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因縁
いやな表現あり。ごちゅういを。
「ああ、それは、きっと、 ―― 」
先生が、いつのまにかまた、梅の花をのせた漆の皿をもち、ヒコイチのまえにだけ置く。
「 そのひとは、そのご神木のその枝で、くびをくくったのでございましょう」
「・・・・・く、びを・・?」
「手ぬぐいで首をかくしておられましたが、すこしあとがのぞいておりましたし、・・・髪や着物を、ゆわいていたのは、きっと ―― 首にまいた綱でございましょうねえ」
「首にまいたって・・・、 ・・・そんな・・・」
なさけなく口をへの字にあけたまま、あとの言葉がだせないヒコイチに、ダイキチがいつものやさしげなめをむけた。
「 ヒコイチさん、人はその死にざまによって、そのあとにつながる因縁が《つく》こともあるようでございましてな・・・」
あの、蓮池にただよった白い煙のように




