表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

怪奇現象の正体は。

 

 ガタッ


 ガタガタッ


「うううう・・・」


 床に蹲り、ただただ震える私。


 怪奇現象付きなんて聞いてないんですけど!ホラーが苦手の私がこんなところに放り込まれても普通に困る!せめて怪奇現象オフにさせて!ホラーが苦手な人でも住めるように怪奇現象オンオフスイッチとか用意しよう!?オフにできたらこのお屋敷でも悠々自適に暮らせるから!いやむしろ、安いアパートの一室とかでいいから普通の部屋にして!!このお屋敷返品するから!!クーリングオフ制度って大事でしょ!!


 なんて現実逃避をする私をよそに、未だに音は鳴り続けている。


 ガタガタッ


 「ひえっ」


 本当に勘弁してください、神様。


 なんだかんだ一時間くらい蹲っていたが、音は一向に鳴り止まない。定期的にガタガタと音が鳴り続けている。神様はきっとドSだ。間違いない。


 でもそろそろ確認しに向かわねばなるまい。この屋敷から出られないことが分かっている今、確認しないことには何も始まらないのだ。・・・というか確認しない方が怖い。突然音がやんだりしても、たぶん怖くて眠れない。幽霊に睡眠がいるのかは知らないけど。


 「よしっ!」


 震える体に鞭打って私は立ち上がった。


 覚悟を決め、音のする方へと近づく。どうやら隣の部屋から聞こえるようだ。隣の部屋は確か、シンプルながらにいい部屋だったな。見栄えを意識したこの部屋と違って、機能重視の使い勝手が良さそうな感じだった。こっちの部屋が豪華絢爛の由緒正しき貴族様が使っていそうだとすれば、隣の部屋は質実貢献な騎士様という感じだろうか。同じ屋敷なのにどうしてこうも違うんだろうと不思議に思うくらいに。


 それにしても何で突然そんな部屋から音が?まさか騎士の亡霊とか?とりあえず怖いのは勘弁なんですけど!


 内心心臓バクバクで、そっと扉に手を当てる。留め具が錆びてギィッと音がするのも私の恐怖心を煽るのは十分で。開こうとしては逃げるを十回ほど繰り返した先にそっと扉を開いた。ようやく全開になった扉を恐る恐る覗き込む。


「だ、誰もいない?」


 中には誰もいなかった。私が入った瞬間に音はバッタリ止んでいて。


「も、もしかして、怖すぎるあまりに幻聴が聞こえてたのかしら?そうね。そうに違いないわ!」


 混乱に混乱を極めていた私は、勝手にそう結論付けて部屋を後にしようとする。しかしそんな楽観的思考は儚くも打ち消された。


 ガタタッ


「!?」


 再び鳴り出した音に、思わず恐怖で足が固まる。


 ガタガタッ


 ガタガタガッ


 いやだ。振り向きたくない。振り向きたくない。


 だけど振り向かなければ音の正体も分からない。ギギギ、と音がしそうなほどゆっくりに、後ろを振り向く。


 ガタッガタ


 視線の先には、目に見えるほど激しく揺れるチェストがあった。


「・・・音は、あの、なか?」


 カクカクになりながらも、チェストに近づく。この屋敷に合った、アンティーク調の高そうなチェスト。金が縁どられたそれは、一見すれば観賞品として楽しめたのかもしれない。しかし状況が悪すぎた。今の私にとっては、どこをどう取っても恐怖を煽る道具にしか見えない。


 震える手で持ち手を掴むも、そこから体は動かない。恐怖で動かない体を見て、私の中の悪魔が囁いた。


 ・・・これ、開けない方が正解なんじゃない?


 ほら、よくあるあれだ。悪霊を封印する壺とか!ホラーシーンの始まりは、誰かが開けちゃいけないものを開けたシーンから始まることが多い。なんなら開けてしまったが最期、頭からぱくりといかれるかもしれない。うん、きっとそういうタイプだ。そうに決まってる。けっして怪奇現象を目のあたりにして怖くなったとかではない。よし帰ろう。こういうのは大体、一番最初に首を突っ込んだ人からお亡くなりになるのだ。開けなければきっと大丈夫。きっと・・・。


 ガタッ


「ひぃっ!」


 チェストが揺れて反射的に思わず手を引っ込めた。



 ――持ち手ごと。



「・・・あ」


 目の前には開け放たれたチェスト。


 ヤバい、開けちゃった・・・。


 自分がやってしまったことに脅え、思わずしりもちをつく。そしてチェストが一際大きく揺れた。私に、何かが突っ込んでくる。


 ・・・これ、終わった。恐怖のあまり目をつぶる。せめて正体が分からないまま死にたい。正体が分かってより一層怯えることになるなら、何も見ない方が得・・・のはずだ。


 ああさよなら、第二の人せ・・・いや、第三の幽霊生か・・・?とにかく私はここまでのようだ。



「きゅうぅぅぅぅぅぅ!!」



 そして、腕にもちっとしたものが当たった。


 ・・・ん?もち?


 恐る恐る目を開く。


 と、何故か腕に抱き着く白いもちもちがいた。


「きゅうう、きゅう!」


 キュウキュウ鳴いている白いもちもち。その小さな手は必死に私の腕に抱き着いている。思わずじっと観察していると、くりんとした目がこちらを見た。それはまるで、幽霊をデフォルメしたぬいぐるみのような。


 私の脳天に未だかつてない衝撃が走る。


「かっかわっ・・・!!」


 それは、子犬くらいのサイズの小さなおばけだった。




意地でも今日投稿したかったので色々おかしなところがあるかもしれません。とりあえず明日からは適当な時間に一話ずつ投稿します。ちょくちょく修正入れながらなので遅れるかもしれませんが。お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ