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居眠りさん。

 


「な、何すか、この変な像!?う、浮いて!?」


 あ、この人からはこの変な像が浮いてるように見えてるんだ。うん、あの、金ぴか生首の像が。なにそのシュールな光景。


 この人は確か、悪魔だ悪魔だーって言ってた方の盗賊だよね。ポンコツそうな方で助かったけど、ちょっと声がうるさいかな?これで親方の人とか起きたら厄介だ。あの人、歴戦の猛者って感じでめっちゃ強かったし。


「はっ、ここは悪魔の屋敷・・・!!夢じゃなかったんすか!?」


 うん、一人で元気そうな盗賊だね?ちょっと黙ろうか?流石にそろそろ誰か起きそうで心配だし。


 でもどうしようかな?おばけちゃんたちを呼ぼうにも、その間に逃げられたら困る。そのうち倍になって帰ってきそうだ。どうせなら身ぐるみ剥ぐなり縛るなりして無力化してから放り出したい。


 しかし、そうこう考えているうちに目の前の盗賊が何かに気づいたかのように声をあげた。


「いや待つっす!まだこの像が悪魔だと決まったわけじゃないっす!!そういう魔法具かもしれないじゃないっすか、さすが俺!」


 ・・・うん、ごめん。その話三回目。親方さんたちが言ってたから。というか君もその場にいたよね?それも二回とも。なのにこのタイミングであたかも自分が気づいたかのように言うって、結構あほの子?そんなんで盗賊やってけてるの??


 なんて、拍子抜けしていたからだろう。


「くらえ!!悪霊退散っす!!!!」


 油断した。


 こちらにナイフを持った奴が向かってくる。なるほど、腐っても盗賊団の一味だ。ちゃっかりこの像ではなく持ち主の心臓を狙っていた。見えないはずなのに、よく人体の構造(幽霊だけど)を理解している。


 ナイフが刺さると思った瞬間、思わず目を瞑る。


 ・・・よくよく考えれば私にナイフは効かない。すでに前の戦闘時、そのナイフが私に刺さらないことは無かったから。だから慌てる必要は無かったのだが、どうしても私の心臓に向かうナイフに若干の恐怖を感じてしまった。一度刺された身としてはとっさに身構えてしまうのだ。


 ・・・・・・・・・。


 あれ?反応がないな?やったっす!とか言って喜ぶと思ったのに。


 やがて、カラン、とナイフが床に落ちる音が響いた。


 恐る恐る目を開けてみる。


 そこには、肩に掛布団を掛けた白いおばけがいた。とっても元気で可愛いおばけちゃんとも、とっても生意気なあのおばけくんとも違う。その顔は眠そうで、ふわあと欠伸をしていて、今にも眠ってしまいそうな。


 あれ?もしかしなくてもこの子、居眠りさんなあのおばけ?


「むー」


 閉じていた目は開き、のんびりと手をあげていた。「やっほー」とでも言っているかのようで、本当におばけちゃんたちそっくりだ。


 そして、足元には何故か眠りこける盗賊の姿が。その姿は、つい最近見たあの状況そっくりだった。


「もしかして、君が助けてくれてたの?もしかして前も?」

「むー」


 こくりと頷いている。やっぱりそうだったんだ。最初の盗賊襲来のとき、板に嵌め込まれた宝石を翳しただけで盗賊たちが眠っていた。突然、何の前触れもなく、ばたりと倒れるように眠るのだ。不思議だとは思っていたが、それは恐らくこの子の能力的なモノだったのだろう。もちろんどういう仕組みかは分からないけど。おばけちゃんたちだってそれぞれ何かしら能力があったし、納得はできる。


 私が一人頷いていると、突然例の鏡から何かが飛び出してきた。


「きゅー!!」

「けけー!!」

「あ、おばけちゃんたち!」


 どうやら私があまりにも遅かったからこっちに来たらしい。なんかごめんね。


 そしてこっちに突進してくると同時にもう一匹のおばけの存在に気づいた。


「きゅ!」

「けっ!」


 二人とも片手をあげて挨拶している。その軽さはやっぱり知り合いなのかな。「よっ」並みの軽さだ。


 しかし、一向に反応が帰って来ることはなかった。


 ・・・まさか、実は仲悪いとかじゃないよね?


 可愛いおばけ同士が険悪な雰囲気なんて、そんなの耐えられない。せめてかわいいじゃれ合いにしよう。そしたらカメラ持って応援するから。


 なんて半ば現実逃避しながら、恐る恐るそのおばけの顔を覗き込むと。



 ―――目を閉じて、再び寝ていた。



「寝てるんかい!!」


 思わず全力で突っ込む。いや、確かに眠そうだとは思ったけども!まさかこのタイミングで爆睡するとは思わなかった。


 どうやらおばけちゃんたちからしたら日常茶飯事なようで、むしろ私の方を見て首を傾げている。え、これおかしいの私なの?


 そして肝心のあの子はといえば、ぐーすか眠っていた。・・・あ、よく見ると口元がもぐもぐして幸せそうに笑っている。美味しいものでも食べる夢を見ているのかな。


 ひとまず眠ってしまったこの子を抱える。ここよりはあっちの方が眠りやすいはずだし。何せ盗賊が平然と入ってくるのだ。まだあっちの方が静かだろう。


 盗賊は・・・色々終わったら身ぐるみ剥いで投げ捨てよう。この様子ならしばらく起きないだろうし。


 一応扉は完全封鎖する。バリケードにバリケードを重ねて、万が一起きたとき用の時間稼ぎだ。


「とりあえずもどろっか」

「きゅ!」

「け!」


 私たちは鏡を通り、あの白い空間に戻った。




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