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みあやまる
「 ―― あの男の人がおのれで彫ったお地蔵様に助けられたのも、因縁のひとつでございましょう。 ほんらいなれば、沼に落ちてなくなった子と、あとをおって自死した父親のゆくさきは違いましょうが、こどもを思って彫ったお地蔵様が、それをつなげてくださった」
そのかわり、やはりおのれで命を絶った男はこどものそばには寄れず、綱からも逃げられない。
「 厨子がご神木でしめられてしまっては、もう近づけないのと、中に残されたままになったこどもが心配だったのさ。 そこでしかたなく、この年寄をたよって出てきたんだろうね。なにしろあたしのまわりのひとは、お役人なぞよりよほど頼りになる肝をもちあわせてる」
セイベイはダイキチや先生をみて、さいごにヒコイチとめをあわせた。
「 まあ、 ―― おまえの肝は、まだその『梅の花』くらいだからねえ」あのひとの素性をみあやまってもしかたないさ、となぐさめるようなことをいう。




