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隠れていた理由。

 


「きみ、いつからここにいるの?」

「きゅ?」

「ここは何処か分かる?」

「きゅっきゅう!」


 うん、わっかんない!


 せっかくだし何か情報を聞きだせればいいと思ったけどおばけ語は流石に分からなかった。しいて言うならこの子がかわいい。全身で感情を表現している子供らしさがあってとってもかわいい。おばけってこんなに可愛いものだったんだ。もっと早く知りたかった。


 前世の私は怖いものこそ大っ嫌いだったが、それと反対に可愛いものは大好きだった。かわいいキャラクターを見れば、知らない内に連れ帰ろうとするくらいには。幼い頃なんか、お店の物でもいつの間にか手に持っていたからお母さんが滅茶苦茶焦っていた。もちろん今はそんなことしていない。まあ、いつの間にかお小遣いが減りまくってるけど。ついでに言うとちょくちょく友達の家のぬいぐるみを拉致してしまうことはあったけれど。


 まあつまり、私は可愛いものに目がないのだ。


 私がにやける顔を必死に抑えていると、おばけちゃん(性別不明だけど)がこてんと首を傾げていた。かわいい。


 私がほっこりしていると、先程おばけちゃんが出てきたチェストが目に入った。先程まで恐怖の象徴のように感じていたそれは、今ではおばけちゃんとめぐり合わせてくれた運命のチェストのように見える。ありがとう、チェスト。


 先程まで怯えていたにもかかわらず、我ながら清々しいまでの掌返しである。


 おばけちゃんを見つめながらニヤニヤしているとふと疑問が浮かぶ。


「そういえばこの子、どうしてこんなところに隠れていたんだろう」


 このチェストには何かあったのだろうか?不思議に思ったのでチェストを念入りに調べてみたが、何かあるわけでもなかった。やはり何もない。仕掛けのようなものも見当たらないし、これ自体に何かがあるわけではない。


 それならばなぜこんなところに居たのだろう。まるで何かから隠れていたかのように。未だにぎゅうっと私の腕に抱き着いているおばけちゃんは何かに怯えているようで。



 ――ガッ



 遠くから妙な音が聞こえた。方向的にはエントランスあたり。この屋敷の正面玄関らしき場所だ。あそこの扉は開くことができなかったはずだが、どうしても胸騒ぎがする。


 極力音を立てないために足を浮かせて移動する。この時ばかりは幽霊でよかったと心から思った。


 ようやくエントランスにたどり着くと、私ではびくともしなかった扉が開かれたところだった。反射的に物陰に隠れる。


「ふぃー、ようやく開きましたぜ」


 扉から入ってくるのは数名の男たち。腰に短剣を装備し、ガタイの良い、いわゆるゴロツキのような方たちだった。


「ここの立て付けの悪さは相変わらずっすねー」

「静かにしろ。さっさと盗ってズラかるぞ」

「俺らは上を探してきやす」

「おうよ、金目になりそうなモンだけ取って来いよ」


 彼らがずらずらと屋敷に入ってくる中、私はあまりの衝撃で動けなかった。


 ―――あの扉、マジで立て付けが悪かっただけなんだ・・・!


 じゃああのときも頑張れば外に出れたの?もう少し粘ればよかっ・・・いや、今更考えたって無駄か。というか、大の男数人がかりでようやく開く扉ってどれだけだよ。立て付けが悪いからってそうはならないでしょ。


 そしてコイツらは、見た目的にも言動的にも盗賊ってやつだろう。盗賊は四名。男たちは二手に分かれ、屋敷の物色を始めた。


 そのうちの一組は、エントランス付近から探索を開始する。


「さすがにそろそろショボくなってきたっすよ、親方ぁー。そろそろ場所変えましょうよぉー」

「あと数回は我慢しろ。こんな館なら隠し部屋の一つや二つ、あるだろうしな」

「おお!隠し部屋とはいい響きっすねー!是非とも見つけてみたいっす!」


 そんな会話をしながら次々と部屋を漁っていく盗賊たち。なるほど、この館が極端に物が無かったのはコイツらが盗んでいたからか。確かに盗むなら軽い宝飾品の方がリスクが少ない。何せ家具とかって運ぶの大変だもん。物陰に隠れながら彼らの様子を探っていると、いつのまにか着いて来ていたおばけちゃんがあからさまに元気がなくなっていることに気づいた。


「きゅきゅう・・・」


 そういえばこのおばけちゃん、この屋敷に元からいたんだよね。


 もしかしなくても、おばけちゃんにとってこの屋敷はとっても大切なものだったのかも。そうでなくとも、突然入り込んできた誰かに居場所を勝手に荒らされて、落ち込まないわけがない。隠れていた理由っていうのも、間違いなくこの盗賊たちにバレないようにだろう。何とかしてあげたいけれど・・・。


 ちらりと盗賊たちの方を覗き見ると、全員の腰元にナイフが見える。相手は四人。それ以外にもいろいろ隠し持っているかもしれないし、果たして勝てるだろうか?


 私が唸っていると、盗賊の一人が触った床が、ガコ、という音と共に動いた。


「おっ!この床外せるっす!」

「よくやった。恐らく大事なものでも入ってんだろ。確認しろ」


 男が外した床板からは、小さな箱が出てきた。古びていて汚れが目立つが、床下に隠していたくらいだ。盗賊たちも目を輝かせている。


 ・・・一体何が入ってるんだろう?


 しかしその瞬間、おばけちゃんが盗賊たちの方へ飛び出した。


「きゅきゅうううううううう!!!」

「おばけちゃん!?」


 おばけちゃんは盗賊の一人に突進していく。私は隠れていたことも忘れ、おばけちゃんを追いかけてしまった。


 勢いよく突っ込んでいったおばけちゃんはとうとう、盗賊に思い切りぶつかってしまう・・・ことなく彼らをすり抜けた。


「え!?」


 そして勢い余ったおばけちゃんは、壁に激突した。急いでおばけちゃんに駆け寄って怪我が無いか確認する。ぶつかった衝撃で混乱しているが、大した怪我はないようだ。


「ん?今なんか音がしなかったっすか?」


 あ、まずいかもしれない。




盗賊語はフィーリングで書いてます。あんまり気にしないでね(笑)

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