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山のような墓
だが、ここは坂といっても、なだらかでゆるい、ひろい坂の土地なのだ。
なので、あちこちの梅の下に、ゴザをしいた人たちが、弁当をひろげている。
「ぜんぶ、だれかが、植えたのだろう?」
セイベイは感心したように、むこうまで続く梅林をみわたす。
ゴザで梅見をするひとたちをよけながらでも、じゅうぶんほかの木をみながら歩くことができる広さのそこは、山というには低くて小さい。
山と山とのあいだというわけでもない。
年寄りたちの間には、この『山』が、大昔このあたりを支配していた一族の、大きな『墓』だとかいうはなしもあったが、そのとしよりもふくめ、このあたりの人たちは、その話を信じていない。
だってよお、こんな山ほどもあるような墓をつくるかね?




