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第41話:扉からコンニチワ/企み



 あれから何度か少女をダンジョンコアまでアテンドする業務があった。


 面子はいつも同じで7、8、9番だったため、それなりに彼らと気も知れてきた頃。


「なあなあ、キュウ助知っとるか? 私たちの普段いる牢は番号順に横並びなんやで」

「へえ、それで?」


 ナナは関西出身で、かなりのお喋りだ。

 とはいえお喋りできるのも探索中なので、捕まった理由など深い話をする時間はない。


「だから床に穴を空けたらキュウ助の部屋に遊びいけるなーって」

「そんな古典的な……いや、そもそもあそこ一階じゃないから無理だろ」

「それは……どうやろな?」


 いつもの冗談を言っている時とは違う、何か企んでいるような妖しい笑みが引っ掛かったが、その時は気にしなかったーー


 部屋で休んでいた時、地面が突如四角く発光して、扉が現れた。 そして扉が開かれ、出てきたのは、


「よっ!」


 驚いた俺の表情を見て、愉快げな笑みを浮かべるナナだった。


「いやいやどこから出てきてんだよ?!」

「扉からやで」

「そんなん見ればわかんだよっ!! なんで扉が現れたのかって言ってんの!」

「話せば長くなるんやけど……知りたい?」


 どう見ても聞いて欲しそうにうずうずしている相手に癪ではあるが、話を進めるために俺は渋々頷いた。


「始まりはそう、去年のひときわ暑い夏の日やった……」

「簡潔に。 大声出すぞ」

「わわわ! 分かった分かった! 言うから、それだけは勘弁してや」

「それで?」

「ダンジョンコアをテイムしたんや」

「なるほど、えーと……はい?」


 ナナの話を聞いても俺には全く理解できなかった。


 この世界においてダンジョンコアは破壊するものであり、それ以外に活用法があるなんて聞いたことも無い。


「あー、信じてへんやろ!」


 ナナ曰く、ある日彼女の牢にダンジョンが現れたらしい。 本来であればすぐに報告すべきだ。 しかし彼女は黙って、あまつさえ攻略したのだそうだ。


「その時にふと思ったんや。 コアにテイム掛けてみたらどうなるかと」

「(こいつ……とてもアホだ)」


 それは罪だ。

 ただでさえ犯罪者として罪を償っているところで、さらに上塗りする行為である。


「そしたらなんと『ダンジョンを新規で作成しますか?』っちゅう文字が見えたんや」


 そしてナナは戸惑いもなくダンジョン作成を試し、これは面白いと退屈な刑務所生活の暇つぶしにしているとのことだった。


 ダンジョンを創れると言っても、出現モンスターの種類や、ドロップなどは操作できず、階層を作る、扉を設置する、ダンジョン間を自由に移動くらいしかできることはないらしい。


「ゲームの裏ワザみたいやろ?」


 彼女はそう言って笑うが、それどころではなくかなり大発見なのではと俺は思った。 ダンジョン研究の界隈で発表すれば驚嘆されるであろう。


 それを仕事の仲間の部屋へ遊びに行くため、という平和的な使い方をするところにナナのいい意味でアホらしさが出ている気がした。


「それでナナはどうするの? 人間やめてダンジョンマスターとして君臨するとか?」


 ナナは一瞬呆けた表情をして、腹を抱えて笑った。


「あはははは、そんなんするわけないやん。 マスターなんてなってどうするん? 人間殺しまくりでダンジョンポイント増やしてウハウハ生活しますって? できるわけないやん、キュウ助はアホの子やなぁ」

「……じゃあなんなんだよ」

「そんなん決まってるやん」


 ナナは悪い笑みを浮かべて言った。




――脱獄や。







 





 読んでいただきありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 買収もかかりそうなところで脱獄かー [気になる点] 主人公にとってはメリットあんま無いけど公権力には裏切られてるしどうするんだろ。 脱獄したらヒナとは一緒にいづらくなるとか考えそうだけど
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