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地蔵様を彫った
そとのひかりが、障子紙をとおり火鉢をてらす。
その、静かなひかりのことを話すように、あのひとはご神木の化身じゃなくて、とダイキチが障子のほうをむく。
「 ―― あの、お寺にひきとられたお地蔵さまの、父親ですよ」
「は? 《地蔵さん》の父親が、《ご神木》?」
『 だからよ、《ご神木》じゃねえ、ってダイキチさんが言ってるだろ 』
猫のだみ声がはさまる。
『 あの、人足の男は、 ―― 死んだこども のことをおもって、地蔵さんを彫った男だ 』
「地蔵さんを彫った男?」
『 村で、こどもをなくした男が彫った、小さな地蔵さまが、祠にはいってるんだ 』




