうせお前の気のせいだろ」


「へ?」


 私の疑問を置き去りに男たちは背を向けた。


 どういうこと?まさか見えてないの?


 私が無理矢理視界に入ろうとしても、視線が合うことはない。確認のため、親玉らしき男の方にも行ってみるも、やはり反応は無かった。


 ・・・そう言えば私、幽霊だったわね。おばけちゃんにも触れるし、てっきり実態のある幽霊だと思ってしまっていたけど、彼らに私の姿は見えないらしい。そしておそらく、声も聞こえていないのだろう。つまり、大声を出しても聞こえることは無いということか。なんだかようやく幽霊っぽい事態になったな。


 しかしここで、私の脳内でいつぞやの悪魔さんが囁いてきた。


 ・・・そういえばこの親方さん、スキンヘッドっていう髪型なのよね。太陽が反射しやすいあの、仏のような頭。いわゆる・・・。


 私はゆらりと親方さんの目の前に降り立った。そして大きく息を吸い込む。一応弁解させて頂こう。これは確認。そう、確認のためだから、決して悪気があったわけじゃない。



「盗賊なんてみみっちい真似してんじゃないわよ!このハゲジジイッ!!」



 ・・・・・・・・・・・・・・・。


 ・・・ふぅ、スッキリした。


 さて、これで分かったが、やはり私の声は盗賊さんたちに聞こえないらしい。あれだけ大声で罵倒したにもかかわらずこの人たちは反応すらしない。そしてそれはおばけちゃんの声も同様であり、おばけちゃんが彼らをすり抜けたということは、おそらく私も彼らに触れることができないのだろう。


 試しにそっと盗賊に触れようとしてみる。しかし私の手に感触が来ることはなく、すり抜けた。盗賊の身に付ける衣服も、ナイフも、触れられることなく空を切った。


 予想はしていたけど、やはり私はコイツらに手を出すことはできないらしい。


「いや、一回くらい何かの間違いで当たってくれないかな?」


 試しに殴りかかってみても、やっぱり当たらない。顔面をビンタしてみても、頭からチョップしてみても、下半身を蹴り上げてみても、決して当たらない。


 そもそも、何で家具とかは触れるのにコイツらは殴れないの?チクショウ、という意味合いを込めて、最後の拳を突き出す。


 その瞬間、私の手に何かが掠めた。


「あれ、さっき何かが当たったような」


 思わずもう一度拳を突き出すと、今度は間違いなくカシャ、と音がして、冷たい何かが当たった。・・・なんだろう、これ。金属っぽいけど。


 私の手は現在、盗賊の革鞄にめり込んでいる。というか、最後に殴った場所鞄だったんだ。自棄になっていたとはいえ、何で鞄殴ったんだ、私。せめて顔を殴ろうよ。


 とりあえずその金属っぽい何かを掴み、そっと取り出す。私と違ってその何かは鞄をすり抜けてくれないので、地味に取り出しにくかった。


 鞄から取り出したことがバレないように一度盗賊たちから離れ、未だに目を回しているおばけちゃんを抱えた。ひとまず最初の物陰に隠れて、例の金属を確認する。


「ネックレス?」


 それは、大粒の赤い宝石が嵌め込まれたネックレスだった。金の細工が美しく、それはそれは高価なものに違いない。で、何でこれは触れるんだろう?何か秘密でもあるのかな?


 ジーッと観察してみると、私はあることに気づいた。


 ・・・これ、最初の部屋の家具とデザインが似てる。多分、あの部屋に飾ってあっても違和感なんて全くないくらい。


「まさか、この屋敷から盗んだ物?」


 そうなると私の中で仮説が立てられる。


 私が今まで触れたものは全て、この屋敷に関係するものだけ。盗賊に触れないのがおかしいわけではなく、この屋敷の物を触れるのがおかしいとしたら。


 ―――異常なのはこの屋敷だ。


「・・・なーんだ。私、本当に幽霊だったのね」


 話すこともできず、触れることもできず、生きた人間に干渉することなんてできない。


 心の奥底で、おかしいのは私じゃないか、実は私は生きてるんじゃないか、とか思わなかったわけじゃない。改めて現実を叩きつけられ、自分が確かに死んだことを実感させられた。


 試しにもう一度盗賊の方へ近づき、鞄に手を突っ込む。やはりいくつか触れる物があった。おそらくネックレスと同じで、ここから盗み出された物だろう。


 やはり、この屋敷の物だけが触れることができる。


 おばけちゃんだってそうだ。おばけちゃんはこの屋敷のチェストに何の問題も無く隠れていたし、壁には普通にぶつかっていた。どういう仕組みか分からないが、恐らくこの家は、幽霊のようなモノが住めるようにできているのだろう。


 ・・・だから私はここに飛ばされたのかな。


 どうせ優しくするなら最初から優しくしてよ。せめて今世の私が死ぬ前に。


 あーあ、神様はやっぱり理不尽だ。




全国のスキンヘッドの皆様、大変申し訳ございません。

改めてみると温度差ヤバくて風邪ひきそう・・・。

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