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たのまれる
せんせいがころころとわらいながら、たのまれたのでございましょう?と、人足の男をみる。
「 へい。どけていただきたいんで。 ・・・『地蔵様』が、もうずっと、出たくてしかたねえんですが、なんにしろ、《神様》と違って、そういうのも、どうにもできねえもんで・・・」
男は座りなおした自分の両膝をさすると、一度動きをとめてから、頭をふかくさげた。
「どうか、 ―― おたのみもうしあげます」
なんだかしぼりだすようなその声に、ヒコイチが声をかけようとしたとき、みゃああああ、と猫が後ろから鳴いて、おどろいてふりかえる。




