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こういうことだろ?
ご神木?と手をとめてききかえすセイベイに、もごもごと口を動かしながらうなずく。
くろもじを懐紙の上におき、お茶に手をのばした。
「 だからよ、 ―― お堀に落ちたご神木の枝がのっちまって、地蔵さんが厨子に閉じ込められたままになっちまったって言ってたじゃねえか。 それを気にした、《ご神木》が、あの人足の男になって、じいさんのとこにきたってことだろ?」
『 ご神木、だとよ 』
黒猫はごろりと身をのばしてよじり、ダイキチをみた。
ああ、とへんじのようなこえをだした年寄の顔は、なんだか悲しそうだった。




