43/70
お堀浚(さら)い
てぬぐいを頭にまいたヒコイチは、水をぬいた堀に残った臭い泥と、その中でとびはねる魚や亀を、むこうにある水をためたフネへとほうりながら、こちらをのぞく見物人たちをみあげてみた。
見物人のなかには、ヒコイチが見知った顔はなかった。
てっきり、あの人足の男がいて、ここを浚えというように指でもさすかと思っていたのに・・・。
あつまった人の中から、厨子とご神木はどこだよ、と、じれたような声がきこえる。
たしかに、もう水はほとんどぬけ、魚をどけたら、たまった泥とごみをかきだすだけだが、箱や大木のようなものは、まだみあたらない。




