17/70
沼を埋め
ときおり、沼に釣りにくる者が、きまぐれにお参りをするぐらいで、もう、社をなおす者もいない。
「 ―― そんなふうになってから、あの沼を埋めはじめた」
「あたしのおやじがこどものころだ」
セイベイがうなずいた。
「 さすがに朽ちてても、鳥居があって祠がありゃあわかるから、調べに来た者も『おいなりさん』なら、こりゃ移すしかねえってはなしだったんだがな、 ―― 」
祠の中の厨子をあけても、炭焼きがつかう薪に顔をつけたようなものしか、はいっていない。
まさかそれが地蔵様だとも思わないし、このあたりにむかし住んでいた者たちに社のことをきいても、くわしいことを知っている者もいない。




