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どうした?
「それに、中にいる地蔵さんは、『神様』ほどの力はねえって言ってたじゃねえか。 それにくらべたら、上にのったご神木の方が『力』もあったんで、人にばけて出張って来たってことじゃねえのか?」
どうだよ、というように黒猫をみると、猫は金色がかった目玉でじっとヒコイチをみてから、鼻をならして顔をそむけた。
「 どうした? おれのよみが当たってるんで、つまらねえか?」
なんでもいつもお見通しの黒猫が、のばした前足の上に顔をのせ、まあおもしろいはなしじゃねえなあ、と庭に面した障子をみた。




