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障子に影
あと すぐ終わります
なんだかおもしろくないヒコイチは、漆の皿をもちあげると、つかんだ菓子を、ひとくちでほおばり、お茶でながしこんでから気づく。
「 ・・・そういやあ、声をかけられたのはじいさんか・・・。 いや、それに、どうしてあの梅林に、ダイキチさんと先生が・・・・・」
ああっ!!
ヒコイチがあげた大声で、ねそべっていた黒猫がはじけたようにとびおきた。
「じいさんのいったとおり、てめえが仲間としくみやがったのか?」
膝をたててたちあがろうとしたところで、ずぞぞぞ、と首のうしろに寒気がはしる。
障子に ―― 。
うっすらと、あの男とおもえる影がうつると、それがあたまをさげた。




