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龍があばれた大嵐
「 ―― それで、セイベイさんに、なにを頼みたいんだい?」
ダイキチがきいたので、はっとしたように顔をあげた男はまた、さきほどのはなしをくりかえした。
ようやく大嵐のくだりまでくると、「そんな大嵐あったかね」と、ダイキチも首をかしげる。
「だからよ、さっきも言ったろう?その嵐がよくなかったってよ」
「そんなひどかったのかい?」
いや、と男はすぐにうちけした。
「ご隠居さんたちもおぼえてねえってのはわかる。 ところがな、おれらのところじゃあ、ひどかったんだ。『龍があばれた』ってなはなしがのこるほど、大風がまきあがった」
ああ、と年寄りたちは顔をみあわせた。




