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黒猫も梅見
六
『 おいヒコよ、おめえ、セイベイだけ誘うなんざ、えらいひいきだな 』
ヒコイチをまわりこんできた黒猫が、金にちかい色の目でみあげ、きたなく割れた声で文句をいう。
このしゃべる黒猫の《中身》は、セイベイとヒコイチの知り合いの乾物屋の隠居で、死んだはずのとしよりなのだが、 ―― どういうわけかこの猫におさまって、いまだにこの世にとどまっている。
「うるせえな。どうやってここに来たんだ?」
『 ダイキチさんに背負われてよ 』
「 はあ?ダイキチさんのほうが歳は上じゃあねえか。 なにを甘えて、 ―― お、」
そこでようやく、むかいにいたはずの人足の男がきえているのに気づいた。




