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肝(きも)
ヒコイチが驚いた顔をむけたのに、西堀の隠居はあたりまえのように、それではお言葉にあまえて、と、すぐについて歩き出す。
ヒコイチは、また人足の男が消えるのではないかと振り返ったが、そこには腕を組んでかんじいったような男がいた。
「いやあ、おれにどろいた役人にも、これぐらいの《肝》があったなら、あんたらの手もわずらわせなかったのによ」
「あのじいさんたちの《肝》と比べちゃ、その役人が気の毒だ」
本心からおもいながら、二人の年寄りのあとについていった。
ヒコイチが驚いた顔をむけたのに、西堀の隠居はあたりまえのように、それではお言葉にあまえて、と、すぐについて歩き出す。
ヒコイチは、また人足の男が消えるのではないかと振り返ったが、そこには腕を組んでかんじいったような男がいた。
「いやあ、おれにどろいた役人にも、これぐらいの《肝》があったなら、あんたらの手もわずらわせなかったのによ」
「あのじいさんたちの《肝》と比べちゃ、その役人が気の毒だ」
本心からおもいながら、二人の年寄りのあとについていった。