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増えた。

 


「あ、しっかり開くね、これ」


 綺麗に手入れされていたようで、問題なく開く。そうなると尚更糸が絡まっていた理由が分からないが、まあそれは今は良いだろう。


 さて、いったいこの中身は何だろうか。私としては何か情報でも書いててくれればそれでいい。屋敷の持ち主の名前とか、この場所の地図とか、そういうやつ。何か一つでも情報があれば大分心強いのだ。


 そして私は、その中身を確かめた。


「・・・へ?鏡?」


 思わず目を瞬く。その中には確かに、驚いたような私の顔が映っていた。反射的に目をこすり、もう一度目をやる。それでもやっぱり、何の変哲もない鏡だった。


「鏡?」


 目の前のことが信じられなくて、もう一度呟く。あ、よくよく見ればこの鏡超綺麗。本当に大事にしてたんだなぁ。それはそうとて、それだけなの?


 そしてなんとなく、おばけちゃんの方を見た。


「きゅきゅっ!」


 板が開いたことにおばけちゃんは大変ご満悦のようで、空中を飛び回って喜んでいた。


 ここで私はようやく思い至った。


 ・・・もしかしてだけど、ただこれを開けて欲しかっただけとかだったのかな?だとしたら余計な勘違いしまくった恥ずかしいやつじゃん、私。そもそもおばけちゃんがそんなことを言ったわけでもないのに、楽観視しすぎでしょ。


 恥ずかしさのあまり部屋の隅に移動する。


「ケケケケッ」


 まずい、なんか笑われる幻聴まで聞こえてきた。それもやけにリアルな幻聴だ。普通にヤバい。幽霊でも通えるお医者さんとかありませんかね?あるわけないか。そもそも幽霊が病気になるのか?って話だし。


「ケケッ、ケケケケッ」

「・・・いやこれマジで笑われてない?」


 数秒の後に正気に戻る。流石に笑われ過ぎだ。この場にいるのは私とおばけちゃんくらいだが、そのおばけちゃんは未だ上でご機嫌に踊っている。笑い声は私の近くからしたのだ。盗賊さんは全員気絶中。つまり他の誰かが近くにいる?


「ケケケッ」


 笑い声を頼りに場所を探る。本当にすぐ近くから聞こえてくるわけだから、すぐに見つかるはずだ。しかし、この辺りには隠れられそうな場所などない。一体何処にいるというのだ。


 ・・・というか、私の手元から声がする?


 とは言っても手に持っているのはおばけちゃんから預かったこの鏡だけ。まさかこの鏡が喋っているわけでもないだろう。何となくそれに視線を向けると、それには違和感があった。


「あれ?真っ白になってる」


 再び目を向けた鏡は、鏡の役割を果たさず、真っ白な何かが映し出されていた。


「さっきは間違いなく鏡だったのにな。どういう仕組み?」


 首を傾げながらも鏡を観察する。


 思えばこの鏡は最初からおかしかった気がする。これだけ何故か床下に隠されていて、これに付いた宝石を向けられた盗賊たちは何故か眠ってしまうし。かといって私が使おうにも何も起きることがないのだ。不思議で仕方ない。


 まさかここに来てホラー展開?一度解決した後にそっと来る本物の怪奇現象的な?いや、ホラーはもう良いんですけど。もう勘弁して。


 ・・・なんてことを考えていたときだった。


「ケケケケケッ!!」

「へっ?」


 謎の笑い声と同時、突然体が何かに引き寄せられていく。あ、引きずり込まれる、という方が正しいかもしれない。よく見ると手に白い何かが巻き付いてるし。そして吸い寄せられる先は、先程まで手に持っていた鏡で。


 うわー、まさか本当にこの鏡から声がしてたのかー。誰が予想できるの、これ。


 こんな状況でも頭は案外冷静だった。そう、頭は。


「ふわあああああああああああ!!」


 頭は冷静でも、体がそうとは限らない。これはもしかして、罪のない人を脅かして遊んでたツケ的なやつかな。いや、罪のない人ではないよね。何せ相手は不法侵入の権化、盗賊さんだし。殺してはいないし、問題ないよね??


 案の定情けない声をあげながら体が鏡に吸い込まれていく。それと同時に視界が光に包まれていった。



「わああああああああああああっていったあああああ!!」


 やがて体が地面に激突した。地味に痛い。幽霊にも痛覚は残ってるんだ。


 涙目になりながらもとりあえず辺りを見てみる。辺り一面真っ白で、どういう場所なのか見当もつかない。っていうか、真っ白すぎて目が痛い。


 どうにか戻れないものかと背後を振り返る。・・・と、何故か目の前に白い壁があった。


「うわっ」


 反射的にのけぞって尻餅をついてしまう。


 それにしてもおかしいな。さっきまであんな近くに壁は無かったのに。不思議に思って顔を上げると、白い壁・・・ではなく、真っ白な何かがいた。なるほど、周りが真っ白だから全然気づかなかった。


「ケケケケッ」


 目の前の白い何かは私を馬鹿にするかのようにケラケラ笑っている。コイツ、初対面のくせにめっちゃ笑うじゃん。流石にムカついたので一つ文句でも言おうと思ったのだが、それを改めて視界に入れた途端、思わず目を瞬いてしまう。


「ほへ?」

「クケケケケケッ」


 呆然とした私を、目の前の奴はさらに笑った。


 ・・・それは、おばけちゃんにそっくりな白いおばけだった。



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