42/70
『うわさ』ひろがる
七
《お堀さらい》の前日までに、その『うわさ』をひろめたのは、ヒコイチのお友達の一条のぼっちゃんと、ダイキチだった。
『 西のお堀には、お地蔵様がとじこめられた厨子とご神木がいっしょに沈んでいるらしい。 下駄屋のご隠居さんの夢に、ひきあげてほしい、と《ご神木の化身》がでてきたそうだ 』
この『うわさ』は、《百物語会》につどう人の口から口をつたって、西堀をさらう日には、大勢暇な者があつまり、役人の数も多くなった。
ひとりだけ大声で、そんなものでるわけはない、と怒ったようなかおをしていた役人が、きっとあの人足の男が、枕に立ってたのんでみたという役人だろう。




